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魔法の木エニシダの香り  作者: 文乃木 れい
慧の目にうつる世界
40/50

12月議会

 12月12日。庭の椿を一本切って家に入ると 朝刊を取ってきた夫が 「載ってるぞ」と食卓に新聞を開いておいた。 


【 保育所を統廃合 父母らが反対運動 村側、定員割れ理由に強硬 】

 

むろん、地方版ではあるが、上段に思ったより大きく出ていた。 

ひなぎく園の写真入り。ここでどれだけのこどもたちが成長してきたことか、そして父母たちもここで多くを教わってきた。むしろそのことのほうが大きい意味を持つ。子供たちは放っておいても大きくなるのだ。重要なのは、そのこどもたちをどう導いていくかを大人たちが知ることなのだ。

 このひなぎくの園舎の写真を村長はどういう思いで眺めているのだろう。

  

12月の定例議会が始まっていた。

 今日あたりに 保育所設置条例改正案が議案として提出されるだろうということで、村の保育関係の方たち、ひなぎくの父母も大勢傍聴席にいた。

 すり鉢状の議場の真ん中に議員と行政が向かい合って座っている。

 その間に照沼議長。

  小学校の図書室の充実、学校司書の設置について討論されていた。

 去年村には図書館が新設された。児童図書が充実しており、くつをぬいでくつろげるようになっている読み聞かせのコーナーもある。新田さんがそこでパートをしているのだ。彼女は、

「ここはいいけどねえ、理沙の小学校の図書室なんてひどいもんよ。本も少ないし、好きな時に借りてくることもできないのよ。管理する人がいないからなのよ。」といつもこぼしている。一ヶ月に1~2回図書室が使えるという日が回ってきて やっと貸し出ししてくれるんだそうだ。 学校に司書がいて、本を使っての調べ方や、読書の喜びを教えてくれたらどんなにいいかしらねえと彼女はいつも言う。

 

 しかし、この議題は あっという間に不採択。

 学校図書室の充実は各学校単位で改善にむけて努力することが望ましいとなり、学校司書については教諭が兼任することの是非について踏み込んだ議論をすることもなく終わってしまい、現状のまま当面教諭兼任で行うということになった。

のっけから,なんか割り切れない。 

 本気でこどもたちのことを考えてんの?この人たち。


いよいよ保育所の問題だ。

 議案第80号、保育所設置条例の一部改正について

議長の条例案を説明する声が響いている。


この議会に向けて もうひとふんばりしましょうと、木田さんが呼びかけて、再度、署名活動をした。ひなぎくの父母たちは一度経験した強みで、四日間という短期間に2600あまりの署名を集めることができた。

父母たちにとっては正念場、息つく間もないほどの忙しい数日だった。

 

代表質問で、請願の紹介議員になってくれた町田議員が保育所の議案に触れた。


「8月26日に保育所の統廃合を行うべきという社会福祉審議会の答申がでました。その後9月の議会におきまして6427名の署名を添えた保育行政の充実、保育園を廃止しないでという請願が不採択になりました。

しかし、この6000名を超えた署名は村始まって依頼のことであり、多くの人々の関心をもったこの保育所の問題を真剣に討議しなければならないと、村長もこの一年間は見極めの時期にしたいと言明しておられました。

 村の全保育園も、入所児童が増加しております。一年間以上は見極めの時期としたいと言明され、しかも定員割れという廃止理由がくずれるかもしれないという状況にありながら、たった、三ヶ月足らずで、条例改正案を提出に到った理由の説明をお願いします。」


村長の答弁はおざなりのものだった。

 

 『公立保育園の定数割れは村の子供の出生率の低下からも改善されないだろう。

  この時期の改正案という理由につきましては、来年度からの園児募集を考慮し、今議会で方針決定せざるをえないということであります。』


 一年間が見極めではないの? 村長そう言ったんではないの?

傍聴席がざわついた。

これって答えになってるの?

 

そのまま質疑に入った。


質疑は、それなりに長い時間がかかったが、結局、

村長は

「1年間の見極めというのは、今年度中という意味で申しておった訳です。」

とか、いい逃れて、保守系議員が多いのだから、そのまま多数決で、あっさりと統廃合は決定してしまったのだった。



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