イケメンはおならをしない。
イケメンはおならをしない。
「旨いね!」
シャロンの持ってきた芋を食べながら言った。
「ほんと!凄い美味しいよ!」
マリちゃんも気に入ったみたいだ。
「だよね!さつま芋とニンニクを合わせた感じ!」
と俺が言うと、
「あっ!そうそう!」
と、マリちゃんも俺の意見に同意した。
朝方、この芋の移動販売があって、シャロンが慌てて飛び出て買ってきてくれたのだ。
『いしやき~ぃ、芋ぉ~。美味しいよ~ぉ』
まぁ、そんな感じのやつだ。
「何これ!ほんとうに美味しいわ!」
とアニエスも気に入った様だ。
芋の甘味と、ニンニクの香り。なんだか日本が恋しくなってきた。
「へぇ、アニエスも初めて食べたの?」
「そう!初めてよ!」
「こんなに美味しいのにね」
「ほんと、何でかしら?」
と、アニエスが不思議がっていると、シャロンが躊躇いがちに口を開いた。
「この『ニクイモ』ですが、、、。安くて滋養強壮の効果があって、冒険者にはとても人気なんです。ただ、、、。」
シャロンは言いにくそうにしている。
「ただ?」
俺はその先を急かした。
「『ニクイモ』は下品な食べ物として貴族には嫌われています。というのは、、、」
「というのは?」
「おならが止まらなくなるんです。しかもスゴく臭いんです」
その言葉にアニエスはフリーズした。
隠れてパクパク食べていた、イリスさんも知らなかったんだろう、フリーズしている。
マリちゃんをチラッと見ると、マリちゃんもフリーズしていた。
皆の様子を見て、俺は右手に持っていた『ニクイモ』を口に放り込んだ。
「よし!今日はこれで魔物を狩りに行ってくるよ!!」
と俺が言うと皆、
『そりゃあいい!』
と、言った。
「遅くなるからね!でも、部屋に戻ったら必ずノックをするからね、早くは帰らないからね。宜しくね!」
俺はそう言って部屋を出た。
日本の味が懐かしい、醤油や味噌はこの世界では口にする事が無いだろう。そうすると、故郷の味に近いものというと、芋を蒸かしたり、焼いただけの料理が、故郷の味に近いものとして感じられる数少ない料理なのかもしれない。
しかし、おならが止まらないとはな、そう言えばシャロンが『食べ過ぎない様に』って言っていた気がする。
一人で半分は多かったか、でも、こっちの世界では甘い食べ物が少なく。久しぶりの甘味に飛び付いてしまった。
結果遅くまで部屋に戻れないという、、、。
無念。
アイテムボックスから新調した装備一式を取り出す。
黒で統一された装備は格好いいんだけど、中二病って言葉が頭に浮ぶ。
この装備は武器を買った店で、『この店に行けば絶対に安くしてくれるぜ?店主には俺が話を通しておいてやるからよ』と言われて行ったのだ。
嫌な予感しかしなかった。
しかし、その店をマロンに確認すると一見さんお断りの店で、店に入るには必ず『紹介状』がいる。
あと、女性は入店禁止だと言っていた。
嫌な予感というか、嫌な結果が頭に浮かぶ。
それでも、とても良い店というのと、安くしてくれるという。
二つの魅力に引かれ結局行ってしまったのだ。
そして、嫌な結果がやってきた。
店に入ると強烈なオカマさんが待っていた。
「ん~まぁ~。貴方が義明ちゃんね?」
俺はオカマバーに入った事は無いが、入った事のある人はイメージしやすいかもしれない。
どう見ても男にしか見えない目の前の男が、なんとか女性っぽくなろうと頑張っているその結果は、、、。
無駄な努力というなかれ!
武器屋の店主より好印象だ。
それからオススメの防具を教えて貰って、いざ!
『実寸!』
となった。
この世界の計測方法は抱きついて測るという変わったスマイルで、この世界に来たときも抱き付いて計測されたが、なかなか慣れない。
そしてそれは、オカマちゃん相手だと余計にキツかった。
それに、絶対に余計な動きがあった!!
股間もしっかり触られた、
『ちょっと!』
と責めると、
『あら~。大事なタマ◯ン潰されてもいいのぉ~。デリケートな部分だからしっかり測った方が貴方の為よぉ~』
と言われた。なるほどな。
しっから体の隅々まで触られて出してくれた防具は最高だった。
俺も鍛冶スキルがあるから何となく分かるんだけど、正しく最高と言うのが相応しかった。
ちなみに股間の違和感は一切無く。
ファールカップが俺の動きを阻害することは無かった。
この装備を皆に見せると好評だったけど、マリちゃんに
『中二病っぽくない?』
と聞くと、
『そうだね』
と、しっかり肯定されてしまった。
この装備が真っ黒なのには理由があって、俺の剣にも使っている黒曜鉄を使っているからだ。
この黒曜鉄には魔力を弾くという特性があって、攻撃魔法を無効にする事が出来るそうだ。
ちなみに精神魔法などは無効に出来ないらしい。
神聖魔法も無効にしてしまうから気を付けるようにと言われたが、自分で自分に掛ける分には大丈夫らしく安心した。
路地裏でコソコソと着替えると、森を目指す。
今日は何を謝ってるんだ狩ろうかな。
レベルが上がる奴が良いな。
森に移動すると魔物がちょっとづつ出てくる。
最初はゴブリン、次はオーク。
その次は、トロール、そして、オーガの順だ。
森の奥に行くほど魔物は強くなっていく。
もっと奥へ行くと、ゾンビとか、スケルトン。
でっかいカメレオン。
などなど、どんどん強くなっていくらしい。
ゴブリンとかトロール。もちろんオークも戦いたくないので気配を感じると避けて奥へ進む。
そろそろオーガがいる辺りだな。
と思いながらとぼとぼ歩いていると、戦いの気配を感じた。
足に力を入れて飛び出す!
