19‐ 確保
カイマナイナから離れた場所に落ちていた青い衣の男の首が不意に消失しエドワードの足元にこれも忽然と現れた。
エドワードがこれを両手で拾い上げる。
「私達エレメンタリストは定められた寿命がくるまでは何があっても死ぬ事がない。その男も放置すれば体の再生が始まるわ。その再生に振り分ける力を私の方で吸収しておいてあげる。貴方の用事が済むまで力を封じられた喋る事しか出来ない首のままで預けておいてあげる。深く感謝しなさいねエドワード」
返答を待つ素振りも見せずにカイマナイナが血肉が押し広がる地面へと目を向けた。
「臭いグロいグロい。でも火炎界のエレメントを含んでいる事に変わりはない。これはこれで美味しそうだわ」
優しくあげた手の先で細い指をゆらゆらひらひらとさせる。
青い衣の男の血肉が、6頭分の巨大な虎の血肉が、水分を失った細かな砂の様に宙に浮きあがりカイナマイナの小さな掌の中に一瞬で吸引された。
軽い砂を強力な掃除機で吸い込んだ様な、霧の噴霧映像を逆再生したかの様な消え方だった。
「帰るわね。また遭う日が貴方が死にかけている場面である事を祈っているわスイートパイ。死に臨んだ時の貴方の表情が好きだから」
そうアイリーに告げて片眼をつむる。
「阿呆が。肉を食いたかっただけだろ。あたしは変な苗字は嫌いだ」
エイミーが声だけを残して闇に消えた。
カイナマイナの姿も一瞬でアイリーの眼前から掻き消える。もはや気配もない。
今になってようやく、夜の街の喧騒がアイリーの耳に遠く聞こえてきた。
「無事に生き延びたね、ミスター・スウィートオウス。君を病院まで送ろう。武器庫として運用している車両を公園の脇に待機させている」
エドワードがアイリーへと歩み寄ってきた。
アイリーがエドワードの声を聞いてゆっくりと振り返った。
その目が一瞬、左右に激しく揺れる。
感覚向上が解除されたのだ。外見に解除の様子が現れるのは珍しい。それほど高い緊張感を伴っていたのだろう。
呼吸を整えるためでなく、安堵と疲労のためにアイリーは大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
「救援に心から感謝します。病院への搬送もよろしくお願いします。叶うならその前に直接お礼を言わせてもらって構いませんか? 次に会う機会がある事を望みながらの我侭ですが」
「直接のお礼? 有難く受け取らせてもらうよ? 」
エドワードがそう答えて微笑んだ。
アイリーは頷くとエドワードに会釈して彼の脇を通り、エンジンが掛けられたままになっている大型バイクへと近づいた。
少し考えてから膝をつき、目線をヘッドライトの高さに合わせる。
『事情あって隠しているのだろうと思い、声ではなく思考回線で失礼します。初めまして。そして助けてくれてありがとうございました、スタリオン特別捜査官』
アイリーの視界の中で5人の捜査官が一様に驚きの表情を浮かべた。リッカも大きく目をみはっている。




