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第21話 与人の特訓と老人

21話を公開です。

パラケスに辿り着いた一向は与人の修行をする事に。

果たして彼の才能とは……。

「は~。賑わってるな」

「愚問。魔法大国『ソーサラス』で二番目に大きい都市ですので賑わっていない方が問題かと」


 与人のなりげない一言に大真面目に返すセラ。

 その返事に苦笑いしながらも与人は改めてパラケスの都市を見渡す。

 ホーレスの街は中世西洋の大き目の田舎町といった風景であったがパラケスはもっと近代に寄せた風景である。


「おい主、あまりキョロキョロしすぎるな。不審者に見えるぞ」

「そ、そうだなすまん」

「でも与人さんの気持ちも分かります。私も見た事のないものばかりで……」


 リントの言葉に謝る与人であるがユニが少しフォローする。

 その様子にため息を吐きつつも何も言わないところからしてどうやらリントも気持ちは理解できるらしい。


「ご主人。……三人共戻って来た」


 リルが与人の袖を引きながら指を指す方を見ると情報収集に行っていた三人が戻って来た。


「三人共お疲れ。……何か情報あった?」

「特出した事はありません。少なくと一般レベルでは私たちの素性は知らされていないようです」

「アイナくんの言う通りだけど追加するなら、警備の兵隊にも声を掛けたけどこちらを警戒する様子は無かったよ」

「周辺の声を聞いていましたがどの声も何かを警戒するような会話はありませんでした」


 三者三様の報告を受けて一先ずホッとする与人。

 休息に寄ったこの都市で大立ち回りは避けたいと思っていたからだ。


「『グリムガル』がどのようなつもりだろうと、こちらには助かるな」

「肯定。ですが追っ手を差し向けて来る可能性も僅かながらあります。完全に気を抜くわけにはいきませんね」


 リントとセラの会話を聞きつつ与人は取り敢えずの予定を考える。

 補給するだけなら数時間で済むだろうがこれからの長旅を考えればここら辺で疲れをとるのも有りだろう。


「主様、取り敢えずはブラッド・アライアンスの支部に行きませんか? 予定は支部の様子を見てからでも」

「あ。……そうだな。ありがとうアイナ」


 その様子をリントは何かを考え込むように見ていた。



「パラケスのブラッド・アライアンス支部も大きかったな」

「そうだね。私としてはブラッド・アライアンスの受付がミイ君の親戚ばかりという事実に驚きが隠せないけどね」


 パラケスのブラッド・アライアンス支部に顔見せをした際に受付がホーレスの受付ミイそっくりであったのだ。

 何でも姉妹らしく親戚も含めれば三十人以上似たような顔立ちだそうだ。

 ギルド長のウォーロックがそこを気に入りまとめて雇ってもらっているそうである。

 ともかく受付であるミケにも旅する事情は伝わっているもようですんなりパラケスの状況を話してくれた。

 パラケスの周辺は討伐対象になるようなモンスターが数体いるがそれ以外は平和そのもの。

 特に『ソーサラス』の上から何か言われるような事も無いらしい。


「推定。これで当面の安全は保障されました」

「そうですね。ここでしばらく旅の疲れをとるのもいいかもしれませんね与人さん」

「確かにな。皆はともかく結構疲れが来てるかも」


 ユニの言葉に与人が頷くと突然リントが立ち止まる。


「どうしたリント? 何か気に喰わなかったか?」

「いやここに滞在するのは賛成だ。……まぁ主が休めるかどうかは保証できんがな」

「……赤いの悪い顔してる」

「リントさん? 旦那様に何をなさるおつもりで?」


 リントに皆が、特にアイナは険しい顔で見ている。


「そう怖い顔をするな。ここらで主にも護身のための術を身に着けてもらおうというだけだ」

「……それが必要にならないよう我々がいるのでは?」


 アイナが未だ険しい顔で言うのに対しセラがリントの意見に賛成の意見を出す。


「賛同。これからも常に誰かがいるとは限りません。最低限は護身術も身に着けておくべきです」

「そうだね、リント君やセラ君の言う通りかも知れないね」


 そうティアが言うと他の皆も考え込む。

 当人である与人も納得したかのように頷いている。


「一理はありますが……」


 だがそれでもアイナは引き下がれない部分があるのか首を縦には振らない。

 するとアイナの手をリルが引き何やら耳打ちをしだす。


「そうですね! ここは護身の術を教えましょう! そうと決まれば先ずは剣を使ってみましょう!」

「ちょっ! 手のひら返し早や! 引っ張らないで!」


