マリ
マリ
「マリは良いよねぇ。義明君に今まで沢山アピール出来て」
「そうそう、もしかしてこんな事になるって知ってたんじゃないの?」
ふざけないで!
そう怒鳴ってやりたいがそんな勇気は無かった。
いつもならクラスのもめ事を『なあなあ』にしてくれる義明君が今は居なかった。
義明君はがいれば。飛んできて『俺のアピールが欲しい人は誰?』なんて言って、場を和ませてくれるのに。
もっとも今の義明君がそんな事を言ったら大変なことになるけど。
義明君は凄く変わってしまった。
こんなに変わってしまうのならあんなこと言わなかったのに。
人神が義明君の心と体を一致させたお陰で、義明君は凄く格好良く、そして強くなった。
そうすると、クラスの女の子が急に義明君の事を好きだと言い出したのだ。
義明君の事を馬鹿にして、からかってきたような奴等がだ!
でも、私はもっと早くに義明君の事が好きだと言うべきだったのだ。それを、どうせ私以外に義明君の事が好きだと言う人が居る筈が無い、と決め付けていた。
そのせいで、こんな風になってしまったのが切なかった。
今から義明君に告白しても『格好良くなったから告白したんだよね?』って、絶対にそう思われる。
そうじゃあ無いのに。ずっとずっと好きだったのに。
親友のクミにも良くあんな顔良く好きになれるよね?って言われた。
でも、人は顔じゃない。
顔で人は決まらない。
大事なのはいつだって心。
私は自分の顔が嫌いだ。
大嫌いな父親と、大嫌いな母親の顔がそこにあるから。
父親は会社で若い子と、母親は隣人とそれぞれ浮気をしている。どっちも整った顔をしており、若く見えるのだそうだ。さぞかしモテるのだろう。二人ともまともな時間に家に帰ってくることはまれだった。
休みの日もいそいそと家を出ていく。
私はいつも一人ぼっちだった。
義明君はそんな私を良く慰めてくれた。『今朝さ、迂闊にも自分の顔を鏡で見ちゃって』とか、『服を買おうとして入店を断られた』とか。
いつも自分をネタにして笑いを誘ってくれた。
そして私は何も言った事が無いけど、親や、自分の顔を好きじゃないのを分かってくれるのだろう。
私の容姿を誉めることが無かった。これがとっても嬉しかった。
女友達や、男の子が私の容姿を誉めてくれるのだが、どうしても不快な気持ちになる。こんなもの!って思ってしまう。そういう時は義明君はいつも心配そうに私を見守ってくれた。
義明君がいれば助けてくれるのに。
義明君がいれば、和むのに。
この不気味な状況が私の心をすり減らす。
義昭くんに会いたい。
私がもらったスキルを駆使すれば何とか義明君の所へ行けるだろうか?
スキル《妄装少女》ならば。
唇を噛み締めた。




