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第四話 魔法の先生登場!

 見切り発車回ですので、色々ご了承ください。

 マルナの妊娠が発覚してから数ヶ月後、俺は3歳になった。

 そしていつもの様に、日課となった体内魔力の鍛錬に勤しんでいた。

 今日は今まで溜め込んでいた魔法教本の知識を使って、本格的な魔法を実践する。

 初めて使用する本格的な魔法なので、制御に失敗し、我が家を壊すかも知れないので、実践前にマルナに許可を求める。


「ねぇ、母さん。今から、本格的な魔法を使ってみたいんだけど…、良い?」


 いつもの様に、必殺の笑顔でお願いしてみる。


「い、良いわよ。でもその前に、母さんがお手本を見せてあげる」


 おぉ~! 一発で許可が出た。流石は必殺の笑顔、効果は抜群だ!


 それはともかく、魔法教本を自室より持ち出し、マルナと共に中庭に出る。


「じゃぁ 始めるわよ」


 そう言ってマルナは突き出した右掌に大気中から魔粒子を収束させ、ライアスが何時も訓練に使っている丸太人形に向かって撃ち放つ。

 放たれた魔法は、何かしらの衝撃波だったようで。シュ! っと音を立てながら丸太人形に迫り、やがて着弾する。

 意図的に威力を殺したのかは解らないが、ボスっ! と気の抜けた音を立てた。


「ふぅ、攻撃魔法は得意じゃないけど、お手本としてはこんなもんかしらね。じゃ、ダインやってみて」


 やっぱり、理論で物を教える派じゃなくて、感覚で掴みなさい派だったようだ。

 教本を何度も読んでおいて助かったな…。


 この世界での魔法は、自らの体内魔力で魔粒子を一度収束させ、イメージによって属性と指向性を持たせる事によって、初めて発動できる。

 この一連の動作にも、体内魔力を消費すると教本に書いてあったので、これに耐える為、体内魔力の鍛錬を半年以上続けていたのだ。

 俺もマルナに見習って、衝撃波を作り出す事にする。

 火や水や雷の属性も使ってみたいが、制御に失敗して大惨事にしたくないので、当たり障りの無さそうな、風の属性にした。

 先ずは大気中から、魔粒子を俺の目の前に収束させる。

 俺は頭の中で、属性は風、風圧で対象を殴るという指向性のイメージを作り、威力もかなり弱く設定する。

 この一連の動作中も、体内魔力が減っているのが感覚的に解るが、鍛えたお陰もあって、そこまで大量に消費した感覚は無い。

 そしていざ発動!

 風圧は弱く設定したにも関わらず、ギュオン! という鋭い音を立てながら丸太人形に迫る。

 ヒヤッとしたが後の祭りだった、一瞬で丸太人形の上半分はバゴン! という音を立てながら吹き飛んだのだ。

 俺は恐る恐るマルナを見上げた。

 マルナは目を丸くして、口をあんぐりと空けている。

 固まってしまったマルナを再起動させるべく、俺はマルナに声を掛ける、そっとね。


「あ、あの。母さん?」


 俺が問いかけると、マルナは目を丸くしたまま聞いてきた。


「ダイン、今のは威力抑えたの?」


 若干プルプルしている、流石に怒られるだろうと思った。

 だがしかし、確かに威力は抑えたんだが…。

 考えても仕方がない、やってしまったものは取り返しが付かない事もあるので、俺は俯きながら答えた。


「う、うん。かなり威力も抑えたし、集めた魔粒子も少しだったんだけど…」

「そ、そうなのね…」


 マルナが難しい顔をして腕組みをし、何やら考え込んでいる。

 あぁ~、こりゃ初めて怒られるだろうなと思ったその時。


 コンコンと、玄関をノックする音が聞こえ、知らない男性の声が聞こえてきた。


「マルナいるか? 私だ、カディウスだ!」


 マルナは考え込んでいた顔から一変、驚いた顔をしながら玄関に駆けていった。


 玄関先でなにやらマルナと親しく話しているようだったので、邪魔をしないように、中庭で何時もの魔力球で鍛錬を続けていると、玄関先から戻ってきたマルナが話しかけてきた。


