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34.ようこそ! 魔物サファリパークに!

「魔物サファリパークにようこそ。この広いパークでは魔物たちを獲り放題。さっそくやりますか?」

 ゲート前でイリーナたちを出迎えたふつつかウワキは笑顔でそう言った。


「あんた絶対にそれ定型文よね。なに普通のお客さんとして出迎えてんのよ」

 イリーナの怒りもなんのその、それでもウワキ変わらぬ笑顔で

「さっそくやりますか?」

 と繰り返した。


「これは唐突なCPU化ですね」

 コトネが冷静に分析した。

 なんでよ!! 前節まで普通に喋ってたじゃない!」

「あのCPUってなんですか?」

「こちらの話なので気にしないでください。姫、どうやらゲート前に立つとこうなるみたいですね」


「最早呪いね。わかったりましたよ、さっそくやります、魔物サファリパークに入場します」

「ひとり5万オラになります」


「いややいや高くない? というか金とるのかよ!? こっちはあんたの親の入れ歯を探すために入るっていうのに!!」

「5万オラになります」

「聞いてないね」


「それがCPUです。姫、冒険者一武闘会のお陰で大富豪なことですしここは大人しく払いましょう」

「あーやだやだ、こういう大金手に入れた瞬間財布の」紐が緩くなる奴。こういうタイプが破滅するのよね」

「金の玉を即日換金してホテルで贅沢三昧したイリーナ姫がそれを言いますか?」

 ブリギッタのごもっともな指摘をイリーナは呆れるように笑ってから目をカッと開いた。


「黙らっしゃい!! あれはいいの、価格に見合ったサービスを受けていたのだから。ただ、こういう価格が見合っていないものにほいほい出すのはよくないって話よ」


「そんな自分ルールを掲げられても知りませんよ」

 コトネは異空間ポーチからクレジットカードを出した。


「ウワキさん、カード使えますか?」

「はい、使えますよ。こちらにサインお願いします」


「クレカとかある世界観じゃないと思うんだけど……って、あんたなんで私の名前でサインしてるのよ」

「姫名義のカードだからです」

 コトネは慣れた手つきで独特でオシャレなイリーナのサインを書いた。


「そんなもの作った覚えないし、そんなサインも記憶ないんですけど」

「ふふっ、不思議ですね」

 コトネは他人事のように笑いながらサインした紙をウワキに返した。


「はい、確かに25万オラ頂きました」

「改めて金額繰り返されると確かにえぐいね。ありがとう、イリイリ」

 ソラソラはイリーナに謝辞を述べた。


「えっ? なにこれ? 結局私が奢ったことになるの?」

「ふふふっ、どうでしょう?」

 コトネは不気味な笑みを浮かべる。


「初めてのご利用ですね? ご利用の説明をお聞きになりますか?」

 コトネとは対照的に爽やかな笑みのウワキが不気味なくらいはきはきとした声で言う。


「初めてだけど別にいらないわよ」

「イリーナ様、こういうのは聞いた方がいいと思いますよ」


「はあ? 面倒じゃない?」

「イリイリこういうのは面倒とかそういう問題じゃないと思うよ」

「いえ、俺はイリーナ姫と同意見です」


「せっかちな人たちですね。ではお二人はお先にどうぞ」

「そうするわ」「そうさせてもらいます」

 イリーナとブリギッタはゲートをくぐっていった。


「ごゆっくりお楽しみください。いってらっしゃいませ」

 そんな二人をウワキは笑顔で送り出した。


「あの2人意外と気が合うよね」

「基本、男勝りなところが同じですからね」

「姫が聞いていたら危うい発言ですね」


 ハッとしたテレーザは口を手で押さえてゲートの向こうを見た。イリーナが戻ってくるのではないかと心配したがその気配はなくホッとした、次の瞬間、飛んできたなにかがテレーザのおでこにクリティカルヒットし、テレーザは倒れた。


