第51話 発したどんな言葉にも責任は伴う
第51話を公開しました。
与人たちは最後の試練、ツイスターゲームに挑む。
「つ、ついすたーげーむ?」
「うん。ツイスターゲーム」
聞きなれない言葉にアイナが聞き直すのを与人は頷きながらも、その目は正面のツイスターゲーム床を睨みつけていた。
「ゲーム、と名の付くと言う事は遊びの一種ですか?」
「まあ皆で楽しむ、という意味ではあってるよ」
「で、そのゲームはどうやって攻略するんだ?」
リントの質問に与人は指しつつ説明する。
「ルール事態は簡単だ。指定された色の円を手か足で触ればいい」
「……それだけですか?」
与人の簡単な説明にアイナが不思議そうにしている。
「まあ基本はそうだね。指定の順番によっては変な恰好になったりするからそれを楽しむモノだよ」
「ですが、それだけでしたら攻略は簡単そうですね」
ユニがそう言うのに対して与人の顔は暗くなる。
「どうした主?」
「いや、先に説明を見てたんだけどさ……」
与人の視線の先には確かにルールと書かれた簡易な立て札が立てられていた。
「このツイスターゲーム。どうやら俺を含めた四人でやる、みたいだ」
「それがどうかしました?」
明らかに与人の言いたい事が分かっていない様子のユニが不思議そうに質問する。
アイナも同意見のようで与人が説明するのを待っている。
「あ~」
だがどうやらリントにはピンと来たようで、与人の腕を掴んで端の方に移動する。
「で、どうする気だ? 主」
「……どうするもこうするもここまで来たらやるしか無いだろ」
近づこうとするアイナを牽制しつつリントは与人に耳打ちする。
先ほどの件もあり動揺する与人であるが、既にやる覚悟は決めている。
「だったらオドオドしたり暗くなるな。最初に言っていた言葉は嘘だったのか?」
「言葉って……」
「「できればハーレムも」だったか? そんな心持ちでよく言えたものだ」
「じ、実際そういった状況になるのとは違うだろ!」
「やれやれ」
リントはため息を分かりやすく吐くと、改めて与人に耳打ちする。
「主。主がどういう心持ちであろうと進む限り女は増えるだろう。ハーレム云々《うんぬん》は置いておいても、ある程度の女馴れはしろ。いいな」
「……分かった」
「よし、じゃあさっさとやって終わらせるぞ」
そう言うとリントは与人から離れ、つかつかと中央まで移動する。
それに追いかけるようにアイナとユニも中央へと集まり、残すは与人一人となった。
与人は気合を入れるために頬を二回ほど叩く。
「……よし!」
頬にジーンと残る痛みを感じつつ与人は中央へと向かうのであった。
「こ、コレは……。思っていたよりキツイ、な」
ツイスターゲーム開始から十数分、複雑な体勢となったリントが珍しく苦悶の声を上げる。
「も、文句言わないでどいてリント! 足が届かない……っと届いた!」
リントに文句を言いながらアイナは指定された色に足を置く事に成功する。
「い、何時まで続くんでしょうか? 体がしびれて……!?」
同じく無理な姿勢になりつつあるユニが苦しそうな声を出す。
既に幾つもの指令をクリアしているが、終わる様子は一向にこない。
「主様。大丈夫ですか? ……主様?」
心配になったアイナが与人に確認の声を掛けるが返事は無い。
今のアイナの位置では与人の様子が見えず不安になるが、代わりにリントが答える。
「主は問題ない。少し苦しそうだがな。」
「では返事が無いのは?」
「主にも色々あるのだ、色々な」
「あ、はは……」
リントの説明に何故かユニが乾いた笑いを出す。
ここで現在の与人の状況を簡潔に分かりやすく説明しておこう。
右腕はユニの胸の上を通り、指定された円を触っている。
左足はリントの尻の下を通り動けない状態。
