第五話 属性魔法の特訓場
いきなりですが誤ります、ごめんなさい。
説明多いです…。
カディウスさんが家に来た日から一週間が経過した。
この一週間で、マルナのお腹が急激に大きくなった。
この間までは、そんなに大きくなかったのに、急にだ。
やはり異世界である。胎児の成長の仕方も、地球とは随分違うようだ。
マルナはお腹を摩っては、動いた! なんて、よく言っている。
その時は、俺もお腹を触らせて貰い、生命の神秘を感じている。
早く弟か妹の顔を見たいものである。
触りながら俺は念じる。どうか妹でありますようにと。
この世界の文明レベルは高くない、エコーとかそう言う便利な道具は無いのだ。生まれ出でるまで分からない。
ん? 待てよ、もしかして、また黒の魔結晶だったりしないよな? 希少な魔結晶らしいし、そんなポンポン生まれる事もなかろう。
いずれにしても楽しみだ。
そうそう、俺も最近、この世界の時間の概念をようやく知った。
やっぱり魔法が存在して、実際に自分も使える世界に転生したのだから、魔法の事に夢中になるのは致し方ない事だろう。
今までは文字を覚える事と、体内魔力の鍛錬に重きを置いてきたが、此処一週間で、他の書物も読む事にしたのだ。
特に最初に読んだのが、この世界の時間の概念の書いてある書物〔世界の季節と特産品〕というもので知った。
まず1年間は360日、月は12ヶ月あり、一月30日、一週間を6日で、一日24時間 1分を60秒である。
月の数え方は、天の月1~4 地の月1~4 海の月1~4 現代の年号は、新共暦1206年だ。
そして今現在は、新共暦1206年 海の月1ー4日目 午後1時頃となる。
因みに、週の最後の日は休みってのは無く、仕事をしている人たちは、月の初めに、休む日を決めるようになっているようだ。
それと、ルキリスの街には学校があるようだ、入学資格は4大種族であり、6歳を迎えていることで、毎年地のの月1-1日目に、入学式が行われるらしい。
この知識も書物で得たものだ。
しかし、こうしてみると、俺は生まれた家に恵まれていると思う。
製紙技術があるとは言え、製本技術はそこまで発展していないだろうに50冊を超える本が、今の俺の身長の倍ある本棚に並んでいるのだ。
中には〔兵法と戦術〕などと言った、父であるライアスのものであろう書物もある。
この本棚の7割はライアスの書物のようで、あと3割程が母であるマルナのものだろう、題目を見れば一目瞭然である。
ライアスの書物の中には、モンスターに関する物も複数あり、俺が読んだ事があるのは、その中でも初級のようだった。
興味もあったので、中級の書物を読んで解った事がある。
それは、モンスターの脅威度である。
ついでなので、冒険者のガイドブックの内容と合わせて説明しよう。
まずモンスターの脅威度だ、これは全部で10段階あり”ランク”として区分される。
このランクも3つに分けられて、単体ランク、複数ランク、軍団ランクと3つで、最も低いランクは1、最大は10と表記されていた。
単体ランク1の代表格は、やっぱりゴブリンだった。
ただし、基本的に3~6匹程のグループで活動するらしく、基本的には複数ランク2のモンスターとして扱われている。
単体ランク10の代表格は、これまたやっぱりドラゴンだった。
しかし、単体ランクのドラゴンは滅多な事では出現しないらしい。
まぁ、そんな強力なモンスターがポンポン現れたら、この世界は崩壊してるだろうからな。
最大の脅威度を誇るのが、軍団ランク10である。この規模はモンスターが1000匹以上の大群をなした時に与えられるらしい。
ライアスとマルナが、結婚前に遭遇した大群は軍団ランク7の規模で700匹前後のモンスターが居たらしい。
その時に、ライアスはマルナを守って、背中に傷を受けたらしく、風呂に入る時に良く見る。
一度聞いた事があり、その時は誇らしげに、男の勲章だ! なんて言っていた。
まぁ、気持ちが解らんでは無いが、俺は受けたくないな。だって痛そうなんだもん!
因みに、この世界の回復魔法は、そこまで万能ではなく、傷は塞げても、傷跡までは完全に修復できないようだ。
ましてや、部位欠損なんて大怪我を負った場合は、その傷口を塞ぐ事しか出来ないと、マルナが言っていた。
絶対に大怪我したくないと、心に誓ったものだ。
話が逸れたが、冒険者ランクについても語ろう。
冒険者ランクには、単体ランクしか存在しない。
全部で10段階あり、最低が1、最高が10と表される。
因みにマルナはランク7だそうだ。
どの位凄いのか知らないが、高ランクである事は確かだ。
はぁ~、俺も冒険者やってみてー!
