さあ、次へ行こうっ!!!
特設会場にて。
ぐちゃぐちゃに空色が乱れ、沢山の色と模様が散っていた。
「イズミさん!」
ツムギが走っていた。辺りには銀色の葉っぱが散りゆらめいている。抜ける風に不思議な色が散り、周りの水の乾きは、ぼろぼろと宙に揺れ動く。
早足で歩いていたイズミは振り返り、足元が鈍色の曲線に歪んだ。同時にその近くにいる人に気づく。
「カナデさん…うゎっ」
目の前をさっと巨大なものが通り過ぎていった。人影だったようだ、その方をちらりと見ながら、ツムギは声を出していく。
「カナデさん、時間大丈夫ですか?」
まだらな日向を抜けていきながら大きな声で言うと、ブラシを持って掃除をしていた派手なやつは、それを聞いてぱっとソラを引っかいた。
「ほんとだっ!」
カナデは動き始め、そのまま流れて3人は走りだす。
「ハネ見ました?」
複雑な模様が彼らとすれ違い、散った水が肌を掴んだ。イズミは横を見て、大声で答える。
「見てないです!」
奥のカナデも頷く。
その瞬間、全てが暗くなった。
ぱしゃぽしゃと水音が立つ。
光がすぐに復帰し、辺りには水の浸った会場が広がっていた。
「カナデさん、番組の準備は出来てますか?」
立つ足音とともにイズミが声を揺らしていく。
「出来てますよ、終わり次第行きますっ」
足元の引っかかりが消えた。がくんと足が速くなり、3人はばらばらと走っていく。
会場の通路へ出ると、沢山の人が蠢いていた。秩序と無秩序の波が交差している中を、すり抜けてなんとか進んでいく。
会場の外へ出て、広い場所になびくと、辺りから声をかけられた。
「おっツムギ!これ食べてけ!」
小さく風に弾むツムギに、めっちゃ可愛い美少女が寄ってくる。巨大な肉のささった串を持ち、体にぐいと押し付けてきた。
はいはいとツムギは止まりながら、手をさっと動かしていく。美少女はそのまま流れるようにカナデを見て、
「お兄さんもどおですかぁ??wwwwwww」
「えめっちゃ可愛い……」
いきなり豹変したぶりっ子に、呆気にとられたカナデは、すいと手を漂わせる。
美少女の後ろには、その肉を売る人が来ていた。広いトレイを首にかけたアジサイの髪は、らっしゃーいと体を揺らしている。
それと一緒に動いてきた川水の髪の人に、ツムギは通貨を手渡しながら前へ向きかけると、今度は追うように前から何かが体を突っついてきた。
「おな…お情けを…」
小さい影が目に入った。トレイを首にかけて、何かのグッズを売っているようだ、絞り出すように声を張り上げている。
「ツムギー」
同時に単調な声が、向こうから聞こえて来た。ツムギは身を落とし、トレイの中の物をちらっと見ていく。
中には色々な食べ物が、瓶の中に入っていた。飴玉やパンケーキのようなものなどが、蓋の開いた瓶で売られている。
一つの瓶を手に取って身を起こし、ソラに指を走らせていると、そこでポケットに手を入れた黒もじゃが、ふらふらとしているのが目に入った。
「アヤさん」
「いつ始まんの?」
アヤは適当な声を流す。
通貨を受け取っていく小さい影の前で、ツムギは素早く喋っていく。
「もうすぐですけど……チケット無いと入れないですよ」
「いやそれぐらい分かってるよw」
アヤは笑いをこぼした。小さい影は、後ろから別に来た長髪の人に、ふっと振り返って向こうへ行っていく。
会話の後ろからは、肉を食べているカナデが、横に出ていって辺りを眺めた。
アヤはふいっと辺りを見渡す。
「チケットもう無いよね?」
「もう売り切れてると思います……いいや、俺スタッフやるんで、やりましょうか」
そう言いながらツムギは手元にぱっとデータの影を出現させ、掴んで渡す。
「えっいいの?」
「一応ジャンル合うか調べみて下さい、合わなかったら誰かにやっていいから」
カナデと階段に出ていきながら、後ろに振り返りながら言い残していく。ありがとうと、残されたアヤは言葉を投げた。
階段を下り始めると、カナデが横を見て声を出した。
「そうだ、何か新しいイベントやるって聞いたんだけど」
周りに立ち売りしている人たちが、沢山散っている階段を走り下りていきながら話す。
「あぁ、雪山でアニメ視聴会やるっていう話で…」
ツムギは足元を見ていきながら説明すると、カナデがすぐに反応を上げた。
「何それ?w俺も参加していい?」
振り向いたツムギが頷いていくと、
「おぉ!やったw」
とカナデは嬉しそうに声を揺らした。
「私も今度は企画からやってみたいです!」