が!
その瞬間、お腹の中が大きく動くのを感じた!
『グリュ!』
ヤバイ!おならが出そう!
お腹にガスが溜まって、パンパンだ!朝に食べたニクイモに違いない!
しかし、今おならをしている暇はない。
今にも剣を振り下ろされ殺されようとしている女性へと駆け寄って!
『ギャン!!』
女性へと振り下ろされようとしていた剣を裏拳で弾く!と、同時に左手で短剣を抜刀、そのままオーガを切り捨てる。
あーやばいな、おなら漏れそう。
右手は腰の投げナイフを取り、遠くにいるオーガへと投げた。
投げナイフがオーガの喉へと吸い込まれるのを見送りながら、短剣を鞘へと戻し、ロングソードを右手で抜いた。
倒れてる女の子の方へジャンプ!
その時、ついでに近くにいるオーガを切り捨てておく。
やっべーな。
今スゴくおならしたい。
着地するとそこにいるオーガ達を殺して、『ヒール』を唱えた。
傷が治るのを確認して、周囲に意識を向けると、オーガに囲まれているのを感じた。
このまま今みたいに動いていたら、おならが出るのも時間の問題だ。スゴく臭いというおならをここで、女婿の前でする勇気は無い。魔法を使うことにした。
最初に助けた女性が体を起こそうとしているので、
「伏せて!」
と、声を描けてから、
『ファイヤーアロー!』
と叫んだ。
その瞬間、100本以上の火の矢が宙に『ふわり』と浮かぶ。
そして、
『バシュン!』
と音を立てて火の矢が四方八方へと飛んで行いった。
森の中に潜伏していたオーガ達に当たると火の矢はオーガを火だるまにする。
早いな、最初からこうしておけば良かったか?
オーガの気配が無くなるのを確認して、括約筋に力を入れながら、倒れてる女の子の所へ順番に回って、『ヒール』を唱えた。
最後の一人に『ヒール』を唱えようと、近付くと何処かで見た顔だと気付く。
ギルドで手合わせしてくれたアンジュさんだ。
『ヒール!』
アンジュさんの傷を治すと、アンジュさんは、
「助かったよ。この恩は忘れない」
そうって手を差し出した。
「気にしないでください、困った時はお互い様ですよ」
俺はそう言って出されたを握る。
もしかして俺の事に気付いてないかな?
「あんた、義明かい?」
「あっ、覚えててくれたんですか?そうです、義明です」
「まったく、投げナイフの技術を自慢するんじゃあ無かったよ!私よりよっぽど凄いじゃないか」
と、言われて慌ててしまう。
「いえ!そんな事無いです!ただ力が強いだけで、、、。技術的にはアンジュさんと一緒というか、同じというか、、、。パ、パク、、、」
俺は『素直な心』というスキルを持っていて、このスキルはスキルの習得を早めるというもので、俺の投擲のスキルはアンジュさんと、手合わせした時に得た。
ただ、その習得の早さは人の努力を無視したもので、人の努力を思うとどうしても罪悪感が沸いてくるのだ。
「何言ってんだい!普通投げナイフはあんなに深くは刺さらないよ!対したもんだ。投げ方も理想的だ。それに、短剣だって!」
「いや!いや!そんな!その、その!本当にごめんなさい!」
短剣術だってアンジュさんから、、、。
「何を謝ってるんだい?」
その時俺達の近くにさっき『ヒール』をかけた女性達が近寄ってきた。
「ありがとうございます」
一人の魔術師の格好をした女性がそう言いながら、俺の手を取って自分の胸元へと引き寄せた。
「い、いえ!」
思わぬ胸の感触に慌てて下がろうとするが、
「本当にありがとな!」
自分の後ろには大柄な女性がいた。
二人に挟まれる格好になっている。
「とってもお強いんですね。感心しましたわ」
さらにもう一人の剣士風の女性が俺を挟むように近寄った。
ヤバイ!緊張する、しかも下腹部がさらに、
『グリュ!』
と、動いた!
ヤバイ!スッゴい今おならしたい!