私情が入ったが、俺の今現在の知識は以上だ。
そんなこんなで、今は何時もの魔力球で体内魔力鍛錬を行っている。
すると、玄関をノックする音と共に、カディウスさんがやってきた。
「カディウスだ、誰かいるか?」
その声を聞いたマルナが玄関に向かったので、俺もお世話になる身として、同じく訓練を中止し、玄関に出迎えに向かう。
「あらカディウス、一週間で準備出来るなんて流石ね」
「いあ、もっと早く準備できると思っていたが、先週の彼の魔法の威力を見て、色々と改良していたのだよ」
「それはなんと言うか…。かなりの念の入れようね…」
カディウスさんは右手をスイっとあげて、人差し指を立てた。
「念には念をだ」
仰る通りです、俺もその方が良いと思います。
ここはお礼を申し上げなくてはな。
「カディウスさん、僕の為にお手数をおかけしました」
俺はペコリと頭を下げる。
すると、カディウスさんは嬉しそうにしていた。
「相変わらず礼儀正しいな。それで、今はまだ体内魔力は残っているのか? 体内魔力の鍛錬を行っていたようだが?」
俺は、まだ余裕です! という顔をしてこう言った。
「はい! 何時もの訓練内容なら、後2時間は体内魔力が尽きないかと思います」
カディウスさんは驚きの表情で、俺を見ている。
そして、表情を戻し、うむっと頷く。
「ほぉ、随分と鍛えているようだな、では早速私の自宅に向かわないか?」
そう言うと、カディウスさんはマルナに向き直り、目で訴えかけている。
てか、もう向かうんですか?
「そうね、だったら…。少し早いけど、買い物ついでに送っていくわ。まだこの子も幼いのだし、一人で外に出すにはまだ早いものね」
マルナは少し考えてそう言って、腰に手を当てながら答えていた。
カディウスさんはそれを聞いて、ホッとしたのか、表情が柔らかい。
「そうか、恐らく3時間ほどで今日の講義は終わるだろうから、その頃に私の自宅まで彼を迎えに来てくれ」
マルナは腰に手を当てたまま、強く頷く。
「わかったわ」
俺も一言言っておかねばなるまい。
「カディウスさん、今日からお世話になります!」
俺は子供らしく元気良くお礼を言う。
カディウスさんを待たせるわけにはいかないので、急ぎ自室に戻り、羊皮紙を数枚持ち出し、それをマルナに紐で括ってもらう。
その後、俺達3人はカディウスさんの自宅に向かった。
カディウスさんの家は、思ったよりも近かった。
雑談を交えながら、楽しく歩いていたのもあるのだろう。
あっという間に着いてしまった。
カディウスさんの家の玄関先で、俺達は分かれる事になる。
「さて、私は買い物に向かうわね。いい? ダイン、カディウスに失礼のない様にね、案外気難しいから」
案外気難しいから、の部分が小声だったのは…。気を使ったんだろうな。
俺は頷き、元気に答える。
「うん、大丈夫!」
「まぁいいさ、では彼を少し預かるぞ」
カディウスさん聞こえていたんですか? ちょっと目付きが鋭いです。
マルナは、何事も無かったような顔をしていが…。あなたが機嫌損ねてませんかね?
