09‐ 青い衣の男
印象的なのは夜の灯りの下でも目を引く鮮やかなインディゴブルーのターバン。
ジェラバと呼ばれる砂漠の民に伝わる袖丈の長い民族衣装。
幾重にも巻かれたターバンは男の顔の殆どを隠している。目には透明なゴーグル。
巨大な虎が折り重なり死骸を晒している間を通り、圧倒的火力を見せつけたエドワード達に対して警戒する風もなく歩み寄ってくる。
「空気は悪いし男女の身なりには品がない。だがさすがは暴力の本場」
男の声は低いが遠くまで届く独特な声音を持っていた。
少々の訛りが混じるが文法も正確な英語だった。
クラリッサが銃口を男の方へと向ける。
「戦闘区域よ異邦人。そこで立ち止まり私達の質問に答えなさい」
どうぞ、と答えて男が立ち止まった。
「あなたもドンパチに参加するつもり?」
端的ながら最優先の質問事項だった。男が鷹揚にうなずく。
クラリッサが2丁の拳銃を発砲した。炸裂蜂と火蜘蛛が青い衣の男に襲い掛かる。
アイリーは目撃する。
銃弾は男の目前で消失し、男の背後の空間から公園の地面を深く穿った。
炸裂したマグネシウム弾は男の背後の空間に紅蓮の炎を咲かす。
男は実在しないホログラムか?と疑ったがそうではない。
弾丸も炸裂弾も男の眼前で消失して背後の空間に出現したのだ。
『クラリッサ。私が確保したテロリストも青い衣の民、トゥアレグ族だったわ。 このエレメンタリストの身元を探りたい。 男の顔にX線を照射したら撮影は可能?』
アンジェラからの問いかけにアイコンの中でクラリッサが首を横に振った。
『あたしの眼にそんな機能はついてないよ』
『そうよね。私の体はクアンティコにあるのよ。20分くらい稼いで』
『無茶ぶりー』
『もしかしたら彼が犯人かもしれない』
男がアイリー達がひと塊になっている方向へと一歩近づいた。
その両目に怒りが湧き上がってきている事をアイリーは見てとった。
「囚われている我が配下の目の前に転移したはずだが」
「ははは、ここ、ここ」
カイマナイナが笑いながら自分の傍らに置いてある革のトートバッグを指さした。
どう見ても人の頭くらいしか入らない大きさのバッグだ。
「で? あなたはエレメンタリストな訳よね? 先日この国であった殺人事件の重要参考人として警察に協力する事を要請します」
「女。男が許可する前に口を開くな」
カイマナイナが大きく口を開けて嘲る様に舌を出して首を左右に傾けた。
青い衣に覆われた男の全身から見間違い様もない怒気が噴き上がる。
男の両肩の上方、何もない空間に明るい光を放つ渦が現れた。
直径はおよそ1メートル。渦は瞬時に盛り上がりをみせ、太い縄をより合わせた様な螺旋を描いた炎となり巨大な破城槌の様に円柱となってカイマナイナを襲った。