 アイナは与人の手を取り護身用の剣を探しに行くのであった。


「フェンリル。お前聖剣に何を言ったんだ?」

「……ご主人に付きっきりで教えれるチャンスって」

「リルさん、意外と頭回りますね」

「……ブイ」


 僅かな笑いに包まれた残された六人は見失わない様にアイナと与人を追うのであった。



「……凄いな」

「うん。まさか主くんが」


 一先ず練習用の剣を買い指導をアイナにしてもらっていた与人の様子を見てリントとティアはそう漏らす。


「ここまで剣の才能が無いなんて」

「悪かったな!! 才能が無くて!!」


 地に倒れ込みながら与人は二人に大声で叫ぶ。

 パラケスから少し離れた平原のため周りに人は身内以外はいないがそれでも羞恥心のため顔が赤くなる。


「さ、才能が無い訳では無いです! あ、主様は……そ、そう! 大器晩成なんです!」

「……剣の人、慰め方下手」

「アイナ、時にはズバッと言ってくれた方が楽になる事もあるんだよ」

「す、すみません主様」


 アイナが小さくなりながら謝るのが余計心に突き刺さるのか与人は一向に立ち上がれないでいた。


「しかし話にならないレベルで動きが駄目だな。これだと武器が何でも同じだぞ」

「だったら魔法はどうだい? 私は専門外だけどユニくんかカナデくんなら教えられるじゃないかい?」


 そうティアは二人に振るが揃って首を横に振る。


「ユニコーンとして元々魔法が使えましたから他の人に教える事はあまり……」

「私も自然に、としか……。特に音楽と混ぜてますから」

「愕然。マスター強化計画が頓挫してしまいました」


 セラの言葉に誰もが何も言えなくなってしまった。

 まさかものの数分で行き詰まるとは予想だにしない事であった。

 ちなみに与人は現在体育座りをしてふて腐るのをリルに慰めてもらっている。


「で、ですがここは幸いにも『ソーサラス』です。魔法大国であるここなら初心者向けの魔法書ぐらい幾らでもあると思います」

「……そうだな、まずはそこから始めるか。まあこれからも剣は振るうのは前提として、だ」


 そう言ってリントは未だ体育座りしている与人を立たし八人は再びパラケスの門を潜る。


「疑問。そうなるとどのような場所で買えばいいのでしょう?」

「選択肢が多すぎるね。大きなところがいいのかな?」


 八人は魔法品を売っているエリアに着いたがどの店に入るか悩んでいた。

 取り敢えず大きな店に入ろうとするティアであったがユニがある店を指さす。


「あ! あの店とかどうでしょう」

「あの店ですか? ……随分年季の入った、と言うか」

「……潰れそう」


 アイナとリルの言葉通り比較的綺麗な店が並んでいる中でその店は今にも崩れ落ちそうなほどボロボロであった。


「だからこそですよ。これだけ店が並んでいる中でそれだけ長くいるって事は信頼性のある店かも知れませんよ」

「ユニさんの言う通りかも知れません。あの店からは何かを感じます」

「二人のお墨付きもある事だし入ってみる? ダメだったら出ればいいだけの話だし」


 ユニとカナデの言葉を受け最終的に与人がそうまとめたため他のメンバーも頷き店に入っていく。

 中は外の外観と変わらずボロボロであったが本自体は綺麗に保存してあった。

 与人たちが店を見渡していると奥から男の声が聞こえた。


「……随分とぞろぞろと入って来たもんだねぇ」


 奥から姿を現すと如何にも魔法使いといったロープを着た老人が出て来た。


「すみません店主の方ですか? 欲しい本があるんですが」


 ユニが代表して老人に尋ねる。

 だが老人はジロジロとユニを観察するのみで何も言わない。


「あ、あの~。お爺さん?」

「随分と清らかな魔力をしとるのう、お嬢さん。まるでユニコーンのようじゃ」

「はい?」


 思わず全員緊張に包まれるが老人は気にした様子も無く笑う。


「フォフォ。気にするな、ただの老人のたわ言じゃ」

「は、はあ」

「さて皆様方どのような魔法書がお好みで? 有名どころから禁断の魔法書まで一通りありますが?」

「い、いえ欲しいのは初心者向けなんですが」


 ユニがそう言うと老人はキョトンとした様子でユニに問いかける。


「ここがどういった店か知らずに参られたので?」

「は、はい。パラケスはみんな初めてですから」

「……なるほどなるほど。ああ気にせずともよろしいですぞ。ただの訳アリの店と言うだけですからのう」

「もの凄く気になりますけど」


 アイナのツッコミをスルーしつつ老人はユニと会話を続ける。


「しかし何故初心者用を? 魔力を見る限りあなたには必要の無いものだと思いますが?」