「ダイン、こちらの人に、訓練を見せてあげても良いかな?」


 俺は訓練を中断し、マルナの横に立つ男性を見る。

 金髪碧眼で色白の肌、耳は長く先は尖っており、その男性がエルフであること示していた。

 金髪は肩の高さで切りそろえられている、目付きは鋭く、誇り高そうな感じがする。

 機嫌を損ねさせるといけないので、先ずは礼儀正しく挨拶をする。


「先ずは始めまして、僕はダイン・リヴォースと言います」


 魔結晶の前で両手を組み、深すぎず浅過ぎずに腰を折る、この世界の礼儀作法の一つだ。

 因みにこの知識は、俺の自室にある《ルキリア貴族との接し方》という本に書いてあった。

 カディウスと名乗ったその男性は、驚いた顔をしていたが、直ぐに元の顔つきに戻り、俺に話しかけてきた。


「ほぉ 3歳にして貴族の挨拶が出来るとは大したものだ。申し遅れたが、私はカディウス・サライアスという、君の父と母とは、冒険者時代からの付き合いだよ」


 挨拶が終わると、マルナがカディウスさんに向き直り、得意げな顔で俺を自慢し始める。


「どう! カディウス? 家の息子は大したもんでしょ!」


 しかし、カディウスさんは表情を変えずに。


「感覚派の君と、あのライアスとの子とは思えないな」


 あぁ~、やっぱり感覚派だったのか。

 知り合い皆に、そう思われてるんだろうな。

 ライアスって、知り合いになんて思われてるんだろう? と考えていたら、マルナがズイっと、カディウスさんに睨みを利かせる体制をとる。


「ちょっと、それ、どういう意味よ?」


 カディウスさんは額を押さえ、俺を指差しながら、呆れた声で言い返す。


「そんな目で睨まないでくれよ。ほら、息子の前だぞ?」


 それを聞くと、マルナは俺をチラッと見た後、ワタワタとし始めた。


「え!? ええ~…、そうね…」


 顔を真っ赤にして俯くマルナ、横では苦笑するカディウスさん、ところで俺はどうなっているんでしょうか?


「えっと 母さん 俺の訓練を見せたら良いの?」


 俺が話しかけると、顔を真っ赤にしていたマルナがハッと再起動する。


「そうだったわね、それじゃお願い」


 素早い立ち直りだった。

 まぁ、お願いされたので訓練再開だな。

 属性や指向性を伴う魔法は、しばらく使わないほうが良いだろう。と言う事で、何時もの魔力球を作り、最近発見した魔力球操作を行う、するとカディウスさんは目を丸くして、口をあんぐり空けながら驚いている。

 とりあえず無視して鍛錬を続ける事数分、カディウスさんが口を開いた


「ダイン君? だったかな、その訓練は何時からやっているんだい?」


 俺は魔力球を消し、カディウスさんに向いて答える。


「2歳と少しの頃からやってます、多分今月で半年になるかと」

「ふむ、もしかして先程、攻撃魔法を発動し、そこの丸太人形を子渡したのは君かな?」

「そうですね、かなり弱く制御したんですけど…」

「やはりそうか、私の持つ魔道具〔マジックセンサー〕に強い反応があったのでな。なにかあったのではないかと思って、帰国早々に此処に立ち寄ったのだよ」


 魔道具? マジックセンサー? 何ですか? その非常に面白そうな物は!

 ここは質問をぶつけなければ!


