12‐ 報復
「別に構わない。エレメンタリストが起こした殺人事件は国内法を越えて免罪となり損害賠償は第三資源管理局に請求されるよう国際条約で定められている」
エイミーが事も無げに返答した。
「もう一つ。協力は約束するが目の前の者どもは私の大切な虎を奪った者だ。報復はさせてもらう」
「どうぞ。ご勝手に」
「そりゃねえだろ? エイミー!」
クラリッサが怒声を放つ。エイミーの表情は微動だにしない。
「犯罪を犯したエレメンタリストを警察に協力させて情報を提供する様に指導する。私達の仕事はそこまでだ。エレメンタリストは全ての犯罪において免罪されている。司直の判断は不要。人間達の管轄争いに付き合う義理はない」
「こいつの報復行為だよ!新しい損害が発生するぞ? 」
エイミーが口元を薄くほころばせた。笑ったらしい。
「私達に銃を向けた者を私達が守る義理など微塵もない」
エイミーとカイマナイナは肩をすくめて見せた。
「感謝する」
そう言った青い衣の男の両側に再び炎の渦が巻き起こる。
男の顔に動揺が走った。
男の傍から生み出された炎は空中で円形の断面を見せたまま途絶えている。
カイマナイナの眼前で再び炎の壁が現れた。
その向こうから上機嫌な彼女の鼻歌が聞こえてくる。
「目の前の者どもに加勢されるつもりか? 」
炎の破城槌を封じられた形になった男がカイマナイナに問いかけた。
「別に。火炎のエレメント界産直の炎は美味しいから。貴方は自分よりも力ある者に行動の説明を求めるほど愚かなの?」
カイマナイナの上機嫌な声に青い衣の男が怯えた表情を見せた。
「仕事は済んだ。わたしは帰るぞ」
エイミーの不機嫌そうな声にカイマナイナが上機嫌に答える。
「せっかくなんだからエドワードチームが壊滅する様子も見物しましょうよ。彼らのメインファンクショニングは本部のサーバー内よ。ここで全滅しても器物損壊にしかならないわ」
エイミーが横眼でアイリーを見た。口元を薄くほころばせる。
「人命救助は私達の業務に入っていない。いいだろう。高額の損害が発生する様子というのを見てから帰るとしよう。始めろ」