「いえ使うのは私ではなく。この人なんです」

「ど、どうも」


 そう言いつつ与人が前に出ると老人は与人の目をジッと見つめる。


「あ、あの?」

「いい目をしておられる。困難があろうと前に進む、そんな意思を持った目じゃ」

「その通りです! よく分かっていらっしゃる!」

「いやお前が一番に喜んでどうする」


 何故か自分が褒められるように喜ぶアイナにリントがツッコミを入れる中で老人は険しい顔で与人に言う。


「しかしその前に立ちふさがるのは途方も無い存在やも知れませんぞ?」

「……例えそうだったとしても前に進むしか残されていませんから」


 そう言い切る与人をしばらく見つめる老人であったがやがてまた笑い出す。


「フォフォ。驚かせて申し訳ない、趣味で占いをしているものでついそれらしい事を言ってしまいました。な~に、これも老人のたわ言ですじゃ」

「う、占いですか?」

「うむ。初心者用の魔法本でしたのう。奥にしまってあるので取ってくので少々お待ちを」


 そう言って老人は奥へ戻って行く。


「おい主、大丈夫か?」

「ああ、うん何か雰囲気がある人だったな」

「……雰囲気だけで済めばいいがな」


 そう会話しつつも老人が戻るまでしばらく店を見て回る与人はリルがある本を取ろうとしているのを見つける。


「ん? どうしたリル。どれが気になる?」

「……一番厚いの」

「どれ? ……って本当に分厚!」


 他の本と比べても明らかに分厚い本がありリルはそれを取ろうとしているらしい。

 本気で跳躍すれば取れるだろうが周りを警戒してかリルは背伸びでしか取ろうとしない。

 与人はその本を取ろうとするが横から伸びたティアの手がスゥとその本を取る。


「はい。リルくん」

「ありがとう鎌の人」


 そう言ってリルはペラペラとページをめくって行く。


「そこまで過保護にならなくてもいいのに」

「ハハ。主くんの機嫌をそこねてしまったかな。けどもしかしたら持った瞬間に呪いが発動するかも知れないしね。念には念を入れないと」

「まあいいけど。それでリル、それはどんな本なんだ?」


 対して気にした様子も無く与人はリルが捲っている本を覗き見る。


「……難しい事、いっぱい書いてる」

「う~ん。これは魔法本というより戦略書みたいだね」

「その通りですじゃ」


 三人で覗き込んでいると後ろから本を何冊か持った老人が立っていた。


(! 私もリル君も気づかなかった!? 気が緩んでいたのかそれとも……)

「……」


 ティアが内心驚きつつも顔のはにこやかに対応するのに対しリルは警戒心を隠そうともしない。

 それを知ってか知らずが老人は本の説明をしだす。


「それは『ルーンベル』にその名を轟かせた軍師。ハインツがその全ての戦略を書き記したとされる書ですじゃ。戦略に有効な魔法も記されているので取り扱っております。よければそれも付けましょう」

「いいんですか? 貴重な本なんじゃ?」

「それが長い事店を構えておりますが、戦略を必要とする事が少ない為か売れ行きが悪いもので」

「は、はぁ。それなら」


 与人はそう言うと魔法書の代金を払い皆と一緒に宿へと向かうのであった。



「ふ~~~う」


 誰もいなくなった店で老人は一人椅子に腰かけていたがやがて奥から一人の女性が出て来た。


「ソロ様! やはりここに居ましたね!」

「お~メルキ。そう目くじら立たずにここでゆったりしようではないか」

「またそんな呑気な事を!」


 メルキと呼ばれた女性はこめかみを押さえつつ老人を叱る。


「いいですかソロ様! 何度も言いますがあなたはこの『ソーサラス』の国王であり最強の魔法使いなんですよ! ここが気晴らしの場所とは言えそう何度も来られては困ります!」

「儂が必要なほど重要な事が起きる事などここ十数年あったかのう? 寧ろこうしている事で都市の状況を把握してるとも……」

「ああもう! 本当に舌が回る!」


 メルキが髪を掻きむしりながら憤慨するのをソロは笑いながら見ている。


「フォフォ。まあ今回は成果もあったからのう。素直に戻るとするか」

「そ、それは良い事ですが……。成果とは?」

「なあに他愛無い事よ」


 そう言ってソロは今は見えなくなった与人を見つめながらこう呟くのであった。



「この停滞しきった『ルーンベル』に一石を投じるかも知れん人物を見た事など……な」

今回はここまでとなります。

明かされる老人の正体と、与人の凡人さ。

魔法の修行で皆の鼻を明かす事が出来るのか。


※次回、小説に変更点があります。


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