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予期せぬ婚約解消から一発逆転する方法~崖っぷち公爵令嬢のとんでも婚活事情~  作者: 桜祈理


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16 放したくない

「……既成事実を作るしかない」


 そう言ったリヴィウス様は、有無を言わさず私を自室に引き入れた。


「え!? ちょっ……! リヴィウス様!!」


 慌てる私を難なく横抱きにしたリヴィウス様は、そのまますたすたと歩き出す。



 こ、これがいわゆる、お姫様抱っこ……!?



 なんて感動している場合じゃない。


「リ、リヴィウス様! ちょっと待って! 落ち着いて!!」

「俺は落ち着いてるよ。至って冷静」

「いや、そんなわけないですよね!?」

「アトルム公爵には結婚するまで手を出すなって言われてたんだけどさ。非常事態だし、しょうがないよね」

「しょ、しょうがなくないです! 一旦深呼吸でもして――」

「やだ」

「やだ!?」

「フェリ、暴れると危ないよ」

「暴れなくても危ないんですけど!!」



 主に私の貞操が!!!



 と思ったら、リヴィウス様はゆっくりと私をベッドの上に座らせてくれる。


 そして、ぎゅっと抱き寄せた。


「え……?」

「好きだよ、フェリ」

「……リヴィウス様……?」

「放したくない。誰にも譲りたくない。フェリとずっと一緒にいたい。ずっと、俺だけを見ていてほしい」

「……わ、私だって、同じ気持ちです」


 私はそっと体を離すと、蒼ざめた頬に手を伸ばす。


「私だって、リヴィウス様とずっと一緒にいたい。離れたくないし、放したくない」

「フェリ……」

「ですから、サリエル殿下と王家をぎゃふんと言わせましょう」

「……は?」


 目を見開いたリヴィウス様の表情が思いがけず可愛らしくて、くすりと笑ってしまう。


「……もしかして、何か策があるのか?」

「ありますよ。まあ、策という策ではないですけど、方法ならあります」

「いったいどんな方法なんだよ……?」

「事実を白日の下にさらすだけです。先日の暴漢騒ぎは恐らく殿下の自作自演というか、殿下が仕組んだマッチポンプ的な茶番だったと思いますから」

「え……?」


 リヴィウス様は瞬きすら忘れたかのように、じっと私の顔に見入っている。


「……フェリも、気づいていたのか……?」

「え……? じゃあ、リヴィウス様も……?」

「あんなの、殿下が自分で仕組んだに決まっているだろう? 王都の街の隅っこでピンチに陥ったフェリの前に、そんな都合よく殿下が現れるわけないし」

「ですよね」

「フェリはどうしてわかったんだ?」

「どうしてって、最初からおかしいと思っていましたから」


 私は小さく息を吐いて、淡々と説明し始める。


「はじめは気が動転していて気づかなかったんですけど、よく考えたら殿下が『怪しい人影を見たから、気になってあとを追った』時点でもうおかしいんです」

「は? そこから? だいぶ序盤だけど?」

「はい。だって殿下は、危険を承知で火中に飛び込む、なんてことはしませんからね。よく言えば慎重、悪く言えば臆病、一人で怪しい人影を追いかけるなんてことは、恐らくしませんよ。見て見ぬふりをするか、侍従を呼びつけるくらいが関の山です」

「手厳しいねえ」

「事実ですから。それに、あの暴漢たちもいやにあっさり引き下がったなと思いまして。三対一なら勝てそうだと思っても不思議じゃないのに、殿下が現れた瞬間、示し合わせたように逃げていったのですよ? しかも殿下は、逃げる暴漢を追う素振りも見せずに黙って見送ったんです。不自然すぎるでしょう?」

