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「ミーティア様、ここにはミーティア様の私物がいろいろ流れ着いているとおっしゃっていましたね。」
ロンが気絶したあと、強制的に吹き飛ばされるようにして彼の体から離脱したミーティアは、ロンが目覚めるまで再び中に入るわけにもいかず、すり抜ける身を生かして店内をうろうろしていた。
「確かに、いくつもワタシのものが売られてたけど…なんていうか恐怖?あと怒り?それぐらいしか浮かばなかった」
「怨念がなに言ってるんですか」
今一度、窓の端からちらりと店内を覗く。光があまり入らないようにされているためか、隙間から除く店の中は薄暗くてわかりにくい。じっと目を凝らしてみていると、ぼんやりと火のゆらめきが見えた。
「この店、暖炉あるんですね」
ミーティアが焦れて首だけ店の壁に突っ込む。最初から彼女だけ入っていればこんなことをしなくても良かった。
「あっ」
ロンが人の気配に気づきすっくと立ち上がる。頭をかいて背後に気をちらしながらも振り向かず、鼻に手を当てたりなんだかそわそわしていた。
カランと音を立てて郵便受けに何かが放り込まれた。その音に気づいた店内の少女が小走りで入り口にやってくる。ロンは慌ててそばの物陰に隠れた。
少女が郵便受けからごっそりと紙の束を取り出し、ぱっぱと手際よく差出人を確認していく。その時なにか、うれしいことがあったのか、仏頂面だったのが明るくなりそのまま閉店の札を下げて店内に戻っていってしまった。
しばらく物陰から店を眺めているとミーティアがふわふわとわざわざ入り口をすり抜けて出てきた。そういえば彼女が中に侵入していることを忘れていた。だがミーティアはロンが勝手に一人で逃げだしたことをとがめるでもなく何やら不敵な笑みを浮かべてやってきた。
「……何かありました?」
「ふふん、悪い情報を手に入れてきた」
くくく、と目を少し伏せてニヒルに笑って見せるミーティア。
「悪い情報…」
「ええ、なんでも『王室公認販売会』ってのが近々行われるみたい」
「おお」
ロンやミーティアが知らない販売会。先ほどの少女の様子と合わせて考えてもこれはまさしく、ミーティアの品物が流れる場所ではないだろうか。
「有力な情報じゃないですか!」ロンは立ち上がる。
「うん、だから悪い情報って言ったの」
言っている意味がよくわからないが、一歩前進したことは間違いない。
「それで日取りと場所は…?」
「ふふふ…」
腕組をして目をつぶるミーティア。
遠くの方でカラスが鳴いた。風も少し冷たさを帯びている。通りは夕焼けに包まれ、ぽつぽつとそれぞれの営業中の店がかがり火を店先に焚き始めている。衛兵が塀の上に明かりをともして回っている影が見えた。
「…え、日取りと場所は?」
「…」
「見逃したんですか…?」
「うっ、うるさいな!今から聞けばいいんでしょ!あの子が協力してくれるかもしれないんでしょ!」
ミーティアは案の定ムキになって怒りだした。さっと骨ばった指をロンのつむじにあてる。
「え、待ってください、彼女と話す気なら俺が直接…!」
「知らないの?女子同士の方が会話は弾むんだから。それに」
ぐるぐると円を描きゆっくりとロンの頭の中に溶けていくミーティア。
「男に任せると女の人はすぐ恋愛話に持ってきたくなっちゃいますからねェ…」
イヤミをたっぷり勿体つけて言いながらロンの意識を乗っ取った。




