友人
「映話!」
命令すると、次に呼び出す相手の名前を告げる。同じ大学に通う友人だったが、学生が文学部で歴史を専攻しているのに対し、友人は物理学を専攻している。ガチガチの理数系である。
暫し、呼び出しが続き、画面が切り変わって、どこかの研究室らしき映像が現れた。
が、すぐ映像が乱れる。画面が真っ黒になったり、走査線が歪んだり、まともに表示できない。
「……っと待ってくれ……こっちで少し電磁波の……ってるんだ……」
声も途切れ途切れである。
やがて映像がシャンとなり、画面に白衣を身につけた、同年齢らしき男の顔が現れる。
ぼさぼさの蓬髪。何日も髭を当たっていないらしく、顎はうっすら黒い。目はぎょろぎょろと鋭く、狂的な輝きを放っている。
絵に描いたような気違い科学者の姿である。もっとも相手は、自分の外見が相手に与える影響を知り尽くしていて、わざとだらしない服装をしている節がある。友人は学生の顔を認めると「やあ」と短く挨拶を返した。
「すまん、ちょっと実験で粒子加速器を動かしていた。それで画面が乱れたんだ。スイッチを切ったから、もう大丈夫だ」
学生は手短に近況を報告すると、恒星間宇宙船の話題を振った。
相手は、ちょっと顔を顰め、首を振った。
「あれか……。光速度のたった二十パーセントしか出せない宇宙船なんか、俺は興味ないね。俺は超光速を目指している! 見ていろよ。俺が〝大統一場理論〟を完成させたら、重力の秘密を白日のものにして、憧れのワープ航法を実現させてやる。そうなったら、あんな時代遅れの宇宙船は、ゴミ同然の代物さ!」
学生は友人の怪気炎に少し辟易したが、それでも恒星間宇宙船の初期プログラムについて話題を誘導していく。