「確かにな。人命救助が最優先だとしても、すぐ脇を走り去る暴漢を何もせずに見送る、なんてことはないよな」

「極めつけは、騎士団に届け出ようと言ったら渋ったことですかね。自作自演の茶番なら、騎士団に通報されて事を大きくしたくはなかったでしょうから」


 それでも行きがかり上、騎士団に行く羽目になってしまって、内心どんなに焦ったことだろう。


 あの場では「協力は惜しまない」とか「何かわかったら、すぐに連絡を」とかずいぶん偉そうに言っていたけど、実はどうしたものかと頭を悩ませていたに違いない。


 根は小心者のサリエル殿下のことだもの。


「多分、殿下は暴漢に襲われたフェリをタイミングよく救うことで、惚れ直してもらおうとか恩を着せてうまいことフェリを取り戻そうとか、そういう魂胆だったんだろうな」

「……殿下を好きだったことはないので、そもそも『惚れ直す』ことはないのですけど」


 きっぱり言い切ると、リヴィウス様は「ほんと手厳しいねえ」なんて言いながら、可笑しそうに笑う。


「でも、殿下はミリナ様との未来を諦めきれないとか言って、自ら私との婚約解消を決めたのですよ? それなのに、今更私と生涯をともにしたいと言われても……」

「一時はあのぽっと出の珍獣に現を抜かした殿下も、いざとなったらフェリのことが惜しくなったんじゃないか? 珍獣とフェリなんて、そもそも比較にならないけどな」

「珍獣って……」

「ただ、結果的には騎士団に届け出たことで騒動が公になって、殿下の思惑通りの展開になっているわけだ」

「許せませんね」

「まあね。でも暴漢役の目星は、とっくについてるんだよ」

「え!?」


 驚く私を前にして、見慣れたドヤ顔を決めるリヴィウス様。


「あれが殿下の仕組んだ茶番なら、暴漢役はどこぞの貴族令息たちにやらせたんだろうと思ったんだ。街のならず者に伝手があるわけないしさ」

「なるほど」

「で、パウルスとかイザベラとか、その他の人脈とか、ありとあらゆる情報網を使って調べてみたんだよ。あの騒動以降、何か目立った変化とか、これまでとは違った言動が見られる令息がいないかどうか。そしたら、見事にヒットした令息が三人いたんだ」


 それは、もともと素行不良で有名だった男爵令息と権力志向の強い伯爵令息、そして成績不振を理由に学園から退学勧告を受けている子爵令息だったという。


 男爵令息は急に羽振りがよくなり、伯爵令息は王族の側近候補に内定したことを暗にほのめかすようになり、子爵令息は追試験で好成績を収めたとかで、退学を免れたらしい。


「三人とも、殿下の口車にまんまと乗せられたんだろうな」

「そうですね。殿下なら、金にものを言わせたり将来側近として取り立てるなんてできもしない約束をしたり、試験でズルをする秘策を教えたり、そういう悪知恵は働きそうですし」

「……殿下に対するフェリの評価って、だいぶ低すぎない?」

「そうですか?」


 なんだかんだで我慢と苦労を強いられてきたから、存外鬱憤が溜まっているのかも。まあ、当然といえば当然である。


「とにかく、あの暴漢騒ぎが殿下の仕組んだことだと公になれば、殿下も王家も面目丸潰れですからね。再婚約どころの話ではなくなると思いますよ?」

「下手したら、王家の立場自体が危うくなるかもな」

「そんなの、もう知ったこっちゃないです」


 そう言ってほくそ笑むと、リヴィウス様の目に前触れもなく甘やかな熱が宿る。


「じゃあ、この話はこれで終わりってことで、いい?」

「……え?」

「あとは、俺に集中して?」


 言いながら、リヴィウス様は私を柔らかく押し倒した。


 そのまま当然のようにキスの雨を降らせ始めるリヴィウス様を見上げて、私はあたふたと叫ぶ。


「ちょっ、リ、リヴィウス様!!」

「……ん?」

「さ、策が見つかったのですから、もう既成事実を作る必要はないのでは!?」

「…………ちっ、バレたか」

「バレたか、じゃないでしょうーーーー!!!」






◇・◇・◇






 翌日。


 私たちは早速朝一番で騎士団本部へと赴き、先日の強盗未遂事件に関する推察について説明した。


 対応してくれた騎士団員は私たちの話を興味深そうに聞いてくれたうえで、こう言った。


「殿下やフェリシア嬢の話を受けて、犯人は平民の悪党だろうと見込んで捜査を進めていたのですが……。お二人の話を聞く限り、とんだ見当違いだったようですね」


 騎士団の総力をあげて三人の令息たちを調べてみましょう、と約束してくれたことにひとまず安堵して、私たちは昼どきの学園へと向かう。


 そこで待っていたのは、目に涙を浮かべた珍獣、じゃなかった、ミリナ様だった。




「……フェリシア様! ひ、ひどいです……!!」








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