情報端末
部屋の中で唯一つ、違和感を発散しているのは小さな情報端末である。つるりとした外観の情報端末は、部屋の中でそこだけ最新のテクノロジーを主張していた。
自分の情報端末装置を見るたび、学生はやっぱり部屋に調和した、昭和時代のテレビに似せた端末に買い換えようかと迷う。
あれなら部屋の雰囲気にぴったりで、画面をモノクロに調整すれば、益々昭和時代に戻ったようで気分が良いだろう。友達の何人かはすでに、そういったデザインの端末に変更していた。遊びに行くたび自慢されるので、学生は少々腹を立てていた。
「情報、ニュース」
学生が命令すると、端末は学生の音声を認識して起動した。画面がニュース番組になって、最近の情報が次々と展開される。見るともなく画面に目をやり、学生は部屋の隅に立てかけてある白い塗装のギターを手にとる。
ぼろん、ぼろんと気のない調子でコードを何度か試す。諦め、ギターを元に戻す。昭和時代の若者は、皆ギターを爪弾いたとあったが、学生には音楽の才能がなく、いくら練習しても上手くならない。きっと昭和時代の若者たちは、一人残らず音楽の才能が、生まれながらにあったんだ。
考えは、やはり研究ファイルに戻る。
どうしようかなあ……。折角の研究、無駄にするには惜しい。しかし、どこに持って生きようもない。やっぱり思い切って消去してしまおうか。
ふと学生の視線が、画面の表示に釘付けになった。
【恒星間宇宙船に、あなたのアイディアを!
人類初の恒星間宇宙船は、人類の進歩の証しとして、宇宙殖民を使命としています。しかし、最初の一歩については、未だ結論が出ていません。
どのような社会を進むかは、あなたのアイディアによるのです!
どうです? あなたのアイディアで、理想の植民星を開拓させたくはありませんか?】
文面を繰り返し読み、つまりは宇宙殖民の第一歩をこちらに決めさせてくれる、という趣旨らしいと見当をつけた。
学生は閃いた!