01- ファーストステージ・空間の置き換え
長い廊下の突き当りに木製の二枚扉がある。扉の前には番をする様に立つ男性。
ヒューマノイドだ。人間ならば定年に近い年齢の外見をしている。
扉の直前に、前触れもなしにエイミーが現れた。続いてカイマナイナも何もない空間から当然の様な顔で現れる。
驚いた様子も見せずにヒューマノイドが頭を下げた。
「お帰りなさいませ。マクリミラーレ様。ラム様。局長室へご案内します」
「…この煩わしい儀式が嫌いだ」
エイミーがつぶやいた。
後ろからカイマナイナが笑ってエイミーの背を叩く。
「防衛システムなんだから仕方ない仕方ない」
「この扉の先は最終的に局長室へと繋がっておりますが防犯上4つのアクティビティが常時作動しております。扉を開ける前にご説明しますのでご判断下さい」
恭しく掌全体を使って男が扉を指し示す。
その態度がこの扉の先へ進むことの重大さを物語っていた。
「最初の扉の向こうにはエレメンツ・アクティビティのファーストステージである“空間の置き換え”が発動しております。対抗の能力を持たないエレメンタリストの方は入室後強制的にこの扉の前、つまりココに転移させられます。扉を開きますか?」
「さっさとしろ」
男が頷いて扉を開き先導する様に中へ入った。エイミーとカイマナイナも後に続く。
扉の向こうは何の調度品もない空室になっていた。
天井と床に巨大な円形の模様が描かれ薄い光を放っているがそれだけだ。
部屋の突き当りには別の扉がある。
男が先導して部屋に入りエイミーとカイマナイナが続く。
二人の体の周囲で糸くずが風に舞ったかの様な雷閃が走った。
何らかの力が二人に働きかけ、二人の持つ力がこれを拒んでいる。
その様子を先行したヒューマノイドが振り返って観察している。
ヒューマノイド自身は古代民族がデザインした様な模様が甲の部分に描かれている手袋をつけている。
その甲の部分周辺にも微かな雷閃が現れては消えている。
それ以上の事は何事も起こらずに3人は2枚目の扉の前に到着した。
再びエイミーが煩わしい、とつぶやくが答える者はいない。
男が扉の前で立ち止まった。
「この扉の向こうはアクティビティのセカンドステージ“物質の置き換え”が発動しております。対抗できない者は全身が」
「開けろ」
エイミーの言葉も無視して男が説明を続けた後に扉を開けた。
扉の先にあったのは再び空室。部屋の正面奥には次の扉がある。
だが今回の部屋には先客がいた。