「ええ、よろしくね」
そう言って、マルナは商店通りに向かっていった。
マルナの背中を見ていると、カディウスさんが声を掛けた。
「ではこちらだ」
カディウスさんは、玄関に手を掛け、戸を開く。
さてさて、どんな家で、どんな訓練場なのか楽しみだ。
俺は逸る気持ちを抑えつつ、冷静に返事をする。
「はい」
そして、俺はカディウスさんの自宅に入る。
まず、玄関を入って目にしたのは大量の書物だったが…、我が家の何倍あるのだろうか…。
奥の机の上には大量の羊皮紙と洋紙。そして謎の道具が山のように積まれている。
推測だが、この間言っていた、紋記号魔法を利用した魔道具の設計図やら、作りかけの魔道具、その他作業道具一式なのだろう。
疑問に思ったので、彼の家の中を歩きながら、とりあえず尋ねてみる。
「あの~、カディウスさん」
「なんだ?」
俺に振り返らず、歩きながら答えるカディウスさん。
俺はそれを気にせずに、言葉を続ける。
「あそこの机にある、沢山の物は一体なんですか?」
「ああ、あれは今研究中の魔道具の設計図と、その他材料一式だ」
推測通り、魔道具関連の物だったようだ、俺はまじまじとその一体を見つめる。
カディウスさんは歩みを止めないが、嬉しそうに言葉を続ける。
「興味があるのなら、後で少し触りだけ教えてやろう」
おお! なんて良い人なんだ! 少し煽てれば色々話してくれそうだ。
「はい、是非お願いします!」
「ああ 先ずは君の属性魔法の訓練だ」
「はい!」
そして、その作業部屋の隣に、綺麗に整頓された、物置のような部屋に案内された。
カディウスさんは徐に、その部屋の床の一部を指差し、その部分を引っ張り上げると、階段が現れた。
その階段に、足を一歩踏み入れるカディウスさんは、その下を指差しながらこう言った。
「ここの部屋の地下に訓練場を作った。付いて来なさい」
「はい!」
とにかく元気良く返事をして、ポイントを稼いでおくのも忘れない。
カディウスさんの後を付いて行くように、その階段を下る。
およそ5メートル程降りた所には、広大な空間が広がっていた。
広さは縦横50メートル程だろうか? とにかく広く、天井までの高さは10メートル程あり、内部は非常に明るかった。
光源が何なのか解らないが、昼間の様に明るい。
辺りを良く見ると、壁にはぎっしりと謎の幾何学模様が描かれてある。
とりあえず、疑問に思ったので尋ねようと思ったら、カディウスさんが少し自慢げに声をだす。
「今日から此処で、君の属性魔法の訓練を行う」
なんだか誇らしげだ。俺はとにかく元気に返事をする。
「はい!」
それを聞いたカディウスさんが頷く。
「うむ、この空間は紋記号魔法で作り出したもので、内部には魔粒子を外部から取り込むような仕組みを作っている。それに、ここの壁にはあらゆる属性魔法を吸収できるような仕組みを組み込んでいるから、君の最大威力の属性魔法にも耐え得るだろう」
言っている事は解るが、余程の自慢の空間なんだろう。
しかし、どうやってこんな広大な空間を作ったのだろうか? 疑問に思ったので、訓練の前に質問してみた。
「カディウスさん、質問しても良いですか?」
「なんだ?」
「こんなに広い部屋をどうやって作ったんですか?」
「ああ、それは紋記号魔法の効果だよ。現存する空間を、拡大もしくは縮小する紋記号を応用したものだ。今は広大な空間を、紋記号魔法的に作り出しているに過ぎない」
…いまいち良く解らない説明だが、紋記号魔法は、使いようによっては物凄い効果を得られるのだろう。
とりあえず煽てておこう。
「流石です!」
この一言を聞いた途端、カディウスさんの顔が更に誇らしげになり、うむ! と、力強く頷いた。
「うむ! それでは訓練を始めるとしよう。昨日試験的に私が自ら魔法を放ってみたが、外部には何の影響も無かった、思う存分属性魔法を行使してくれて構わん」
「はい!」
俺は強く頷き、返事をする。
そう言われたので、俺は遠慮なく属性魔法を行使する。
先ずは俺の前方に魔粒子を収束、それに平行してイメージをする。
今日は被害が出ないと言う事なので、属性を火にし、ある程度の加速を与え、10メートル程移動させた後炎上する、という指向性を持たせて魔法を放つ。
俺の体内魔力の5分の1程を消費し、放たれた火球は、イメージ通りの動きをし、10メートル程素早く移動した後、天井を通り越しそうな程の火柱を立てる。
かなりの迫力だったが、部屋の中は少しも揺れなかったので一安心だった。
その一部始終を見た後に、カディウスさんを見てみると、驚きの表情をしていた。
これはまずかったのだろうかと思い、声をかける。
「あのぉ…。どうでしょうか?」
声をかけられたカディウスさんは、驚いた表情から一変、ハっとなって表情を誇らしげなものに戻し、語りかけてきた。
「ああ…。すまないな、今の属性魔法は、私の属性魔法と同じ程度の威力があったと見えた。今度はもう少し、威力を抑えて打ち出してみてくれ」
「わかりました」
そう言われたので、今度は威力を抑えてもう一度、火の属性魔法を行使する。
イメージするのは、火球を打ち出すだけのものだ、速度は速めに設定し…。
いざ発動!