 ソラソラはテレーザを射抜いた小さな丸い物体を拾った。

「なにこれ?」

「それは木の実ですね。魔物の餌になります」


「魔物のエサ? 魔物って人間を食べるんじゃないの?」

「人間も食べますよ。基本雑食なんですよ」


「へー、そうなんだ、それでなんで木の実がテレテレの頭に?」

「姫の仕業ですよ。さっきのテレーザさんの男勝り発言が気に喰わなくてその辺に落ちてた木の実を発射したのでしょう」

「イリイリの耳良すぎて恐いよ」


「それでは当施設魔物サファリパークの遊び方の説明を始めます」

 ウワキは何事もなかったかのように説明をスタートさせた。


「魔物サファリパークではなんと魔物たちを捕まえることができます。どうやって? と言いますと、こちらのこちらの網を使うことで魔物を捕まえることができるのです」

「あっ、そこはボールじゃないんですね」

「ボール? なんでボール?」


「ボールの中にモンスターを閉じ込める。そういう恐ろしい世界があるんですよ。しかも、ボールに閉じ込められたモンスターは洗脳されるというおまけつきです」

「なにその世界、恐い」

「網で捕まえた魔物は網から発せられる特殊な音波のお陰で私たち人間をご主人様だと思うようになりますので安心してどんどん捕まえて下さい」

 ウワキはニコニコしたまま言う。


「あっ、洗脳云々はこの世界も同じみたいです」

「この網も恐いよ」

「しかし、残念なことに網を投げただけでは魔物は捕まってくれません」


「そりゃそうだね、そんなの全力で抵抗するよ」

「ではどうすれば捕まりやすくなるのでしょう? はい」


 と指名を受けたのはいまだに倒れたままのテレーザ。

「こ、攻撃をして、ま、魔物を弱らせるでしょうか?」

「攻撃を受けて弱っている人が言うと重みが違いますね」


「それもひとつです。他には? はい」

 と今度、指名を受けたのはソラソラ。


「えっ? 他に? うーんと……友好的なふりして近づいて油断させるとか?」

「その通りです。具体的には、こちらの魔物の餌である木の実を与え、魔物が油断したところを捕まえます」

「なんかあくどいね」


「他に意思を投げて怒らせることで捕まえやすくすることもできます」

「えっ? どういうこと?」

「よくわからないんですけど、そういう風になっているんですよ」


「この網と餌と石は入りましてすぐ右手に置いてありますので好きなだけ持って行ってください」

「なるほど、姫はゲートの向こうに置いてあった木の実を投げてきたんですね。投げてきたのが石じゃなくて木の実でよかったですね」

「石だったらテレテレ死んでるよ」

 そのテレーザはなんとか起き上がるもまだふらふらしていた。


「ここまではよろしいでしょうか? それでは次に魔物サファリパーク内のエリアについて説明させていただきます。魔物サファリパークは7つのエリアからなります」

「7つもあるんだ、思った以上に広いんだね」

「そうですね、こうなると予想以上に園長の入れ歯探しが困難になりそうですね」


「せ、せめてエリアがわかればいいんですけどね」

「あっ、テレテレ復活」

 しかし完全復活とは言い難くテレーザの焦点はまだ定まっていなかった。挙句には自分に祈りによる回復魔法を使用し始めた。


「それではエリアの説明を始めます。魔物サファリパークは草原エリア、森林エリア、荒野エリア、砂漠エリア、海岸エリア、雪山エリア、火山エリアの7つに分かれています。各エリアでエリアの特徴にあった様々な魔物を見ることができます」

「パーク内で雪山と火山エリアがあるって凄いね」

 ここでコトネはあることに気が付く


「このエリア分け、オラオーラ大陸のエリア区分と同じですね。それに位置分けもお粗オーラ大陸の北側半分とほぼ同じです」

「へー、そうなんだ。雪山とか火山とかオラオーラ内にもあるんだ」


「ありますよ、色々とおかしい大陸ですからね、オラオーラ」

「この7つのエリア、次のように危険度を区分しています。草原エリア、森林エリアは危険度☆、海岸エリア、荒野エリアは危険度☆☆、砂漠エリア☆☆☆、雪山エリア、火山エリアが☆☆☆☆となっています。危険度4以上のエリアは基本お勧めできません、普段から我々スタッフも近づきません、死にます」

「死にますって、そんなエリア設けないでおこうよ」


 コトネはひとり渋い顔をして呟く。

「まずいですね」


「どうかしましたか? コトネ様」

「姫は間違いなく雪山か火山を選びます」




 一方、その頃、ゲート前、イリーナとブリギッタ。

「イリーナ姫、さっきなにしてたんですか?」

「天誅よ」


「てんちゅう? よくわかりませんが、それよりも見てくださいこれ。どうやらパーク内のマップみたいです」

 ふたりはパーク内のマップの掲示板を見ていた。マップにはウワキの説明通り7つのエリアが示されている。


「なになにこの近辺が草原エリアと森林エリア、それで奥に進めばあるのが荒野エリア、海岸エリア、砂漠エリア。はぁー、つまんないわね。それで砂漠エリアの先が……雪山エリアに火山エリア! いいわね、ここ」