「しかも、神聖魔法を使えるのか?」
アンジュさんが聞いてきた。
「あっはい、一応」
と、会話をしながらも意識は全て括約筋へ。
「凄いですわね。一応自己紹介をさせてくださいませ。私このパーティーで剣士をしております。ミュス・カデルと申します」
剣士風の女性が言った。
「俺はピノ。俺は戦士、盾役だ」
大柄な女性はそう言って盾を持ち上げた。
「わたしはヴィオニエ。魔術師です」ヴィオニエと名乗った女性がはペコリと頭を下げて、「アンジュの事はご存じな様なので、貴方様のお名前を教えて頂けますか?」
「義明、鈴木義明です」
と、名乗りながらも、、、。
ダメだ、ダメだ、ダメだ!
おならが限界だ!
お腹がガスでパンパンになっている!
女性達が何やら話しているが俺はそれどころではない。
早々に撤退したいのだけと、、、。
しかし、回りを囲まれてた。
「本当にありがとうございます!」
ヴィオニエさんはそう言って握った俺の手をさらに強く抱いた。
「本当に関心しましたわ。貴方様の様な強い男性が、、」
ミュスさんは近づいて体を密着させてくる。
や、やめてくれ。お腹を押さないで!
「本当だ、何てお礼を言ったら良いか」
アンジュさんも!そう言いながら俺に近付いて、
「あっ!!!」
アンジュさんに顔を隠していたスカーフを取られた!
俺は慌てて顔を隠そうとするが、
四人に顔を見られていた、、、。
四人が俺の顔を凝視している。
そしてアンジュさんが、
「俺達の、いや、私達のパーティーに、は、は、入りませんか?」
と、言った。
「そ、それは良い案ですわ。義明様は神聖魔法を使えますし、、、」
ミュスさんが、グッと寄ってきてお腹が押される。
「い!良いね!あの魔法凄かったよ!私にぜひ魔法の手解きして欲しいなぁ?って!」
ヴィオニエさんを俺の方に、グッと寄ってきてお腹が押される。
「そ!それ良いな!ぜ!ぜひ仲間になってくれよ!な!」
ピノさんまで俺の方に、グッと寄ってきてお腹を押してくる!
皆ズリ、ズリ、と俺の体に体を密着させてきて、、
ダメだ、ダメだ!ダメだ!!
どんどん溜まってくガス!
どんどん押されるお腹!
で、でちゃう!
ら、ら、
らめぇ~!!!
『プゥ』
と音がして、解放される括約筋。
そして漂う香り、、、。
サーシャの言うとおりニクイモを食べて出るおならはとてつもなく臭かった、、、。
なんて謝ろうか謝ろうかと考えていたら、
「おい!ピノ!お前だな!空気を読め!この、脳筋が、屁ぇこきやがって!」
と、アンジュさんが言った。
「ち!違う!俺じゃねえ!ミュスじゃないのか!お前昨日、ニクイモ散々食ってたじゃねぇか!」
「わ!わたくし、ニクイモなんて、た、食べませんわ!!」ミュスさんが慌てている、「それより、ヴィオニエじゃあないですの?この臭い、確かにニクイモの臭い、貴方、昨日パクパク食べていましたわね!」
「ちょっと待ってよ!確かに食べたけど、ニクイモなんて皆好きじゃん!でも、はっきり言って私はしてないよ!」
ヴィオニエさんがそう否定した、そりゃそうだ、おならをしたのは俺だ。
「ちょっと!俺だってしてないぜ!命をかけてもいい!」
アンジュさんが言った。
今までに無い反応だった。
今まではむしろ、俺がおならをしていなくても必ず俺のせいに成った。
何故?なんて思っていたが、女性に罪を押し付ける訳にはいかない。
「その、ごめん、俺なんだ」
と、正直に言って頭を下げた。
「大丈夫だよ良いんだよ、屁をしたのはピノに決まってる、こいつはいつも空気を読めないんだ」
アンジュさんはピノさんを指差して言った。
「いや、本当に俺なんだけど、、、」
と、言うのだが、
「大丈夫だよ」ピノさんが言う「義明。だって義明からおならなんて出る筈が無いぜ?どうせ、昨日散々ニクイモを食ってたミュスがしたんだ」
「いや、おならをしたのは俺なんだ、俺も朝ニクイモを食って、、、」
「いいんですの。義明様がニクイモなんて下賎な食べ物、お食べる筈がありませんわ。私の事を庇ってくださって、、、。お優しいんですね。でも、大丈夫です、おならをしたのはこのヴィオニエですから」
「だから違うって!私はしてない!一番ニクイモを食べてたのはアンジュじゃないか!」
「ちょっと待て!一番食べてたのはピノだろ!パクパク食べてたじゃないか!」
「違うね!私じゃあ無い!ミュスだ!こいつ、皆に隠れていつもコソコソ食べてるんだよ!」
「ちょっ!違います!わたくしニクイモなんて食べませんもの!それより、ヴィオニエが怪しいんじゃあ無いですの?!だって、ニクイモがあれば外に食べ物は要らないって言ってましたわ!」
皆、ヒートアップしてきたので、この隙にそっと居なくなることにした。