その火球は先程の魔法の速度を遥かに越えて、目視するのも困難な程だった。
火球は壁の端に到達すると、壁に吸い込まれる様に消えていった。
今度はどうなのか? と思って、カディウスさんを見上げる。
「やはり、私の推測通りのようだな」
「どういうことでしょうか?」
「うむ、君の魔結晶だよ」
「僕の魔結晶に、何かあるんですか?」
カディウスさんは腕組みをし、思案するような表情となり、口を開く。
「ああ、黒の魔結晶はあらゆる魔法の特性を扱えると、古代の文献には書いてあったが、そこまでだ。私が推測したのは、黒の魔結晶には魔法の威力を数倍に高める独自効果があると推測していたのだが、間違いではないようだ。その理由として、先程の火柱の立った火の属性魔法と、今行使した速度優先の火球がいい例だろう」
ん? どういう事だ? 聞き返そう。
「と、いいますと?」
カディウスさんは頷く。
「うむ、それぞれの魔結晶には、その色固有の特殊能力が備わっている。私の魔結晶は青だが、この色の特徴は、君も魔法教本で読んでいるから知っているだろうが、固有の特殊能力は知らないのではないか?」
そう、魔結晶には色固有の特徴が有る。
カディウスさんの青は、補助的な魔法を得意とし、有る程度の攻撃、回復もこなす特徴がある。
この際だ、説明をしよう。
母であるマルナの緑は、回復と補助に特化しているが、攻撃的な魔法を苦手とする。
覚えているだろうか? マルナが丸太人形に撃った風属性の攻撃魔法は、威力は絞ったが、元々が弱かったという事である。
だからあの時、調整するのに疲れて、「ふぅ~」と言ったのだ。
話を戻そう。
次は父であるライアスは、赤の魔結晶である。
特徴は、攻撃的な魔法に特化するが、反面、補助や回復などが苦手となる。
まだ見た事は無いが、黄の魔結晶がある、こちらの特徴は、性質変化の魔法のみが使える。
生質変化とは、水をゲル状にしたり、複数の金属を融合させたりできる魔法で、どの色でも使用できる。
因みに、俺はこの性質変化を試した事は無い。
失敗したら、何かとんでもない事になりそうで怖かったのだ。
私情が入ったが、次は紫の魔結晶だ。
特徴は、身体強化の魔法のみが使える。
この身体強化は、黄以外であれば行使可能だ。
俺はまだ、身体強化を使った事は無い。
何故かって? 使ってジャンプしようものなら、どこまで飛ぶか解らないんだぜ? 怖くて使えない。
さて、次は俺の黒だが、例が少ないという事もあるせいか、詳しくは記載されいない。
ただ、様々な魔法に適正があるのではないのか? と記されていただけだった。
最後は白だ、この色は、俺の黒以上に伝説級である。
なんと言っても、出産例が無いと言われていて、伝承にのみ、その姿が登場する。
俺がまだ赤ん坊の時に、良く読んで貰った御伽噺の主人公がそれだ。
しかし、伝承になる位だから、実在してそうなんだが…。
今は考えても仕方ない、いずれ知り得る事もあるだろう。
説明は以上だが、固有の特殊能力は初耳だ。しっかり聞かなければならないだろう。
「はい、今はじめて聞きました」
カディウスさんは大きく頷くと、指を立てて説明してくれた。
「先ず、私の青の魔結晶の固有の特殊能力は、補助魔法の効果をのみを高めると言うものがある。赤であれば攻撃魔法を、緑であれば回復効果を、黄色であれば性質変化を、紫であれば身体強化をそれぞれ高めてくれる。この特殊能力は広くは知られていない、魔法研究者か、軍のみが秘匿しているものだ。私は魔法研究者であるので知っていたが、教本などには決して記載されていない内容なのだ」
え!? ちょっ! そんな秘匿事項を俺に教えて良いのかよ!? と思ったが、ここは有り難く聞いておく。
聞ける時に聞かないと、次は何時知り得る事が出来るのか解らないからな。
待てよ…。という事は、黒の魔結晶も何かしらの効果を増強させるのか? ここは聞いてみるしかない。
「おぉ! なるほど~! それで威力を抑えても何故か威力が上がってしまうのは、俺の魔結晶の色が黒だから、だと言う事なのですね」
「うむ、その通りだ。試しに…そうだな…。補助魔法を使ってもらおうか」
良い返事だ! 的な顔で頷かれた。
何か腑に落ちないが、言い得ていたらしい。
でも何で補助魔法?
