真夜中
今、どっかの洞窟にいる。
何か凄い奴と一緒に。
「で、どうやってここから出るの?」
「さぁ・・・。」
「さぁ、って・・・。」
「ルアザス持っていけるか?」
「は?」
持ってく?・・・ってどういうことだ。
「あー、だから、そのまま連れていけるか?」
「無理。」
オレは即答した。オレに、オレよりでかい奴が運べるほどの腕力なんて無い。・・・うん、背が低いなんて言い訳はしない、こいつの背が高すぎるだけだ、それだけだ。
「そうか・・・。」
すると、奴はルアザスをひょいと片手で持ち上げた。
「えっ・・・。」
「行くか。」
何だこいつすっごい怪力か!?
・・・何だかよく分からないけど、とりあえずついて行くしかないからついてった。
暫くして。
「このあたりは足元に気を付けろ。転ぶぞ。」
「あぁ・・・。」
何で真っ暗な中そんなことが分かるんだ。さっきまでいた部屋にあった松明は、こいつが暴れたせいで消えたから持ってきてない。まぁ、部屋っていっても狭かったから、あんなところでドタバタしたら松明なんか消えるか。おかげで、こいつの顔すら見られていない。あんなに明るかったのに、ライアが来たら薄暗くなって、それから意識がはっきりしたからあれが本当にライアだったのかも分からない。
「で、どこ行くんだ。」
「出口。」
「どこか知ってんんのか?」
「知らない。」
そりゃあないだろ。出口知らないとか。
「・・・出た。」
「え?」
・・・。本当に外に出た。満月がぼんやり光っている。
「ここどこ?」
「さぁな。」
ほんの少しだけど明るいところに出てきたし、オレはこの男をざっと見てみた。
ルアザスより高い身長。つんつんしてるけど柔らかそうな短い黒髪。黒いロングコート。黒ずくめだなおい・・・。・・・。ルアザスより高い身長・・・。ルアザスより高い・・・。ルアザスより・・・。何でオレはこんなにも背が低いんだ。
じっと見ているのに気づいたのか、男が振り返った。
「どうした?」
「いや・・・ぁ?」
オレは初めてこいつの顔を見た。
「お前・・・。」
「あ・・・。」
男は慌てて顔の左側を隠した。けどオレは見てしまった。
「その目・・・。」
男の左眼は閉じられていて、瞼のうえには上下に細長い大きな傷があった。
「聞くな。」
「・・・悪い。」
・・・つまり、訳ありってことか。
「で・・・、とりあえず寝たいんだけど。部屋で。」
「ここは裏山の崖の上だな。寮なら崖を降りてしばらく行ったところだ。」
「どうやって降りんの?」
「飛び降りる。」
「やだ。無理。死ぬ。」
これは遠回りになってでも森の中歩くしかないな。
「冗談に決まっているだろ。俺が送ってやる。」
・・・どうやって送ってくれるんだか。送るってどういう意味の送るなんだ?
「その前に、ルアザスに起きてもらわないとな。流石に2人抱えるのはきつい。」
ますますどうするんだか。
「ルアザス、おい、起き・・・。」
「?」
男がピクッと何かに反応して、森の方を振り返った。
「来たか・・・。」
「何が?」
「寮に戻ってレイラに伝えろ。誰も外に出すなと。」
「はぁ・・・。で、どうやって戻るんだよ。」
「それと、ルアザスは起こすな。絶対に。お前も外を見てみようとするな。」
すごい剣幕だ。ただ頷くことしかできない。
「ルアザスを離すな。」
「う、うん・・・。」
男はオレたちに手をかざした。
「お前、名前は?」
「名前・・・?」
え、まさかの名無しって奴か?男は数秒間首をかしげた後、言った。
「俺の名は・・・ゼロ。レイラにはそれで伝わるだろう。」
それで伝わるだろうって何だよ。暗号か何かかよ。
「あー、よく分からないけど、レイラに言えばいいんだな?」
「ああ。」
次の瞬間、目の前が真っ黒になった。
「シュルースレイラー、おーい、シュー、こら起きろシュー!」
「うわっ!?」
気がつくと、目の前にレイラがいた。レイラはこの・・・訓練所・・・?学園・・・?の、長の姉妹の片割れだ。特徴は、活発、ドジ、お節介。本人の前で言ったら拳骨5発食らったことがある。
「はぁ・・・?」
「はぁ・・・?、じゃないわ。いきなり現たと思ったら寝てるじゃない。何したら寝ながらワープなんかするのよ。・・・ていうかあんたワープ出来たっけ?」
・・・どうやら相当御怒りのようで・・・。寝てたんじゃなくて気絶してたの間違いだって。
「ワープ?・・・って、あ、・・・えと、ゼロ・・・?が、外に誰も出すなと・・・。」
「ゼロが来てるの?」
・・・顔が近いぞレイラ先生。
「来てると言うよりは、ずっと居たって言った方が正しいと思う・・・。」
「・・・どういうこと、それ。」
「本人に聞いてくれ。」
今何時だ・・・?眠すぎて欠伸連発記録更新中。部屋に戻る前にぶっ倒れそうだ。朝になって、誰かが廊下に倒れてるオレを発見、学園中が行き倒れ事件でざわざわ。・・・うん、嫌だ。
「ふゎあ・・・眠ぃ・・・。」
「ちゃんと自分の部屋に戻ってから寝てよ?」
「んにゃ・・・。」
無理だ・・・自力で戻れそうにない・・・。
「こら寝るな!」
オレはルアザスを枕に寝ようとした。そのとき。
ズガアアアアアァァン
「ふわっ!?」
「きゃぁ!?」
・・・目が覚めた、完全に目が覚めた。何だ今のは。
「キェアアアアアアァァァ」
わあああぁぁぁぁ、耳が耳が。窓ガラスが今にも割れそうなほどにビリビリ振動している。
「レイラ、何が起こってるんだ?」
「学園の障壁に何かがぶつかったみたい。」
対襲撃用不可視障壁。この学園の敷地内全てを覆っている・・・らしい。
「飛龍ね・・・。結構いるなぁ・・・。」
「今外にいるのはゼロだけ・・・。大丈夫なのか?」
「うーん、どうだろ。平気じゃない?」
「・・・・・・・・・。」
本当に大丈夫なんだろうか。
「姉さん起きて、襲撃よ!」
レイラが部屋の奥の扉に向かって叫んだ。・・・・・・。
「起きてこないけど。起きる気配全くないけど。」
「むぅ・・・。」
外見るなって言われたけど、正直言って物凄く見たい。
「ちょっと起こしてくるから悪戯しないでよ?」
「はーい。」
・・・・。やっぱり眠い・・・。
・・・・・ということで、オレは床で寝ることにした。ごめんレイラ。
オレは寝ていたいんだよっbyシュルースレイラー