第8話 襲撃
その後もパーティは続く。
しかし、段々とミルト様への悪口が多くなってきたような気がする。
なんだか居心地が悪い。私も何度もあの人の妻になっていいの?と訊かれた。
あの男の策略か、それともただ親切心から忠告してくれているのだろうか。
私は、その言葉に愛想笑いで返しているが、正直なところ腹は立つ。
何しろ、私の好きな人が馬鹿にされているのだ。
一旦ミルト様と離れた私は、あまりよくここでの礼儀などは知らない。
ただ、周りに合わせてやっていく。
そんな時、ある女の姿が見えた。
メルクの婚約者、レファだ。
あの人はメルクが本当に愛した女なのか、私みたいにポイ捨てされる運命なのか。
見ただけではよく分からない。
しかしかなりの美少女だ。
髪もしっかりと説かれたパンチパーマーみたいな形で、髪の毛がくるんってなっている。
顔も小動物系で、少し童顔だ。
私はどちらかと言えば、実年齢よりも老けて見えると言われることが多かった。まだ二十やそこらなのに、三十台に間違われることもある。
そんな私とは違って実年齢よりも下見見られるんだろうな、と羨ましく思える。
私と彼女の顔のタイプはほぼ真逆と言ってもいい。
そこからはメルクが彼女をどう扱っているのかは判断できない。
「あら」
こちらを向いてくる。
そして、うきうきとこちらに近づいてくる。
「どうしたのかしら」
これはどう見ればいい。そもそも私の存在をどれくらいの濃度で知っているのだろうか。
まずどう答えたらいいのだろうか。
私は息を軽くすう。
そして、
「単刀直入に問います。私が奴隷になった理由を知ってますか?」
その言葉に、彼女は「えっと」と言葉を詰まらせる。
そして、
「貴方が借金まみれになって奴隷と化したからじゃなかったんですの?」
やっぱりそう伝えられているのね。
いや、もしかしたらこの発言自体がブラフの可能性もあるが。
「私は性奴隷にされるために借金を背負わされました」
その事実を告げる。すると、彼女は噴き出したように「ふはははは」と君の悪い笑みをこぼす。
大爆笑をしているみたいだ。
「そんなわけないじゃないですか」
「そんなわけがあるのよ」
私がそう言うと、また気味悪い笑みをこぼし。
「そんな冗談もほどほどになさって」
そう言って奥へと下がって行った。
彼女は本当に何も知らないのだろうか。
まあいい。それは後々にわかる事だ。
私はそのままその場を後にする。
その後は暫く続き、終わりを迎えた。
「色々と大変な一日でしたね」
帰り道の馬車の中で、私はミルト様にそう告げた。
今日は本当に大変な一日だった。
「そうだな。俺としてはお前が心配ではあるが」
「そうですね」
彼の計略を失敗に終わらされたと判明した今、次はどんな手を使ってくるかもわからない。
何が来ても対抗するつもりではいるけども、それもどれくらい確実的なのかは分からない。
今は家に帰るまで、ミルト様から離れないようにしなければね。
その帰り道ミルト様から離れないように、馬車に乗った。
そのおかげか、襲われることはなかった。
「ミルト様、どう思ってるんですか?」
私はふと訊く。
「パーティ会場でもミルト様を嫌悪の目で見ている人が何人もいましたし」
「もう慣れた」
「私はやっぱり許せないです。ミルト様はなんにもしてないんですから」
「そうは言えないんだよ。過去には俺と同じような目の色の人が世界を揺るがす大事件を起こしたことがあるからな」
「それってどういう?」
「知らないか。残虐のギーサスの伝説を」
「ギーサス」
そう言えば聞いたことがある。
邪悪なギーサスという者が、世界に反逆し、代軍勢を率い大多数の人間を虐殺したという噂だ。
それは伝説だが、彼の瞳と髪の毛の色は黒かったそうだ。
「それから来てるのね」
「ああ、俺の忌み子というのはな」
その瞬間、怒濤のような音が聞こえた。
私は外を見る。するとそこには盗賊のような人たちがいた。
「ははは-、、高そうな馬車だ。これを襲えば金が手に入るぞー」
「くそ、護衛をもう少しつけておくべきだったな」
そう、ミルト様が言う。
「仕方ない。どこまで戦えるかは分からんが」
そう言ってミルト様は剣を握り、外へと飛び出す。
私は無力だ。この状況で何もできない。
私にも剣が扱えればと思うけど、私のふにゃふにゃな手じゃ剣を握れない。
刺せない。
見守るしかない。
外での戦いはミルト様が優勢なようだ。
ミルト様は剣の心得もあるみたいで、凄まじい力で敵兵たちを切り刻んでいく。
流石はミルト様だ。
しかし、気になるのは、なぜこの馬車を襲ってきたかという事。
ミルト様の事を知ってるならまず襲わないと思うのだけど。
その瞬間気づいたことがある。
私の背後に人が忍び寄っている。
私は私は思わず振り向く。
「ふふふ、己の運命を恨むんだな」
私に抵抗できるはずもなく、私は気絶させられた。
★★★★★
俺は後ろの物音を聞き、そちらを振り向く。そこには馬車から飛び出す人影があった。
「メア」
俺は叫ぶ。
メアが連れ去られそうになっているのだ。
しまった狙いはメアか。
俺はメアを助けに戻ろうとする。しかし、そこにはまた新たな手勢がいた。
「ここからは通さん」
俺は必死にその兵士たちに立ち向かう。しかし、俺が全滅させたときにはもう既にメアの姿は消えていた。
俺は自身の無力さに膝をつくしかなかった。