表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディスコードルミナス  作者: RCAS
ヴェリウス辺境伯領の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/120

幕間1 セシリア、意地を張る

 業務が終わり、屋敷に戻って来た。

 体はくたくた。いくら疲労に強いこの体とはいえ、怪我をしているとさすがに影響は出るらしく、強い疲労感が残る。

 それでも、エリック隊の皆の役に立てたという実感があり、精神的には充実していた。

 こんな戦時中だというのに、ずいぶんと余裕があるなと自分でも思うが、こういう余裕こそが戦場では必要だと、レイウォル丘陵の戦いで痛感した。

 だからこの精神性は好ましく、今日はぐっすり眠るだけ……そう思っていたのに、今日もセシリアの看護を受けることになってしまった。


「ほら、服を脱ぎなさいな。拭いてあげるから」


 ベッドに座っている俺に、セシリアが近づいてくる。

 痛みはまだあるが、体はもう普通に動かせる。

 だから本来なら自分で拭けるのだけど……何故かこの作業をセシリアはやりたがる。

 俺が怪我をしてからというもの、毎日こうして拭いてもらっていた。もしかすると、これがもう日課になっているのか?

 理由は分からないが、セシリアがやりたいなら好きにさせる。別に減るものじゃないしな。


「はい、脱ぎましたよ。あとは自由にどうぞ」

「ふふっ! 任せて!」


 てな感じで、どこか嬉しそうなセシリア。

 傷口を覆う包帯を取ると、今の俺は素っ裸で、その全てをさらけ出しているようなものだ。

 とはいえ、相手はセシリアだ。裸を見られても特に気にする様子はない。

 手際よく体を拭き、傷を負った場所や、女性ならではの部分さえも拭いていく。

 本当なら自分でやるべきところも、セシリアは「怪我人が遠慮することはないわ」と言って聞かない。


 しかし、問題があった…… セシリアの献身によって、俺は性欲を大いに持て余すからだ。

 最初はここまでじゃなかった。怪我の痛みが辛かった時は、そんな気分にはならないからだ。

 でも、傷が癒えてくると?

 今では セシリアに股間を拭かれると、理性が揺らぐのが分かる。

 セシリアは本当に一生懸命やっているだけのように見えるが、俺の心を弄んでいることに変わりはないのだ。


「はい! これでいいわ! 包帯を巻き直すわね」

「……お願いします」


 なんとか気取られずにすんだが、正直、ヤバい……! 

 俺の体は少しだけど気持ちよくなってしまった! 傷が癒えるにつれて……今では、もうこんな有様だ。

 くそぅ……生殺しとはこのことか!

 一人で処理すれば済む話だが、傷がまだ気になるから、それもできない。

 こうなったら、熱が引くまで耐えるしかない……!


「終わったわ。寝巻に着替えて今日は終わりね」

「はい、明日のためにも早めに寝ましょうか」


 この興奮を抱えたままでは寝るのが厳しいが、実際、明日も早い。

 疲れもあるし、目を閉じれば案外すぐに寝られるかもしれない……。

 そう思った矢先だった。

 セシリアが俺の傍から離れない。それどころか、ゆっくりと近づいてきている。


「ねえ……もう一度だけやってみたいの」

「え、何をですか?」


 なんだろう、この雰囲気は。いつものセシリアと違う。


「今のリーナはどっちの心? 多分男よね?」

「ええ、男ですね。靖彦の心が強いですよ」

「そう、ならリーナに変えてみない? 私だってできるんだって、証明してみせるわ!」


 キスするってこと? ……これは、アンナとの一件が原因か。

 自分の側付きで仲良くしていた侍女が他の女とキスをして、それで満更でもない反応をしている……これを気にしているのだろう。


 セシリアが俺のことを好きだというのは分かっていたけど、その好きの形がどんなものかは迷っていた。

 でもこれではっきりした。恋……こっちのほうの好きだろう。ほぼ確定と考えてもいい。

 嬉しいけど、貴族の娘さんをこっちの道に引きずり込むのはどうなんだ? それとも、俺の心が男だからそれほど問題はないのか?


 セシリアを口説いたと思いきや、こんな思考だ。

 自分でも意思や行動がころころ変わり一貫性がないように思えるけど、人の心はこんなものと割り切ることにする。


「……いいですよ。でも、アンナの時より難易度は上ですけどね」


 ここは気にしないことを選択した。

 セシリアとキスして遊べると思えば俺にとっては嬉しいだけだからな。

 というかこの体の疼きが俺にこの選択を拒ませない。これはセシリアの責任だ! だからその責任を取ってもらう!

 そんなバカみたいなことを考えつつ、キスくらいなら許容できるという判断もある。

 肉体関係まで行かなければ、どうってことないでしょ!


