↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/163

第66話 秘宝との激突

第66話を公開しました。

ついに王女であるフレイヤと与人の戦いが始まるのであった。

「さぁ! いよいよこの時が来ました! 本戦よりも楽しみと言えるエキシビションの時間です!」


 決勝戦から少しの時間を置いたのち大会の優勝者であるスローンこと与人と、この『フォルテクス』の王女であるフレイヤとの戦いが執り行われようとしていた。

 もしかすれば新たな王が誕生するかも知れない。

 そのような期待感からか、会場は本戦よりも熱気に包まれている。

 闘技場に入りきれなかった者のために急遽魔法で戦いの様子を映し出すのが決まったほどである。

 だが、その一方で与人の心は冷めきっていた。


(に、逃げ場がない)


 優勝した後ですぐに鎧だけ持って逃げる事も考えていたが、逃げ出す暇すら与えられずにあっという間にエキシビションになってしまった。

 こうなってしまえば戦う他に無いのであるが、既に優勝した与人のモチベーションは上がらなかった。

 そうこうしている間にも進行していき、ついに王女であるフレイヤの登場となった。


「ついにこの方に登場してもらいましょう! 我らが『フォルテクス』の秘宝! フレイヤ・フォルテクス様に!」


 その紹介と共に現れたその姿に、闘技場に集まった人々はこれまでで一番の歓声を上げた。

 派手になり過ぎないとはいえ、金などで装飾された鎧が目に入らないほどその美貌は輝いていた。

 また一つ一つの所作が美しく、歩いているだけでも人々を魅了してしまいそうであった。


(……確かに綺麗だな)


 その美しさは数多の美少女や美女に囲まれている与人も納得するほどであった。

 だがその一方で、今まで戦った大会出場者よりも強い事を気配だけで察していた。


(秒で終わるかも)


 もし勝てたらという予定を立てること自体が無意味だったかも知れないと、背中で冷や汗を掻きながら与人は思う。

 すると舞台に上がったフレイヤはおもむろに与人に近づいていく。


「初めまして挑戦者殿。ワタクシは知っての通りこの戦士の国たる『フォルテクス』の王女、フレイヤ・フォルテクスですわ」


 そう言ってフレイヤは握手のために手を差し出す。

 それだけで会場は大盛り上がりとなり地響きが起きる程であった。

 受けない理由も無いので与人も手を出し握手をする。

 するとフレイヤは握手をしたままそっと与人の耳元に口を寄せて呟く。


「期待していますわね。……異世界から来た勇者の実力を」

「!! ど、どうしてそれを」


 突如指摘された真実に辛うじて大声を出すのは我慢した与人であったが、つい認めるような返しをしてしまうのであった。


「フフ。初々しい反応ですわね。……全ては戦いが終わってからにしましょう?」

「いや! ちょっ!」


 意味ありげな返しをすると、フレイヤは与人から離れて距離を取っていく。

 今にも問いただしたい与人であったが、フレイヤの空気に押されて動く事すら出来なかった。


「さぁ !舞台は整いました! 果たしてフレイヤ様がスローン選手に何と言ったかは気になるところですが、間もなく試合開始です!」


 どうやら会話の内容は人々の声もあり、進行役にも聞こえなかったようであった。

 一先ず安心する与人ではあったが、それでも心の内は疑問で一杯であった。


(ど、どうしよう。三人に相談……は無理だし。逃げ出す事も出来ないし。ああ! 出来る事が少なすぎる!!)


 心の中で慌てながらもフレイヤがロングソードを引き抜くと、無意識に与人も剣を構える。

 と同時に与人の中の疑問が吹き飛ぶほどの闘志をフレイヤからぶつけられる。


(あ、これ集中しないと不味い)


 アイナとの特訓や今までの経験からその事実を察した与人は全ての迷いを一先ず置いておき目の前の王女様の挙動に集中する。

 負けるにしても多少は恰好を付けたい気持ちもあったが、何よりもそうしなければ大けがでは済まない気がしたのだ。


「両者剣を構えてやる気は十分といったところか!? さあ!! 『フォルテクス』の運命を変えるかも知れない戦いのゴングが、今鳴らされる!!」


 戦いの開始を知らせるゴングの音が会場中に響き渡る。

 だが与人がその音を聞き終える前に、フレイヤは動いた。

 それなりの距離を取っていた二人の距離が、まるで無かったかのように一気に詰められる。

 そして空気を引き裂くように繰り出した突きは当然与人に向けられていた。


「!!」


 その全てを与人は察せられた訳では無い。

 だからその突きを防ぐ事が出来たのはアイナとの特訓もあったが、今まで様々な戦いを見て来た経験からの直感が大きかった。


 ガキン!!


 そんな金属同士がぶつかり合う音が闘技場内に鳴り響く。

 状況を全く把握できていない観客を置き去りにし、事態は更に動いていく。


「よく防ぎましたわ」


 実際にフレイヤがそう言ったかは定かでは無いが、少なくと与人は彼女の口が動くのを確認した。

 フレイヤはまるで舞うように剣を操りながら、あらゆる方向から斬撃を繰り出していく。

 それを多少なりとも与人が防ぐ事が出来たのは最早奇跡の類いであった。

 今までの経験と危機察知能力が辛うじて体を動かしていた。


(ヤバい! ヤバい!! ヤバい!!!)


 だが与人はその事実に気が付かないほどに追い詰められていた。

 強烈な攻撃を何回も受けている腕は既に感覚がマヒしており、最早力が入っているかどうかすら分からない。

 そして何度か防ぎきれなかった剣が与人の体に傷を作っていく事によって、そこから発せられる痛みとも戦っていた。

 与人にとっては永遠とも思えるような剣撃であったが、それも終わりを迎えようとしていた。


「ふっ!!」


 掛け声と共にフレイヤは大ぶりな一撃を与人に向けて放った。

 だが今までの攻撃によって疲弊していた腕ではカウンターで迎え撃つ事も出来ず、何とか防ぐので精一杯であった。

 それでも受けた衝撃で後ろに下がってしまう与人であったが、何とか剣だけは握ったままであった。

 そしてようやく、事態を把握した観客から歓声が上がる。


「す、凄い! 凄すぎる! これがフォルテクスの秘宝の強さ! スローン選手を圧倒している!」


 進行役の言葉もあり、会場はさらにヒートアップしていく。

 その一方で当の本人であるフレイヤは涼しい顔で与人に話しかける。


「流石、と言っておきますわ。初撃で決めるつもりでしたのに」

「ハァ……ハァ……。あいにく、そんなに簡単に無様な姿をさらす趣味は無いんでね」


 思わずフレイヤに言い返す与人であったが、その息も絶え絶えな姿からは余裕は欠片も見当たらなかった。

 だがフレイヤはその返答に満足したのか、ニヤッと笑っている。


「そうですか。では、新たな趣味に目覚めてくださいませ? これからもっと過激になっていきますわよ」

「……マジで?」


 相変わらず笑みを浮かべている顔から本気である事を察し、与人は恐怖を覚えるのであった。

今回はここまでとなります。

果たして与人は勝つ事ができるのか!?

次回をお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。