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世界再編と犠牲の勇者譚  作者: 人生依存
或る魔法使いの物語 第2章 第二次革命未遂事件編
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第16話:第二次革命未遂事件(7)



 俺たちがいる場所は、ちょうど街の入り口からまっすぐに続く道の上だった。

 50メートル幅の舗装された広いつちみち。それは、街を取り囲む塀の入り口部分から米国アメリカ王城へとまっすぐに続いている。


 その道は外部からの来客を米国王城へ案内する際や物資を米国王城に輸送する際に使われる。ただ、そのためだけにここまで大きな道が作られたわけではなく、街に暮らす人々が道の端で店を開き、商品の売買をする機会を生むためにこの道は作られた。


 言うなれば、昔の物語や文献に登場した市場いちばというやつを再現し、生き残った人類に生き甲斐と言うものを与えるためにこの道が作られた。聞く限り、こう言った大きな道はどこの国及び都市にも決まって一つはあるそうだ。


 なぜ今になって街に伸びる幅の広い長い道の話をしたかって?簡単な話だ。

 街の入り口側から攻めてきたと思われる魔族がその道をまっすぐに通って進攻しているからだ。


 おそらくだが、俺たちが最初に遭遇した20体のゴブリンは今目の前にいる本隊からはぐれたか離れたかした奴だろう。


 とにかく、俺たちがいるこの場所はまさに魔族の進攻のルート上で、俺たちの視界には武装をした総勢131体ものゴブリンが映り込んでいる。まぁ、この131体ってのもレオの目測だから実際にはもう少し多いかもしれないし少ないかもしれない。


 レオが言うには、ゴブリンたちの中には弓を持った奴らが40体いる。そして、その弓を持ったゴブリンたちが10体、横一列に並んでこちらへ向けて弓を構えている。

 よく見るとその列の後ろには別の10体が弓に矢を番えた状態で構えるタイミングを窺っていて、そのさらに後ろにはまた別の10体が、そのさらに後ろにはさらに別の10体が同じような状態で控えている。


 あいつらは何をしてるんだ?

 …どうして弓を構えないんだ。


 さらに見ていると、弓を持つゴブリンたちを守るように盾を持ったゴブリンたちが列になった。


「あれ…陣形を組んでいるのか」


 徒手のゴブリンたちが二手に分かれ、盾のゴブリンたちが作る列の両端で地面に手をつき、クラウチングスタートのような姿勢になるのを見ながら、思わず口に出す。

 考えれば行き着く思考だ。


 ゴブリンたちは装備を身につけている時点で武器やら防具やらの有用性を知っていて、有用性を知っているということはそれだけ知性があることになる。

 だったら…。知性があって武器の有用性を知っているのならば、陣形を組むことの有用性を知らないはずが無いし、知らないとしても陣形を組むという考えに至らないはずが無い。


「陣形まで組めるのかあいつら」


 相変わらず弾むような調子の声でレオが言う。

 こいつ、なんでこの状況を楽しんでんだよ。


「おそらく陣形が完成でき次第、奴らは私たちに攻撃を仕掛けてくるはずよ」


「だろうな。全く……たいでも無いのに陣形を組むなんて、まるで…」


 俺たちを強いと認識して警戒しているみたいじゃねぇかよ。

 そのレオの言葉は正直何を言っているのかわからなかった。


 徒手ゴブリン全てが横一列で並べるようなスペースはなく、3匹単位で後ろに後ろにと列を重ねてゆく。


 ………剣を持ったゴブリン達が動く様子が無いな?

 あれか、守り気味で陣形を組んで、もし自分たちの場所に俺たちが攻めてきたのならその時は剣を持った奴が迎撃をするって奴か?

 だとしたらもう時間が無いぞ。もう直ぐで徒手の個体が陣形を組み終える。


「もう直ぐ陣形が組み終わるぞ。早く何か指示を出せよレオ!」


「俺に指示を出すな!」


 えー。めっちゃキレてくるじゃん。

 俺、別に間違ったことなんて言ってぇのに。

 

「簡単に作戦を説明する」

 

 フンッと鼻を鳴らし、興奮からか揺らぐ声でレオが言う。


「わかった」


「ええ」


 勇者リーダーの言葉に俺とカレンがうなずき返す。


「俺が突撃し、奴らを可能な限り殺す。カレンは俺と一緒に来てサポートをしてくれ。ケイタはここで待機してろ」


「どうして俺は待機なんだ」


「雑魚だからだ」


 全く…。当然のように言うじゃねぇかよ。

 まぁ、俺が強くは無いのは事実だから言い返せはしないんだけどさ。


「…わかった。なら、俺はここで待機しておいてお前たち二人の取りこぼしを片付けることにする」


「ん。それでいい」


 レオはいつものように獰猛に笑う。

 犬歯をむき出しにしたその笑みは宛ら猛獣のようだ。

 獲物を狙う獣のようだ。


「カレンはそれでいいか?」


「別に構わないわ」


「オッケー。じゃあ弓を持った奴らが矢を放ったらそれを合図に走り出すぞ」


「わかった」


 二人は互いの顔を見て頷きあうと、それぞれ手に持つ剣を握る手に力を入れて低く構えた。


 レオは右手だけで剣を持っている。なんの特徴も無い、レオが最初から持っていた両刃の長剣だ。

 そして、剣を持つ剣と対象の位置にある左足を大きく引き、右足に重心をかけて前傾姿勢で走り出しの瞬間を窺っている。


 一方のカレンは右手を上段にして両手でめっちゃ長い片刃の長剣を持っている。カレンは手首をひねり、拳を傾け、それによって剣先が自身の後方へと向く。

 さらに、剣を構える方とは逆側の足を引くレオとは違い、カレンは右足を引いて半身の状態で走り出しの瞬間を窺っている。

 正しいのかはわからないけれど、多分レオと違って重心がちょうど中心に落ちている。


 俺は別に二人と違って突撃していくわけでは無いから走り出す準備をする必要はなかったけれど、この場所でこのまま突っ立っていたら当然のように矢に射抜かれてしまう。

 だから、俺はなんとなく矢が届かないであろう位置まで下がった。

 歩幅にして10歩ほど。うん。これでまぁ大丈夫だろう。


 俺たちとゴブリン軍団の間にある距離は目測で100メートルちょっとで、ついさっき終わった初戦の時よりは若干だが俺たちが不利になりやすい状態にある。

 不利になりやすい理由は簡単だ。互いの間に距離があり、相手は長距離攻撃を持っていてこっちはもっていないからだ。

 

 奴らは俺たちに近づかずとも攻撃ができるが、俺たちは奴らに近づかなければ何もできない。


 レオは嬉しそうにしているが本当に厄介な展開だよ。マジで。


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