第18話「裏の私?」
「あなたは……私?」
私は、突然飛ばされた暗黒の中で対峙する私によく似た女に問うた。
女は間も無く首肯した。
そして、半ば私とは似ても似つかない低い声で答えた。
「そうだ。私はお前だ。見ればわかるだろう? 愚問だよ」
「それもそうだね。……つまりこれはあれかな? アニメでよく見る自分と向き合え的なやつかな」
「察しがいいな。さすが私だ」
女は、自分が褒められたわけでもないのに得意げだ。他人が褒められて胸を張るなんて普段の私が見せない様子を私の姿をした女がしていることに違和感を覚えた。
だが、自分と向き合う時間となると、何か私はこの空間の中で自分について気づくべきことがあるということだろう。
花園の通過時間に対して抱いた違和感の正体はこの時間ということだ。そしてその起因はあの花から放たれた光線に違いない。
状況を整理すれば、大抵のことは見えてきた。いろいろツッコミどころはあるが早いところ花園は抜けたいので、形式的に済ませよう。
茶番には付き合ってやろうか。
「それで、あなたは私をどこへ導くの?」
「破滅の光は人の表と裏を限りなく近づけ、認識させる。汝は表で私が裏。汝の裏を認識し受け入れよ」
「なるほど。やはりそういう感じなのね」
概ね私が予想していた通りだった。
自分の深層心理に眠る、普通は認識できない本当の心や性格を知り、受け入れなければならない。
本来の自分とは正反対で、人によっては自分の嫌悪している側面と向き合わなければいけないーーそんな苦しい時間だ。
「私の裏……ねぇ」
「わからないのも無理はない。自分の見えない部分だからね。私がこれから自覚させてやるから、心して向き合うといいよ」
「んぇ? ……あぁ、はい。そうですか」
「……あまり反応がよくないけど、何か?」
「なんでもないよ。続けて」
私は、自分の裏とか言われてもパッとしないのでよい反応なんかできるわけない。
しかし、あまりにもさっぱりとしすぎたせいかこの茶番の進行にも悪影響を及ぼしそうだったので、急いで軌道修正を試みた。
「うーん、そうか。……わかった。とりあえず……これ食う?」
会話の主導権が私に握られているのをなんとなく理解しているようで、女は随分不服そうだった。
そんな彼女が懐からおもむろに取り出したのは——
「…………マシュマロ?」
「ましゅ……なんだって? これはギモブ。凄まじい甘さとふわふわの触感が持ち味の駄菓子よ。焼いて食べるのもおいしいのよねぇ」
「いや、だからそれマシュマロだって。……んんんいやいや。いったんそれは置いといて、なんでそんなものがこんなとこに?」
「ここはひどく真っ暗でしょ? このぐらいの楽しみないと頭おかしくなってしまうよ」
「いやいや、理由になってないし。頭おかしくなるはそれはそうかもしれないけどさぁ。……もういいや、一個ちょうだい」
どうやら私の裏を自称する女とは会話が上手く嚙み合わないらしい。早くこの場を終わりにしたい私は、大人しく女の提案を受け入れることにした。
それに、久しぶりに食べるマシュマロだ。昔はよく食べたものだが、私が腐っていくにつれて食べなくなっていた。
久しぶりに食べたくなった。
「じゃあどうぞ」
「ありがと」
私は女が手に持っているマシュマロを受け取った。
マシュマロが取られ、手のひらがフリーになった女は少し不安そうだった。
「なに?」
私が訊くと——
「もう一個いっとく?」
「いらんわ!」
そんなに食い意地は張ってない。自分の裏を自称する怪しい女から必要以上に施しを受けるつもりは——
「食べられる機会しばらくないかもよ?」
「もっとください!」
甘味には抗えません。人間だもの。
今回更新早いでしょ!
どうよw