「マジックセンサーですか?」

「あぁ、これの事だ」


 カディウスさんが、懐から薄い円盤状の何かを取り出して見せてくれた、気になったので良く見せてもらおうと、お願いしてみる。


「あの、良く見せてもらっても良いですか?」

「あぁ、構わないよ」


 そして、カディウスさんから手渡された瞬間、俺の頭の中に無数の大小の様々な、数色の点が映し出され、俺は思わず声にだして驚いてしまう。


「おぉ!! これってもしかして、他人の魔結晶の色や体内魔力を感知できる道具なんですか!?」


 カディウスさんは大変嬉しそうな顔で答えてくれた。


「うむ、その通りだ、私が発案したものだが、今では全大陸中で使われているんだが…。ダイン君、もしかして体内魔力を魔道具に流していないかね?」


 そう言われると、体内魔力が吸われている感じがする、とりあえず魔力を一旦抑える。

 すると先程まで見えていた点が消えた。

 なるほど、体内魔力の鍛錬の最中だったから、魔力が駄々漏れだったようだ、今後は気をつけよう。

 俺はしばらくその魔道具をじっと見つめていた、するとカディウスさんがマルナと話し始めた。


「もしかして、魔道具に興味を持ったのか?」

「どうやらそうみたいね」

「どうやら魔法関連にかなりの才能がありそうだ、良かったら私が少し手解きしよう」

「やってくれるならありがたいわ、さっきみたいにまた何か壊されたらかなわないし」

「先程初めて属性と指向性を持った魔法を使ったのだ、無理も無かろう。しかし、威力を殺してあの破壊力であるなら、強力な守護結界の中か、外壁の外でしか訓練は出来ないだろうな…」


 少しの沈黙の後。


「…後数日待ってくれ、守護結界を私の自宅の地下室に設置しよう。その作業が終わったら、またこちらにお邪魔するよ」

「そう、ならその時にまたね…、って、今までどこ行ってたの?」

「あぁ、他の大陸を渡り歩いていた、私の紋記号魔法の研究に、何かしらのヒントが得られると思ってな」

「あ~ だから3年前に突然、旅に出る、なんて言ってたわけね」

「うむ、その通りだ」


 とその後も二人はしばらく何やら昔話をしていた、俺はこの魔道具〔マジックセンサー〕の機構が気になってしょうがないが、あまり扱いまわすと失礼かと思い、カディウスさんに返した。


「カディウスさん、これありがとうございます、とても興味深い道具でした!」


 カディウスさんはそれを右手で受け取り、懐に仕舞う、そして俺に。


「うむ、興味があるなら、私の自宅に招いた時に、どういう技術が使われているのか説明しよう」


 おぉ!! マジっすか! それはもう元気良く返事をせねば!


「ありがとうございます!」


 カディウスさんは俺に頷きを返して、マルナに振り返る。


「うむ、マルナ邪魔したな、私はこれから色々準備をしよう」

「ええ、よろしくね」

「カディウスさん またよろしくお願いします!」

「ああ」


 そう言って、カディウスさんは足早に去っていった。

 俺とマルナは、カディウスさんが玄関から出て行くのを確認すると、壊れた丸太人形を二人でじっと見つめる。


「さてと、この丸太人形どうしましょ?」


 どうしようもこうしようも無い、ここは素直に謝るのが正解だろう。


「ごめんなさい…」

「しかたないわ、初めての属性魔法だったんだから。ただ、父さんが帰ってきたら、ちゃんと誤るのよ」

「はい」


 そして夕刻となり、ライアスが帰ってきて、俺がぶっ壊した丸太人形を見て、口をあんぐり空けながら目を丸くしている。

 しばらくその状態で固まっていたが、直ぐに復帰し俺に問いかける。


「これは…。ダインの魔法でこうなったのか?」

「はい…。ごめんなさい父さん…」

「いや、丸太人形は良いんだが―――」


 ライアスが何やら思考している、どうしたんだろうか?

