第九話 イークスの心
第九話 イークスの心
十二日
「ピチャ」
「ビチャ、ピッチャ」
「(ななんだ? なんか冷たいな)」
「ビチャ、ビビい、ジャーーーーー」
「うほ」
輝はむせた。目も開けずにただ口元に入ってくるものを味わっていた。
「(なんの味もしないけど、うまい、冷たくて、美味い!)」
輝は力を振り絞り、体を起こそうとした。
「(痛い、体が……でももう死ぬということを考えると……)」
目をゆっくりと開けていった。すると周りが少しずつ見えてきた。
「(あれ? ここって、大鷲の巣じゃねーか!)」
輝は飛び起きた。そして、上を見上げると、すぐに転び落ちた。
「ワァワーーー」
大鷲は大きな葉を嘴に挟み、そこから水を垂らしていたようであった。
輝はなにも理解していないが、実際は輝が洞窟を出たところに倒れているところを大鷲が見つけ、巣に持ち帰ったようだ。輝は再び周りを見渡した。すると、薬草らしい草が落ちていた。
「大鷲! ありがとな」
「ピィーッピィーーッ」
「(トク、理解できるか?)」
[私は鳥語はわからないので…]
輝はなんとか動くことができるが、怪我も、口の潤いも回復したのに対し、まだ空腹は続いていた。
「大鷲、食べるものあるか?」
「ピッピィーッ」
大鷲は空に飛んでゆき、少しすると葉を加えて帰ってきた。そして葉を輝に押し出した。その葉の上にはありとあらゆる見たこともない虫がのっていた。
「(きも、こんなの……)」
輝は虫の山に手を突っ込み、虫を口に放り込んだ。
「(うっぇ)」
だが、虫は栄養であり、すべて食べ終わる頃には満腹になっていた。
「(味はさておき)食った食った! 大鷲、ありがとな」
「ピィーッピィーーッ」
その後、輝は熊に負わされた怪我が完治するまで、大鷲の巣に住むことにした。大鷲はなにも言わず、毎日虫と水、薬草をテルの元に運び、怪我もだんだんと回復していった。
その間、輝は狼と熊の攻略法を考えていた。
「(トク、今までのデータを整理してくれ)」
[そうですね、まずは狼から
狼: 素早く一撃一撃はそれほど痛くない。しかし足や腕などを狙ってくるため防御は困難かつ累積していく痛みに耐えなければならない。人を食す可能性はある
そして熊は
熊: 力強く、多少の熱では熊に怪我を負わせることも難しい。洞窟に住んでいる。人は食さないようだ
以上です]
「(あんま、わかんないな)」
しかし輝はだらだらとありもしない作戦だけを考えていたわけではない。輝は大鷲の話していることを理解できるようになったのだ。ちなみに、すでに人間つまり輝の話す言葉は理解していたようであった。
大鷲と呼んでいたが、実際はイークスという鳥のメスのようだ。また地下で色がよく判別できず、何もかも茶色または黒色に見えてはいるが、実際は鮮やか色のようだと輝は聞いた。そして、彼女の名前はバーナスのようである。
「バーナス、おはよう」
「オハヨウ、テル」
「俺そろそろ出ようと思っているんだけどさ」
「イカナイデヨ」
「いや、あの狼と熊はやらないと! また戻ってくるからさ、食事の準備とかしといてよ」
「ジャア、セメテコレダケハ……」
確かにバーナスの手伝いがあれば出ることはできる。しかし照はそれでは満足しなかった。バーナスは輝に薬草を小さく切ったものを渡した。
そして照は実質三週目の円形渓谷探索に身を乗り出した。
十七日
輝はまず狼を倒すことにした。熊は居所が確かであるのに対して、狼は神出鬼没だからだ。
「(狼はどこだ!)」
[輝、落ち着かなければ体温が上がってしまいますよ]
「(そっちの方がいいんだけどな……)」
狼を探すこと半日、輝は渓谷の途中で、熊の腹穴を確認した。
「(ここがあいつの! 待ってろよ)」
すると、輝は少し歩いたところで狼を発見した。狼は現在、輝が最初に仕留めた二足歩行豚を狙っているようだ。
豚うまく狼の攻撃を避け、石を拾っては狼に投げつけている。輝は大岩に隠れて様子を伺った。
そんな時、狼が豚の足に噛み付いた。豚は油断していたのか逃げきれず、右足を失った。
「ブッッブンッブブうう」
そのまま豚はうまく動くことができず、狼に食べられてしまった。
「(やっぱ狼は強いな、あの豚を……)」
そこに輝は勇気を出して狼の前に出た。
「狼! かかてこい」
狼は照には目も向けずにさろうとした。空腹ではないためだろう。
「おい、お前もしかして、チキンか」
その瞬間輝に狼が飛びついた。輝は狼が挑発に乗りやすいことを少なからず悟っていたため、うまく避け、狼を右腕で殴った。
「よし」
ほとんだ皆無の攻撃だが照にとっては大きな一歩であった。狼は足をまず狙ってくることが多いと見た輝は足を守っていく作戦に出た。
そして次の攻撃、てるは足を引きまた殴ろうとした瞬間、狼は岩を蹴る飛ばし、方向転換をすると、輝の右腕に噛み付いた。
「アァーー」
血がドロドロと輝の右腕から垂れる。輝の足にはあっという間に血だまりができた。
輝は怯え恐怖を感じるとともに、怒り狂った。
「(良くも! 良くも!)クッソったれー」
[体温が百度に]
輝の身のこなしはいつも通り、素早く、軽やかだ。素早い狼でさえ、百度に達した輝を追うことはできなかった。輝は狼の背後を取った。狼は急いで逃げたが、輝の左腕が狼の横腹を殴った。横腹は赤く、皮膚が焼け、赤くなった。
狼はそれでも必死に逃げた。しかし、照には問題でもなかった。
「おっそ!」
てるは狼の目の前にあらわれ、いつもお得意、ボーズキンのパクリであるボディダイブ(ハグに近い)を狼に食らわせた。
「チェックメイト」
「ガァーー……」
狼はいとも簡単に焼けた。
[体温が戻りました]
輝はズボンのポケットに入っている薬草を取り出した。そして右腕の傷口に当てた。
「いた……アァー痛みが引いてく……(ほんとにこの薬草は)」
輝は傷の痛みが完全に治るまで、狼肉を食べながら、約八時間時間を潰していた。
「(あんま、狼美味しくないな、犬もこんなもんなのか)」
[そんなこと言われても、私には味は.…..]
「(お前に話してねーよ、それにしても意外と狼も楽勝だったな)」
[私のおかげですね]
「(お前何もしてねーじゃねーか)」
[何をおっしゃっているのですか? 体温! 私のおかげですよね]
「勝手に言っとけ」
[では私が仕留めたということでお願いしますね]
「っち」
輝は舌打ちをした。そしてある程度動かすことができるようになった右腕のこりをほぐしながら、熊のいる洞窟に向かった。