「えーっと、何がですか?」


「何がじゃないわよ、雪山に火山よ。絶対楽しいに決まってるじゃない」

「……すみません、イリーナ姫。俺にはその気持ち全くわかりません」


「なによ、ロマンのわからない奴ね」

「ロマンの問題なんですか?」


「そう、ロマンよ。雪山に火山と聞いて心が躍らないなんてあんた乙女じゃないわね」

「俺が乙女じゃないのは認めますが、乙女は雪山や火山で心躍らないと思いますよ」


「とにかく私は雪山か火山、このどっちかに行くわ。あんたはどうするの?」

「えっ? ふたりで同じところに行くんじゃないですか?」


「はあ? なんであんたと二人で行動しなきゃいけないのよ気持ち悪い」

「そんなに照れなくてもいいじゃないですか、イリーナ姫ったら」

 限界まで顔を緩ませデレデレするブリギッタにイリーナは5メートル距離を置いた。


「あんた目的忘れたの? 私たちはこのパーク内のどっかにあるおっさんの入れ歯を探すために来たのよ。手分けして探した方が早いに決まってるじゃない。それであんたは雪山と火山、どっちにするのよ?」

「なんでその2択なんですか!? 俺はどっちもお断りします」


「本当にロマンのわからない奴ね、じゃあどこにするのよ?」

「そうですね、俺は……海か荒野がいいですね」


「どっちよ?」

「うーん、悩みますね。実は俺海人なんですよ、だからやっぱ海かなとは思うんですけど、でも荒野をひとり歩く姿って、こうなんというか男らしくて格好いいじゃないですか。イリーナ姫はどっちがいいと思いますか?」


「どっちでもいいわよ。こういうのくらいすぱっと決めなさいよ。男らしくないわね。いいわ、私が決めてあげるわ。ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な」

 イリーナは海岸エリアと荒野エリアを交互にトントンと叩き始めた。


「お・か・あ・さ・ま・の・い・う・と・お・り・な・の・な・の・は・げて・る・お・ば・あ・さ・ま く・ち・う・る・さ・い・か・ら・てっ、ぽ・う・うっ・て・バン・バン・バン! はい、あんたは海岸エリアに決定」

「海ですか……というかその歌なんですか?」


「なに言ってるの? 子供の頃からある有名な歌じゃない」

「……俺が知っているのとは少し違ったので」


「そうなの? 地域差ってやつね。それじゃあ私はどれにしようかな…………バンッバンッバンッ、おまけに・ザク・ザク・ザク、と。よしっ、私は火山ね」

 火山に決まって嬉しそうにするイリーナにブリギッタは若干引いた。


「イリーナ姫、本当に火山にするんですか?」

「当たり前じゃない。何か問題でも?」


「……いえ、イリーナ姫がそう言うなら何も言いません」

「そう、じゃあ、また後で」

 イリーナは早くも火山エリアに向けて出発しようと数歩踏み出した。


「イリーナ姫待ってください」

「なによ?」


「コトネ殿たちに我々がどこに行ったか示しといたほうがいいんじゃないでしょうか?」

「……それもそうね」

 イリーナは掲示板の前まで戻ると親指を噛み、親指から出た血で火山エリアと海岸エリアに×と書いた。


「イ、イリーナ姫、なにしているんですか? 痛々しい!!」

「はあー、わかってないわ。そこは口寄せでもするのかと思いましたよ、でしょ?」


「口寄せ?」

「あー、コトネがいないと調子狂うわ。もういいわ、これでわかるでしょ? じゃあ行くわね」

 イリーナは凄い勢いで走り出した。


「うう、イリーナ姫、俺では力不足ですか……」

 対してブリギッタはトボトボと歩き出し海岸エリアへと向かった。




 場面は魔物サファリパーク受付前に戻る。

「姫は火山とか雪山とか自然の驚異をアトラクションくらいにしか思ってません。恐らく雪山や火山ちょっとした遊園地だと思ってます」

「いや、そうはならないでしょう普通」

「いえ、コトネ様の言う通りだと思います。子供の頃……いえ、やっぱりこの話はやめときましょう」


「言いかけてやめるのやめてよ、気になるじゃん」

「あー、あれですね」

「そうです、あれです」

 コトネとテレーザは目を合わせ深いため息を吐いた。


「なにその感じ? 気になるじゃん」

「申し訳ありませんソラソラ様、このことは記憶の奥底に封印しておきたいのです」

「そっとしておいてあげといてください」


「テレテレが言い出したんじゃん。でも、コトコトさっきまずいって言ったけどイリイリなら何も問題ないんじゃない? イリイリなら危険度☆☆☆☆の魔物でもいちころでしょ?」

「いえ、まずいと言ったのはそういう意味じゃなくて、テンションが上がりすぎた姫がなんやかんやするのではないかという心配からの『まずい』です」


「その『まずい』は予想できなかったよ」

「そもそも入れ歯泥棒さんも雪山エリアや火山エリアになんか踏み入れてない可能性が高いですよね? イリーナ様がどちらかのエリアに行くのは無駄足なのではありませんか?」


