表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/85

第二十六節 エピローグ


ガタンゴトン


上質なフカフカの座席から外を見ると、黄金色をしたのどかな牧草地帯が広がっている。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


俺とお嬢様は今、蒸気機関車の一等車両に乗っているわけで。

ブラックモア侯爵領に帰っているわけなんだけれども。


「お嬢様、帰る日にち、変えてもらった方が良かったんじゃないですか?」

「なぜ?」


なぜって…

そんな真顔で聞かれても…


「だって、今日は『微笑む女』が、ヴァロワに返還される日じゃないですか。」


そうなのだ。

俺が苦労して本物と偽物を入れ替えてた、あの絵が!

今日、ヴァロワに帰っていくわけだ!


「お嬢様なら、王子殿下にお願いして、返還の時に同席させてもらえたんじゃないですか?」


お嬢様は心底興味なさそうに、

「興味ないな」 と言った。


表情と台詞が一致している。


けど

「なんでですか?俺、頑張ったのに。それに、結局本物をどうやって、展示されて偽物と入れ替えたんです?」


俺の言葉に、お嬢様は少し視線をやって、沈黙。


「え?なんですか?すごい、沈黙が、怪しいんですけど…」


お嬢様は、はぁーっと一度息を吐き切ると、こっちを見てきっぱり言った。


「別に。どういうことはない。権力を使っただけだ。」

「どういうことです?」

「ヴァロワに返還させる前に、絵は王宮の保管庫に移されることになっていた。王宮に来れば、あとはいくらでもやりようがある。」


「つまり?」

「ウィリアムに頼んだんだ。王宮の保管庫に絵が移されてきたら、絵を入れ替えるように。」

「お嬢様、王子殿下にも犯罪の片棒を…」

「本物を本物に戻しただけだ。なんの問題もない。正しいものが、正しい場所に。それだけだ。」


というか?


ウィリアムって…

え?

名前で呼んだよ…

今まで、名前で呼んだことなかったじゃん? 呼んでてもウィリアム王子とか、ちゃんと敬称つけてたじゃん。


「ウィリアム王子殿下と、なんか、あったんですか?」


割と広い一等車両の個室の中、お嬢様にずずいっと近づく。


「だから、絵をすり替えて…」

「そうじゃなくて、心境の変化的な、恋の芽生え的な!お嬢様には、まだ早いやつですよー!」


お嬢様は不審者を見る目だけれども。

大事だろ。大事なんだよ。

お嬢様にはまだ、そんなの早いんだよー!

お嫁に行くんなんて、まだ考えたくないのだー。


「何を言ってるんだ、お前…」

「だって、急に、王子殿下のこと、名前で呼ぶんですもん。せめて…せめて、進展はちゃんと俺のいるとこで逐一教えてもらわないと…」

「本当に、何を言ってるんだ」


お嬢様はため息をついた。

呆れていらっしゃる。


「それで、結局この事件どういう結末なんです?」

切り替えてそう聞くと、お嬢様に

「お前、怖いな」

と言われた。


解せぬ。


「結末も何も、なくなった絵が戻っただけだろう。」


まぁ、そうなんだよな。

絵を盗んだモンフェラン司祭も、窃盗罪は証明できず、かといって偽証罪や詐欺罪では被害者がいないから、不起訴で釈放されたし。


リュカ君の複雑な表情を思い出す。


これから、あの親子は大丈夫なのかな。

なるべく、手紙を書こうと思ってる。


「結局、諜報員とか言ってたメルドさんの目的は阻止できたんですか?」


「さぁな。それは、私の手には余る。」


お嬢様はぽつりと窓を見て応えた。


ガタンゴトン、ガタンゴトン


牧草地帯を抜けて、車窓からは遠くに海が見えてきた。

ブラックモア侯爵領まで、あと1時間くらいだろう。


まぁ、いろんな事件があって、お嬢様もなぁんかいろいろ考えること増えてたし。

領地へ帰って、まったりする時間も必要だろう。


「ところで、なんで王子殿下を名前呼びしてるんです?どう言う心境の変化…」


「おまえ、しつこいぞ。」



完結となります。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