 俺は少しだけ不安になり、声をかけてみた。


「父さん?」


 すると、ハッとしたような顔で俺に振り向き、何時ものイケメンスマイルで、俺を顔を見ながら。


「気にしなくて良いぞダイン、魔法の腕をもっともっと磨くんだ。もう少し体が成長したら、父さんが槍の稽古を付けてやるぞ!」


 気にしなくても良いらしいが、さっきの沈黙は何だったんだ? だがまぁ、壊れた丸太人形が有耶無耶になったのはラッキーだ、ここは喜んでおこう。


「うん! 俺頑張って、もっともっと魔法の腕を磨くよ! 今度カディウスさんの家の地下室で、訓練できるようになるんだって」


 ライアスの顔が、少し嬉しそうな表情になったのが解った。

 知り合いの無事の帰還なんだ、そりや嬉しかろう。


「ほぉ、カディウスが帰っていたのか。あいつは突然現れたり、突然消えたりするからな」


 なんだかんだで、カディウスさんの話で盛り上がった。

 そして、本日の夕食となる。

 その後、俺は自室で今日の訓練の成果を羊皮紙に記入する。

 しかし、羊皮紙も6枚目か…、随分と色々研究したもんだ。

 ま、今度からは更に色々研究できそうで嬉しいけどね、そんなワクワクを抱きながら俺は眠りに付いた。


■■■


 私の息子は、とんでもない才能の塊のようだ。

 息子は、魔法教本を毎日のように読んでいる、よほど興味があるのだろう。

 他の子はどうなんだろうと思い、買い物の途中に、同じ歳の子を持つ人に話しを聞いてみたが、3歳で本を読むと言うのは流石に無いと言われた。

 それもそうだろうと私も思う、私が始めて本を読み出したのは7歳からだ。

 まだ字も上手く読めず、書く事すらもままならなかったのだ。

 しかし、息子のダインは、2歳と少ししてから既に字を読み、半年前には字を書く事も出来るようになっていたのだ。

 もしかしたら、もっと早くから字を読めていたのかもしれない。

 まだダインが1歳の時に、様々な本を読まされた記憶がある。

 そう、あの時から既に、字を読んでいたのではないのかと思う。

 そして、少し前には、魔力球を限界距離はあるとは言え、自由に操作してのけたのだ。

 あの時は夫のライアスと共に驚いたものだった、だが息子のダインは、自由に操作するだけではなく、こちらも限界距離はあるもの、手元から離れた位置に、自由に作り出せるようになっていたのだ。

 この技術はかなり高等な魔法で、下手をすると数百人居る宮廷魔導士のなかでも、出来るのは数人しか居ないとされている。

 

 だがしかし、当のダインは、この技術がかなり高等な物であると知らないようだ。

 しかも、誰からも教わったわけではなく、独自に編み出したと言う。

 そして今日に至っては、夫のライアスが何時も槍の訓練に使う丸太人形を、本人曰く最弱の威力の風の属性の魔法で、上半分を粉々に破壊したのだ。

 正直肝を冷やされた。

 もし、この子が我がままで、親の言う事を一切聞かない子だったら…。

 そう考えると背筋がゾッとする。

 だが幸い、我が息子ダインは聞き分けも良く、最近では食事後の自分の食器を、流し台の付近まで持って行ってくれる。


 それにまだ幼いはずなのだが、どこか大人びている、最近はそんな風に思う瞬間が何度かある。

 例えばそれは、今日我が家にやって来た、友人のカディウスに対しての対応だろう。

 私は友人と言う事で、遠慮無しで何時もの口調で話していたが、息子のダインは驚くべきことに、ルキリア貴族に対しての作法を使った挨拶をしてのけたのだ。

 もう此処まで来ると疑いようのない天才、と呼ぶしかないだろう。

 始めは神童ではないかと思ったので、ダインが寝ている時を狙って、神殿の神官に来てもらい、息子を見てもらった。

 すると、答えは神童ではないと言う。

 恐らく、生まれ持った才能だろうと言ったので、私はこの子を天才であると決めたのだ、その事を夫であるライアスにも話してみたら。


「確かに、色々な才能を持っているだろうとは思うけど、周りに自慢しないように」


 と注意されてしまった、確かに、将来この子が自由な道を選べなくなるのは、親としても望んでいない。

 最悪、親よりも長く生きして欲しい、そう思うようにした。

 皆様のアクセス、お待ちしております。

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