文化フロアの通路からラジオスタジオへ入っていきながら、ツムギと薄い緑茶の髪が話している。スタジオへ入っていくと、辺りは普段とは違う装いを感じた。
「まだ何も決まってないみたいなんで、いいと思いますよ」
見慣れぬ空気がふいふいと動いていく廊下を、早足で歩きながらツムギが答える。
向こうから、見知った顔が歩いてきていた。
「カグヤさん!」
少し急いだ様子のカグヤは、気づき挨拶をしてくる。
「すいませんハネ見ました?」
体が近づいて聞くと、
「4階にいますよ!」
とカグヤは上の階をちらっと指した。
謝辞を言いながらすれ違い、2人は足を早めて階段に入っていく。
4階に出て、セット横の通路を歩きだす。この階もすでに秋祭り用の放送は始まっているようで、横を通るセット内からも、輪郭のはっきりした声と、聴きなじみのない音楽が響いていた。
ツムギは服の擦れる音とともに走り始め、通路の奥の方へ向かっていく。
「ハネー!」
やや控えめにさけぶ。小さなテーブルには数人の人だかりが出来ていた。その中で椅子に座るくせ毛が、こちらに振り向く。
「ツムギ!」
「特番始まるよ!」
声を小さく荒らげながら近づいていくと、ハネはすたっと席を立っていく。
「分かってる、今から行くとこ」
ツムギは歩きながら目線を上げ、テーブルの他の面々へ向かう。一人の赤毛のちりちり髪が振り向き、気づいて声を上げた。
「ツムギさーん…あっ!私、誰か分かる?」
「オト。話はどうなった?」
え?と驚いたように笑みを浮かべる赤毛をよそに、ツムギは一同に聞いていく。
ハネはラジオスタジオから出てくると、ふっと頭を振り、たたっと走り始めた。
巨大な明るく差し開いた場所で、大きな壁に向かって素早く近づいていき、小さな扉をがちゃっと開けると、違う照明と音のさまが辺りにひらく。
ちかちかと明かりの漂う通路を揺れながら通っていくと、壁に沿ってなかなか決まった衣装の人たちが、ふよふよと動いていた。
ステージ袖には、暗闇と、溢れ暴れる音の手前に、八重がいた。
「ハネ!…イベントどうなった?もう今日実験やるの?」
「イベント…あっ!やってる!」
奥の闇の向こうに、見知った光が差していた。視線を奪われハネはそのまま通り過ぎ、袖を駆け抜けていく。
ステージ傍に来ると、音の爆発が身を覆い揺すった。遠くの暗闇まで光がばら撒かれ、音の顔が体をまさぐる。
八重は新たな気配に気づいて振り向くと、控室の廊下をゴスロリが歩いて来るのが目に入った。
歩くツムギはふと騒々しい音がして、通って来た道を振り返る。通路の中を、誰かが奇声を上げて突っ込んできているようだった。
「ハネー!新しいイベントやるってほんとーっ??!」
それに気づいた八重がぱっと動いていき、
「シズクちゃんっ……!」
と慌てて静けさを求めていくが、シズクの視線は別の方向に揺れている。無視して突っ込んでいき、
「きゃー!ツムギーっっ!!」
と叫びながら黒い布に突撃していった。
倒れ込んでいくその後ろで、続いて通路の方からイズミが現れた。ささっと歩きながら、その様子に目をやっていく。
葡萄の髪はゴスロリの服から、額を揺らして引き剥がしていき、ぐいっとツムギに顔を近づけた。
ツムギは口に手を当て、しー!と示した。
シズクはニヤっと笑い、しー!と笑顔で返す。
ふっとすぐに離れていき、足を振り、たたっと袖に走っていった。
「そうだ、シズクちゃんもラジオに誘ったら?」
八重は笑みが落ちながら、思いついたように言う。動きの残るイズミは髪を動かした。
「いや、もう本人が出たいって言ってて」
「あぁ!そういうことかw……、イベントはどうなった?」
立ち上がり、ぱっぱっと服を払っていたツムギは顔を上げる。
「今人集めてるらしい」
「ふーん…今日実験やるの?」
音がやみ、ふっと空気に雑音が吹いた。ステージの方を見るツムギは、頷きながら向き直っていく。
「うん…一応13時からって言ってる」
了解を八重が応えていると、向こうから拍手の音がしてきた。見ると、手を叩く2人と一緒にカナデが歩いてきていた。
「終わりましたよ!」
カナデは爽やかな声を投げると、その先でイズミは小さく頷きに揺れる。
そのままハネは勢いを弾ませ、だっと走りだした。
「よしじゃあ行こうっ!」
「おーっっ!!」
乗ってシズクも跳ねていき、一行は廊下へ駆け出していく。
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