番外編短編・オキシトシン
「はぁ」
そんなため息の音を聞き、高橋咲は顔を上げ、隣の席を見る。
現在、キリスト教系列の女子高に通っている咲。一時はトラブルに巻き込まれ、登校拒否になってしまったが、今は普通に復帰、こうして授業を受けていた。
隣の席の子は、佐倉愛美。頭も良く、運動神経も良い。英語もペラペラ、歌も上手い。ペーパーテストは学年トップの咲だが、総合的には愛美の方が優秀で、後輩からも慕われている。顔もボーイッシュ系美人。黒髪ショートカットが良く似合う。ちょっと王子様っぽい。慕われているというか、たぶん憧れもありそう。
そんな愛美がため息をついているのは気になる。休み時間、咲は軽く事情を聞く事に。
「まあ、最近勉強が辛くてね。親には医学部行けとか言われるし」
そんな悩みを言われ、咲はふむふむと頷く。才色兼備の愛美にも色々あるらしい。
「だったら、愛美。寝る前にネコの動画か画像見るといいよ」
「えー、そんなのが良いの?」
愛美は元々大きな目をさらに丸くさせていた。
「ネコを見ていると、オキシトシンっていう良いもんが脳内から出て、ストレス発散になるとか。どっかの大学が研究データ出してた」
「そう?」
科学的っぽい事を言うと愛美も納得し始めた。
「私がバイトしているカフェにも可愛いネコちゃんがいるの。もふもふしに来ない?」
「もふもふねぇ」
どちらかといえばクールな愛美の反応は薄かったが、放課後、カフェに連れてきたら……。
「ぎゃああああ! 何この黒ネコ! 可愛い、可愛い!!! ネコさまぁ!」
目をハートにし、黄色い声を上げ、看板ネコのミャーを可愛がっていた。
「え、あの子、風早臭がするけど、大丈夫?」
店長の泉美はこんな愛美に呆れていたが、ミャーは、さらにあざといポーズをとり、愛美の指もペペロ舐めて、抱っこされると大喜びだった。どうもネコも美人が好きらしい。
結果、愛美のストレスは解消されたよう。試験でも学年トップになった。咲の順位は下がったわけだが、ミャーと一緒に笑っている愛美を見てたら、どうでも良い気がする。
ご覧いただきありがとうございます。全編完結です。いいね、感想などありがとうございました。本作は去年に書き終わっていたんですが、この短編はネコの日に書き下ろしてみました。よきネコの日を。