「なんで? 男役を務めれば良いんじゃないの?」

「今の俺は男、つまりはそういう目でセシリア様を見ているんですよ。好きな女にキスされて、それで心が女になると思います?」


 アンナってどこか男らしい部分があるから、俺も心が女になったんだよな。

 百合娘ではあるんだろうけど、それは女らしい心の百合ではなく、心の中にある男の部分が強いタイプの百合なんだろう。

 だから強引なキスとかが有効だったわけだ。いくら男役を意識したって、あれはセシリアにはできないとは思う。


「そんなこと言われても分からないし……やってみないと分からないじゃない! だから行くわ! いいわね!」

「分かりました。どうぞ」


 少し強引に話は打ち切られ、セシリアが顔を近づけてくる。

 前の時とは違って、そこに躊躇はない。思い切りがいい、これはいけるか!?

 目を閉じるタイミングもいい感じだ! これはアンナを参考にしたな。

 ゆっくりと体も近づき、後頭部に手が回されるのが分かる。

 そして啄むようなキスが始まった。


「ん、ふぅ……あむ……ん、はぁ……」

「……」


 かなり積極的だ! これはいいキスだぞ!

 キスをされているというのに、俺の興奮は性的な物とはまた違ったものとなっていた。

 なんだろう、これ? 目をかけている女の子が成長する姿を見て、嬉しがるおじさんのような心境!

 うーん、無理だな、これは。アンナは雰囲気作りが上手かったからできたわけで、セシリアには荷が重い。


 というか、俺はキスにはあまり興奮しないほうだからな……。

 性行為そのものよりも、そこに到達する過程で一番興奮して、実際に行為が始まると頭が冷静になるタイプだった。

 これはもう、心が女に変わることはないだろう。それなら俺もやりたいことをするか。アンナとのキスは良かったけど、少し不完全燃焼でもあったからな。


「ん!? んぁ! んん!!」


 いくぜベロチュー! セシリアの口の中を蹂躙だ!

 キスをするならやはりこれよこれよ! 支配的なキスと言えばこれが楽しい!

 こちらからセシリアの頭を掴み、口を離すことは許さずに舌で歯茎を舐めまわす。

 さて、あとはセシリアが乗ってくるかどうかだが……おっ! 来たな。


「あむ……む、ん……」

「ん……ふぅ……うぅん」


 舌で舌をつついたのが効いたのか、セシリアが舌を絡めてきた。

 やはりキスをするならここまでしないと駄目だな! 興奮するキスといったらこれだよ!

 まあ、俺もそれほど経験があるわけでなく、そういうお店での経験がほとんどなわけだが……。


 でもこれが十代の美少女としていると考えると、それがまた良い。

 日本じゃまず無理だからな。せっかく異世界に来たのなら、そういう部分を楽しまないと損だぜ!

 ……なんか変なテンションになったけど、楽しむことはできた。そろそろ頃合いか。


「ふぅ……」

「んぁ……」


 口を離して目を開けると、そこには潤んだ瞳で俺を見つめるセシリアがいた。

 その顔は真っ赤で、完全に出来上がっているような表情だった。

 やべっ! やりすぎたか?


「……」

「……」


 しばし無言で見つめ合っていると、セシリアは俺から離れて、お湯の入った桶を持ち上げた。

 そして何も言わず、そのまま部屋を出ていく。

 どういう心境なのかは分からないが、これで確信したことがある。


「照れたな」


 おそらくはそういうことだ。ああやって逃げるのは、前に〇ッキーゲームでキスした時と同じだ。

 となれば、特に気にする必要はない。


 おっ、さっきまでの火照りがすっと引いている。プレイに入ると途端に勃ちが悪くなるあの感覚だ。

 男の時は少し悩みの種だったけど、今は男の時の感覚が戻ったようで、少し嬉しい。

 これは寝るのにちょうどいい。ぐっすり寝て、明日に備えよう。




 翌日。

 セシリアが部屋に来て、俺の着替えをいつものように手伝っている。

 朝の挨拶もぎこちなさはなく、普段通りだ。

 意識してそうしているのだろう。なら俺もそうするべきだ。


「今日は装備一式を向こうに持っていきます。魔法を使う程度には回復しましたから」

「分かったわ。防御塔の装備置き場に持っていけばいいのよね?」

「はい。もうここで訓練することはないでしょうからね」


 予定の確認もし終えて、あとは出発するだけ。

 最後にセシリアが俺の後ろに回り、エプロンの帯を結びながら、そっと耳元に口を寄せてきた。

 そして。


「また……しましょうね」


 それだけを囁くように言ってきた。

 これには俺もぞくりとするものを感じて、反射的に振り返りセシリアを見る。


「あっ、こういうのが効くのね! リーナの弱点、分かったかも!」


 嬉しそうに、けれどどこか恥ずかしそうに笑うセシリア。

 ……この笑顔に俺は見とれてしまった。

 そして胸が高鳴るのを自覚する。

 上手く言えないけど、セシリアの魅力というのは、こういうところなんだろう。

 青春が蘇るような、そんな感覚。


 それに恥ずかしさを感じながら、出発することになった。

 セシリアと連れ立って歩くこの時間。戦時の今では、これだけが何よりも貴重で、嬉しいものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