第517話 いらない深い傷
前回のあらすじ
選挙喫茶って何
「味は良くもなく悪くもなく、普通って感じかな。」
まあ平均より少し上程度。こういうところのはやっぱりそれぐらいか。
「抹茶は美味しいけど……。なんか抹茶の良さを活かしきれてない感があるなぁ。」
「なんかお兄ちゃんのと比べると物足りなくかんじちゃう。」
「頑張って作ってるんだからそういうことあんまり言わないほうがいいんじゃないか?」
ちょっと不平は垂れつつも、まあみんな内心では楽しんでそうだった。程度は言わない。
「あの……私あなたとの公約を叶えますから……だから、私に清き一票お願いしますね。」
「あ……はい。」
「………」
気まずさに耐えきれず、純は離れて行ってしまった。
「ごちそうさま。」
「じゃあ次行こー。」
「財布財布……。」
さっきのことはコンセプトだからだと後で気づいたものの、有耶無耶になっていたのでそのままなかったことにしようとした。
それぞれお金を払って、店の中から出ていった。
「あぁぁぁー!」
客が誰一人いない店内。純は小さな声で叫びながら顔を壁にくっつけていた。もうヤケになってあの子達を接客していたが、さっきの最後にやれとマニュアルに書かれていたことをやったときのあの子達の反応でちょっと色々な思いを抱えていた。
あの子達私だと気がついてないよね。お願いだからそうして。
「たっだいまー。いやー重たくて時間かかっちゃったよーっ。」
「ちょっと!ちょっとなんで私に接客やらせたの!おかしいでしょなんでいなくなるの私行ったら良かったよね!」
もう色々とあったせいでいつものクールな純とは明らかに違う感じになっていた。
「純ちゃん!?いつもの純ちゃんらしくないなぁ。あ、でもコレはコレでいいかも。写真撮って恋ちゃんに送ろうっと。で、何があったの?」
純が事情を語る間、その娘は後ろ手でスマホをカメラモードにし、音の出るところを指で抑えて音をなるべく消してバレないようにその写真を撮っていた。
「あお客様だ。純ちゃんごめんまた今度ね。」
そして後で、その写真を恋へと送っていた。
純は無駄に負わなくていい傷を負ったようだった。
「次どこ行く?」
時刻は11時25分を指していた。まだまだ時間はたっぷりある。
「めちゃくちゃ行きたいってところはないから、適当に回る?それでいい?」
「賛成。」
というわけで、近いところから手当たり次第に行くこととなった。
キャラ紹介
羽村 津子
純と同じ演劇部員
純や恋と交流がある
純とは演劇部の練習終わりの帰りはほぼ一緒に帰っている
演劇の上手い純を尊敬している