そして頭は少し動けばアイナのスカートの中に突っ込む寸前であった。
ようするに精神を平常に落ち着かせるのに精一杯な与人は答える余裕も無かったのである。
「と、とにかく続きをしましょう!? 出来るだけ速く素早く!」
流石にここまで来れば与人たちが言いたかった事も理解し、顔を真っ赤にしつつも早く終わらせようとする。
だがアイナは一人気づかず何故ユニが急いでいるのか不思議そうにしている。
その一方でリントはこういった状況も予想していたのか、苦しそうにしてはいるがどこか余裕が感じられた。
《次が最終です。》
「皆! 次が最後だ!」
「お、おう。主、急に元気を取り戻したな」
次が最終だと知り、最後の元気を振り絞って声を出す与人。
そして次の指定の色が表示される。
《金》
「「「「金!?」」」」
今まで見た事も無い色を表示され四人に動揺が現れる。
皆が可能な限り首を使い周りを確認すると。
「あった!!」
アイナの正面に一個飛び出すような形で金色の円が現れたのであった。
「っ! 聖剣! 触れられるか!」
「む、無理そう! 両手は塞がってて足では届きそうも……」
「私とリントさんだと位置が分かりません!」
三人とも触るのが無理な状況に絶望感が漂うがリントが声を張り上げる。
「主! 左手が空いてるだろ! 主がやれ!」
「はぁ!? で、でもこの状況はちょっと……」
先ほども言った通り、少し動いただけでアイナのスカートに突っ込んでしまう与人。
与人が金の円に触ろうと思えば、思いきっり手を突っ込まなければいけない。
戸惑う与人にリントの厳しい声が飛ぶ。
「さっき言った言葉を忘れたか!? そのぐらいの覚悟は決めろ!!」
「与人さん! 今は心を無にして頑張ってください!」
状況を察しているはずのユニからも激が飛び、与人の覚悟が決まっていく。
「主様! よく状況は分かりませんがよろしくお願いします!」
そして唯一状況が分かっていないアイナからも応援されついに与人の覚悟が決まる。
「あーーもう! 後で文句言っても聞かないからなアイナ!!」
「? それはどういう……ヒャァ!?」
流石にスカートの中に頭を突っ込まれ状況を理解したアイナであったが時すでに遅し。
与人は金の円を触るため全力で左腕を伸ばす。
すると与人の頭にアイナの下半身が全力で触れるが、心を無にした与人は気にする様子もなく手を伸ばし続けて、そして。
「届いた!!」
《クリアしました》
与人の言葉と同時に試練をクリアした事が知らされ、リントたちはすぐに立ち上がる。
「こ、腰が痛いです」
「しばらく痛むなこれは。だが主、度量を見せたな」
「……これが度量に繋がるのか疑問ではあるけどね」
それぞれ立ち上がるがアイナだけは一向に立ち上がろうとしない。
「……アイナさん?」
「どうした聖剣?」
二人がアイナの正面に回ると何故か二人とも苦笑いしている。
「どうしたんだ?」
「いえ、アイナさん。どうやら放心しているようで」
「え、大丈夫なのか。それ?」
「まあほっておけばその内戻って来るだろ。ああ主は正面に回るなよ、顔に引くからな」
「ま、まあ乙女がしてはいけない顔ではありますね」
(どんな顔をしてるんだ一体)
逆に気になる与人であったが正面の扉が開いた事で意識がそっちに行く。
「やっと制覇か。……長かった」
「だな。聖剣は置いておいてさっさと……ん?」
リントの言葉は突如動き出した右側の壁によって止められた。
敵を警戒しリントは与人と現在戦力外のアイナを庇える位置に陣取る。
ユニも警戒感を露わにしていると、その右側の壁から出て来たのは。
「驚愕。マスター、皆さん。何故ここに?」
別行動をしていたはずのセラであった。
今回はここまでとなります。
何故セラが居るのか?
その謎は次回にて。