「はい! …ところで、どんな補助魔法が良いでしょうか?」
カディウスさんは顎に手を当て、思案の表情をする事数秒、ゆっくりと俺を見る。
「ふ~む…。では私に対して対属性魔法の障壁を張ってもらおうか」
「了解です!」
この魔法も魔法教本に書いてあったので、いつもの様にイメージで構築する。
魔粒子を、障壁の対象者の前方に収束させ、その魔粒子で対象者を包み込むような、膜状になるように展開させる。
属性魔法に含まれた属性と、指向性を散らす壁を作る。
何かあったらいけないので、少し厚めにし、5分程維持できるようにしておこう。
時間設定も出来る便利魔法だが、行使した者が近くに居なければ、障壁の維持は出来なくなり、ただの魔粒子に戻ってしまう。
因みに、補助系の魔法には有効時間を設定できるのだ。
それは良いとして、俺の残り体内魔力が、半分ほど無くなる感覚があったが、気にせずにいざ展開!
すると、カディウスさんの周りに、分厚い球体の膜が生成された。
さて、カディウスさんの反応は?
「すばらしい障壁だな、私の障壁と同等か、それ以上だ」
褒められた! これは嬉しいな、初めて行使したんだが、では上々のようだ。
「ありがとうございます!」
「では、先程の速度重視の火球を、私に向かって撃ってみなさい」
ん!? ちょっとあなた! 自殺願望者ですか? 俺なら勘弁して欲しいが。
「え!?」
「大丈夫だ、この障壁の強度ならば打ち消せるだろう」
そこまで言うんだったらやりますよ? ホントだよ?
「わ、わかりました」
もうどうなっても知らんよ?
言われたとおり、火球の魔法を打ち出す。
すると、その火球は俺の作った障壁に見事に掻き消され、俺はそっと胸をなでおろした。
「ふぅ…。上手く行きました?」
「ああ! 上出来だ! この障壁の強度も、恐らく君の魔結晶の効果でかなりの物のようだ。因みに、消し方は知っているか?」
何だって!? 補助魔法の効果も上がっているのか…。
いや、この思考は後だ、今は障壁を解除しなければならないが…。
展開の仕方は、教本に載っていた通りにやった。だが解除の仕方を読んでいなかった。
というか、書いてあったっけか?
「あ! すみません勉強不足でした…」
「やはり知らなかったか…。君の読んでいた教本には、展開の方法しか載っていなかっただろうからな」
マジかぁ~、どうりで知らなかった筈だ、何度も読み返しているんだが、今納得した。
しかし、知らなかったではすまない事も、この世の中には有る、ここは誤るのが正解だろう。
「すみません…」
俺はチョット落ち込んだように俯く、実際シュンとなってしまった。
「顔を上げなさい、これから解除方法を教えよう。その前に、体内魔力はまだ残っているか?」
俺は顔を上げ、この問いに答える。
「はい、後3分の1程でしたら」
「それだけあれば十分だろう。解除の方法は至って簡単だ、展開した時とは逆の手順を行う。理屈を述べると、展開した障壁の魔粒子を、展開者が分解のイメージを持つだけだ。この時に体内魔力を消費する、ではやってみたまえ」
ほおぉ、そうだったのか、意外と単純だな。
俺はハッキリと返事をする。
「はい!」
俺は言われたとおりに、展開された障壁に対し、それを構築する魔粒子を、展開者が自らが分解するイメージをする。
確かに体内魔力を消費している感覚があり、展開時よりも、解除の時の方が消費量は多いようだった。
約20秒程掛かって障壁は分解されたが、同時に本日分の体内魔力は枯渇寸前になったようで、どっと疲れてしまった。
正直チョットしんどいが、歩けないほどじゃない。
「はぁ、はぁ、解除、終わりました…」
「うむ、すばらしい出来だった! 今日の魔法訓練はこれで終わりとしよう。君の体内魔力も、底をついているだろうからな」
「はい、ありがとうございました!」
俺はカディウスさんの顔を見て、元気に感謝の言葉を伝える。
もう一度彼の顔を見ると、口の端が上がっていた。
「いあ、構わんよ。しばらく、君の訓練に付き合おうと考えていたからな、私は研究のため、君は訓練の為、お互いに益のある話だろう?しかし、君も疲れただろう、茶でも飲みながら、紋記号魔法の話でも聞かないか?」
おぉ~! 紋記号魔法の話を聞けるチャンスがこんなにも早く訪れるとは…。
願っても無いチャンスです、有り難~く、聞かせてもらいます!
「はい! おねがいします!」
「うむ では一旦この空間から出るとしよう」
「はい!」
そして、俺とカディウスさんは、紋記号魔法で作られた特殊空間から出て、居間に向かい、お茶まで出してもらって、紋記号魔法の話を聞く事になった。
もう少し話が進んだら、キャラがドッと増えます。




