魔族の姫君
「さて・・・。」
夜だから、音や光を出すと遠くまで伝わってしまう。訓練所全体を起こしたくはない。
敵が見えてきた。
「黒翼竜・・・。」
「ギェエエエエエエエエッ」
真っ黒い、ドラゴンより小さいのが数十匹飛んでくる。
「ギルルルルルル」
俺はフワリ、と空中に浮かび上がった。
「ギャアアアアアアアアアォ!」
ようやくこちらを認識したのか、真っ直ぐ飛んでいた群れが向きを変え、急降下してくる。
「騒がしい・・・・。」
その倍の速さで群れに突っ込む。
「失せろ、raze。」
一瞬で群れの半数を消し去る。
「ギェエエエエッ」
全方位から咆哮が聞こえてくる。どうやらこの学園は黒翼竜の群れに囲まれているようだ。こんな時にレイラは何をしているんだか。
倒しても倒しても増え続ける黒翼竜を片っ端から片付けること数分。学園の反対側からズガアアァァンと何かがぶつかった音がした。
「ちっ・・・。」
流石に1人ではこいつら全てに対応しきれない。レイラはまだ出てこないのか。”誰も外に出すな”とは伝えるように言ったが、レイラに”出てくるな”とは言ってない。まぁ、あいつがそこまで考えられるわけが無いか。
・・・にしても数が多すぎる。誰が送ってきたのかは知らないが、こんな大群を、障壁に阻まれると知りながら突撃させるとは・・・。馬鹿なのか、それとも何かの囮なのか・・・。
何時からか知らないが雨が降っているし、これくらいならやってもいいだろう。
「神龍の怒り 閃光と為りて 天地万物を打ち砕く ライトニングディストラクション!」
雨雲が一瞬光った後、数十発の雷が轟音とともに辺り一面に降り注ぎ、断末魔の悲鳴をあげることすら許さずに黒翼竜を全て消し去った。
・・・少しうるさ過ぎたか。これでも出てこないのなら、後で説教かましてやる。
さて、お次は何が来るのやら。
「ゎぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
「・・・は?」
突然、テレポートらしき魔法陣が現れ、そこから何かが高速で飛び出してきて、俺に向かってすっ飛んで来た。勿論避けた。普通の人間なら見えなかっただろうが、俺にはそいつが、シュルースレイラーにライアと呼ばれていたさっきの女だと分かった。何をしたらテレポートであんなことになるんだ。
女が戻って来るまで少しかかりそうだ。レイラはまだ来ない。あいつめ、全部俺に丸投げする気か。
「catena≪鎖≫!」
「・・・っと。」
戻って来るの早いな。
「zwang≪拘束≫!」
「weigerung≪拒絶≫」
避け様の無い攻撃は同じ種類の魔法で撥ね返す。
「うーーー。あれもこれも涼しい顔して回避しちゃってぇー・・・・。」
「同じ攻撃が二度も三度も通ると思うな。」
「ちっ・・・。」
この女は何を狙ってここに来たのか・・・。取りあえず聞き出すか。
「で、何しに来た、魔族の姫君。」
「なっ・・・!?何でそれを・・・。」
「答えろ、魔境姫アリス。」
「なぜ人間如きがあたしの名を・・・。」
アリスは俺をギッと睨んだ。
「答えろ。」
「くぅ・・・。」
ルアザスとシュルースレイラーがどうのこうのと言っていたのに加え、俺を殺すと宣言したのだから、何か目的があってここに来たはずだ。それに、魔王の娘が1人で人間の街を観光などあり得ない。
「答えなければ消し去る。」
「あーもう、言えばいいんでしょ言えば!――『神々は幾つもの派に分かれ、争いを繰り返すようになった。今回、闇の神、死神、破壊神の3人が暗黒同盟を結び、神聖同盟に戦いを仕掛けようとしている。類稀な彼ら打倒の機会だ。我ら魔族、最強の魔剣士を手に入れ、この戦いに乗じて神族を滅ぼそうぞ。』・・・父の言葉よ。」
要するに、神族と戦争するから戦争兵器になれということか。誰がなるかこの戯け族が。
「で、その魔剣士が俺だと。」
「そういうこと。良く分かってるじゃない、人間のくせに。」
随分と見下した言い方をするな・・・。
「理解してくれたんなら話は早いわ。魔都まで一緒に来て頂戴。」
「それが人にものを頼む態度か?」
「何で誇り高き魔族が人間如きに頭下げる必要があるわけ?」
・・・潰すか。
「魔族如きが自らを誇り高き種族と言うか。」
「馬鹿にしてんの?人間。」
「貴様らの見下したような頼みなど聞くか戯け族が。」
怒りが頂点をブチ抜けそうだ。
「魔族は常に人族の上に立っている。魔族が人族を使役するのは当たり前よ。」
「魔族は人族に何度も滅ぼされかけたが。」
「ッ・・・。その傲慢な態度を叩き直してあげようじゃないの。魔族と人族の間には決して埋められない甚大なる差があることを教えてあげるわ。」
またもやひどく上から目線で・・・。
「戯言は聞き飽きた。言いたいことはそれだけか。」
「なッ・・・何ですって・・・。」
「滅魔氷撃・双刃!」
容赦はしない。
「そ、その魔法は・・・。」
「去ね!」
氷の刃をアリスめがけて放つ。
「グギャァッ」
掠っただけか・・・本気で投げなかったから当たり前だが。
「くうぅ・・・覚えてろ・・・。」
痛くも痒くもない位の殺気を放ちながら、負け犬のような言葉を残してアリスはテレポートで逃げ帰っていった。
ルアザス:ライアって魔族のお姫様だったのか( ゜Д゜)
ゼロ:さぁ、どうだろうな。
シュルースレイラー:(ゼロ無双・・・。)




