番外編 武蔵ちゃんの誕生日2 高木君視点
やった。やってしまった。
俺はもう何度目か分からない武蔵の家からの帰り道をトボトボと歩いた。
武蔵を家に送った後、自分の部屋に帰り俺は頭を抱えた。
武蔵と付き合えるようになって、正直俺は浮かれていた。
毎日でも会いたいし、一緒にいたい。武蔵が可愛くて仕方ないし、心配だ。
一度武蔵と一緒にいる時に早瀬と偶然あった。
早瀬は急いでいるみたいで、横断歩道の向こうから俺らに手を振ると歩いて行った。
その夜俺の携帯に「番犬頑張りなさいね」と早瀬からメッセージが届いた。
番犬でもなんでもいい。
彼女。武蔵が彼女。なんていい響きだ。
先輩達から揶揄われても笑って流せる。
武蔵と付き合って一ヵ月が経ち、先輩達から、「彼女の誕生日とかはしっかりお祝いしないと捨てられるぞ。記念日はちゃんと押さえとけよ」と言われ焦った。
(俺、武蔵の誕生日知らないじゃん!!)
やべえ、とその日の帰りに急いで武蔵に会い、誕生日を聞いた。
武蔵は小さいから俺より誕生日後かと勝手に思ってた。
結果。
武蔵の誕生日は終わっていた。
しかも。
付き合ってる最中にだ。
せめて、付き合う前だったらまだ、いい訳出来た可能性がある。それでもかおるこさんの事があったんだから、いくらでも聞く機会があったはずだ。
今になってみるとなんで聞いてなかったんだ、と、後悔しかない。
(俺、捨てられるの?)
(でも、武蔵は俺の誕生日祝ってくれるって言ってたし)
大丈夫だよな?俺捨てられないよな?でも、やっぱり嫌われたかな?と、思っているとマサトから電話がかかってきた。
「よー。高木。元気?この間の中華。美味かったな。また行こうぜー」
「ああ。どうした」
「いや、高木この間、彼女出来たって言ってたじゃん。それで、アドバイス貰おうかと思って」
(俺、振られるかもしれないけどな)
「マサト、なんかあったのか」
「気になる女の子がいるんだけどさ。その子が今度誕生日なんだよ。付き合う前にやるもんって。どんな物がいいかな?」
(誕生日!!!付き合う前でもやっぱりプレゼントはするよな・・・)
「うん。そうだな、祝う気持ちが一番だな」
(忘れてた俺が言う事じゃないだろ)
「うーん。重たいって思われたくないし、引かれたくないし。まだ友達だからなあ。だけどあんまり安っぽいのもなあ」
「お前のねーちゃん達に聞けばいいんじゃないか?」
(俺にも教えてくれ)
「ねーちゃん達なー。それとなく聞いたわ。付き合う前の男に何欲しいかって。そしたら、気になる男からだったら普段使ってる高い物がいいって言われた。好きでもない男からなら金以外いらん、って。なんだろな」
(え。金以外いらないの。俺、付き合ってるから大丈夫だよな。好きでもない男じゃないよな。ここからの挽回の仕方を教えてくれ)
「マサトが普段使ってるものってなんだ?」
「うーん。俺?携帯?財布?バッグ?カードケース?キーケース?これだけで外、出てる」
「じゃあ、その中のものでちょっといい物あげたらいいんじゃないか。携帯ケースのいい物とか。バッグは高いから、カードケースのちょっといい物とか」
「おーさすが彼女持ち。なるほどねー。ちょっとネットで見てみるわー。高木サンキュー。また飯行こうぜー」
「ああ。がんばれよ。またな」
(いや、俺だろ頑張るの)
マサトからの電話を切り。そっかあ、友達の時からプレゼント送るの普通かあ。と頭抱えた。
(もう!高木君、誕生日祝ってくれないなんて信じられない!!もう嫌い!!)顔を背けられて、武蔵から言われたらどうしよう。
(私、祝ってくれなくて寂しかった・・・。もう別れましょ。さよなら)泣きそうな顔で武蔵が俺に告げる・・・。
(楽しみにしてたのに・・・。高木君の私への想いってそんな感じなんだね。私達、あわないんじゃない?)冷めた目で武蔵が俺を見る。
(高木君、いつも会ってるのに、肝心なお祝いしてくれないなんて最低。かおるこさんや、志麻ちゃん達と一緒にいるほうがいいわ) ああ、なんかだんだん具体的に思い浮かぶぞ。
やべえ、もう最悪の結末しか見えねえ。
やばいやばいやばい。
(うわあ。マジか。今、俺はタイムマシンが欲しいよ。誕生日にタイムマシンくれ。いや、俺の誕生日まで一緒にいれるのか?そこまで俺は武蔵と付き合っているのか?)
ああ・・・。
なんで俺は誕生日を聞いてなかったんだ。
俺は部屋の片隅で蹲りながらガバッと身を起こした。
(まだなにか聞き忘れあるか?俺、武蔵の事ちゃんとわかってないんじゃねえか)
急いで携帯で色々検索をする。
彼女に捨てられない為にはどうしたらいいのかと検索する。
(恋は一方通行。愛は双方向。
愛は真心。恋は下心)
やばいやばいやばい。
なんでこんなの出てくんだよ。
思い当たる節しかない。
(高木君サイテー)武蔵がプンっと怒っている姿が浮かぶ。
うわあー!!!
俺は部屋で頭を抱え悩む。
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