ミディ
ミディ
「ではお前に魔族を見せてやる」
そうミディは言った。
ミディはこの国の神殿を任されていて、教会内で一番偉い存在らしい。
自分達の事を神徒と呼び人神の事を崇めている。
「魔族供を見ればそのふざけた考えも改めるであろう」
ミディは俺が魔族とは戦いたくないと言ったのがおきに召さなかったらしい。
でも、俺の考えは変わんないもんね。
戦い!
絶対にダメ!
会話!
対話!
これだよ。
大体さ、
「魔族って何なんですか?」
俺は聞いた。
「敵だ、全ての人族の敵だ」
階段を降るミディは振り返る事なく言った。
「何で敵なんですか?魔族からの要望とか無いんですか?食べ物が欲しいとか」
「奴等の要望は我等が死ぬこと」
「なんで私達に死んで欲しいんですか?」
「死んで欲しいからだ」
なんだか会話にならないな。
俺は小さく溜め息をついた。
「魔族を見れば分かる」
俺が溜め息をついたのが分かったのか、
俺が分からないのを察したのかミディが言った。
「お前は獣人の子を囲って居るそうだな」
シャロンの事だな。
「一人ね」
「虐待や折檻はしていないだろうな?」
「してねぇよ!」
思わず口調がきつくなった、シャロンを虐待するなんて考えたくも無い!
「良い事だ、彼等と我等は同じ人神様の子だ。差別したり、一方的に搾取したりするべきでは無い。同じ仲間なのだから」
穏やかな口調で言った。
なんだ?こいつ、差別するなとか言って、良い奴なのか?
「しかし、昔の人獣大戦の時の名残でな、獣人を差別する輩がなかなか減らんのだよ」
よく分からんが苦労してる様だ。
「人獣大戦って何?」
「昔は獣人と人族が、今の魔族と人族の様な関係だったのだよ。何度もぶつかってはお互いに殺しあってきた。
しかし、その戦いで我等は勝った。獣人達の神を『獣神』を殺す事に成功した。それから、獣人達も我等の神、『人神』様の子となった」
「え?殺して?どういう事?」
「うむ。昔はこの世界には人間しか住んでは居なかったといわれている。それがある日、突然獣の耳や尻尾を持った人族が現れた。その者達は獣神の使徒として我等と敵対したのだよ。
その時の獣人達は人間を見ると殺しに掛かってな、
その戦いは苛烈を極めた。
たくさんの血が流れた。たくさんの命が失われた。
しかし、我等人族が徐々に獣人達を追い詰め、
なんとか最後には獣神を呼び出す事が出来た。
獣神はその時の王都と、
勇者達と多くの戦士達の命と引き換えに死んだ。
その時から生き残った獣人達の神も人神様となったのだ。
この時から獣人も人族となった。
それが今から200年前の出来事だ。
そして、今から100年前、
魔族が現れた。
魔族は我等より魔力が高く、
又、身体能力も高かった。
我等を追いやった。
しかし、魔物の出現で変わった。
徐々に劣勢を跳ね返してきている」
「ちょっと待って?!魔物は人間を襲うんでしょ?何でそれが劣勢を跳ね返せる事に繋がるの?」
「魔物を殺してレベルを上げられるからだ」
あぁ、そうか。
「魔物は人を襲いはするが、人里近くには弱い魔物しかよっては来ない。森の奥深くに行けば違うがな。
魔物に殺された人間も確かに居るが、
魔族と戦って帰ってくる様になった人族の方が断然多いのだよ。それに、魔物のもたらしたドロップアイテムは素晴らしい」
オークの肝とかな。
「まさしく、神の恵みというのが相応しいだろう」
「じゃあ、まさか、魔物を作ってるのは人神なの?」
階段を降るミディが俺を振り返って睨んでくる。
「そうだ!人神様だ!」
様を付けなかったのがお気に召さなかったようだ。
「でも、何でその時の獣人達は人間を駅前襲ったの?」
「殺したかったからだ。そして、その時の人族が獣人を殺したのも同じく『殺したかった』からだ」
よく分からん。
殺したかったから殺したなんて言われてもなぁ。
ワケわからん。
だけど、その魔族と会った瞬間にその訳を理解した。