「それもそうだね。今からなら急いで行けばイリイリに追いつけるかもよ」

「そうですね。急ぎましょう。ウワキさん、説明は以上ですか?」


 ニコニコしたまま黙ってコトネたちのやり取りを聞いていたウワキは機械的に口を開く。

「最後に当施設の利用時間になりますが、当施設では時間制ではなく歩数制となります」

「歩数制? なんか珍しい方式だね」

「これは初代準拠ですね」

「初代ってなんの初代ですか?」


「恐い世界のです。それで何歩までですか?」

「5万歩となります。5万歩歩きますとワープ魔法でここに戻ります。5万歩いかずに途中でやめたい場合はその場で大きめの声で終了を告げてください。こちらの超広範囲マイクが必ず声を拾い、こちらにワープさせます。説明は以上になります。それでは、魔物サファリパークをごゆっくりお楽しみください。いってらっしゃいませ」

 ウワキに笑顔で見送られコトネたちもイリーナたちからやや遅れて魔物サファリパークに入場した。


 ゲートを抜けてすぐは草原が広がっており、一目で草原エリアだとわかる。少し奥の方には森が見え、森林エリアも視認できた。しかし、他の5つのエリアはゲート前から確認できなかった。


「5万歩なら特に終了は気にしなくてよさそうだね」

「大丈夫だと思いたいですが、5万歩以内に入れ歯を見つけなければまた5万オラ払わなきゃですからね。計画的にいきましょう」

「コトネ様、ソラソラ様、こちらを見てください」

 テレーザはパーク内マップの掲示板の×印に気が付きふたりを呼んだ。


「海岸エリアと火山エリアに赤ペンで×と書かれています」

「……これ赤ペンじゃなくて血ですね」

「ひっ」

 赤い×に触れようとしていたテレーザは短い悲鳴を上げ手を引っ込めた。


「なんで血?」

「大方、書くものがなくて面倒だから血で済ましたのでしょう」

「ワイルドすぎだよ」


「赤い×が2つこれはどういう意味でしょうか?」

「印が2つなら姫とブリギッタさんがそれぞれ行ったところを書き残していったのだと思います」

 コトネは即答した。しかし、ソラソラの考えは違った。


「えー、でも×だよ? ×ならここには行かないっていう風にも見えるよ」

 ソラソラの意見にコトネもテレーザも確かにと思った。


「……言われてみれば確かにそうですね」

「残りのエリアの数も丁度5で、わたくしたちの数と同じですよ」

「あっ、本当だ。じゃあ残ってる方に何か印があるかもよ」

 3人は残された5つのエリアの方になにか印がないかとまじまじと掲示板を見た。そして、印に見えなくもない物を見つける。


「……荒野エリアと雪山エリアに穴が空いてる」

 ソラソラが見つけたのは直径1cmほどの小さな穴だ。


「……これは印とは違うのでは?」

「でもイリイリがこっちーって指さしたらこんな風に穴空くんじゃない?」

 ソラソラの指で穴を空けたという予想は正しかった。


「確かにありえますね」「なるほど」

 コトネとテレーザもソラソラの言うイリーナの姿を容易に想像できた。


「そう考えればふたりが向かったのは雪山と荒野になりますね」

「どちらが正解なのでしょう?」

 3人はうーんと声を揃えて唸った。


「でも行かないエリアに穴空けることってある? 穴があるってことは指差ししたってことでしょ?」

「言われてみれば、その通りかなと思います」

 テレーザがソラソラの意見にテレーザが同意したことにより3人の考えはまとまった。


「では二人が向かったのは雪山と荒野、そう仮定して動きましょう。私は姫を追って雪山エリアに向かいます。お二人はこの草原エリアと森林エリアを探してから海岸エリアに向かってください」

「「ラジャー」」

 ソラソラとテレーザは敬礼した。


「私も姫を捕まえたら海岸エリアに向かいます。経過報告もかねて海岸エリアで落ち合いましょう」

「「ラジャー」」


「でもコトネ様、それではブリギッタ様と合流できませんがどうするのですか?」

「……まあ、正直ブリギッタさんとは別に合流できなくてもよいかなと」

「正直だね」


「別にブリギッタさんを見捨てたとかではなく、ブリぎっつぁんならしっかりと与えられた自分のエリアで仕事をしてくれるという判断です。しかし。考えてみればブリギッタさんだけ合流してなかったと知ったら後々面倒くさそうですね。申し訳ありませんがどちらかが荒野エリアでブリギッタさんを拾ってから来てくれませんか?」

「「ラジャー」」

 ふたりはさっきよりも息の合った敬礼を見せた。


「それでテレテレ、どっちがリギリギと一旦合流する?」

「そうですね、どういたしましょう?」

 ふたりは顔を見合わせたままそれっきり会話をやめた。


「ブリギッタさんってそんなに嫌われているんですか?」

 コトネの一言にソラソラとテレーザは慌てて首を横に振った。


「そういうわけじゃないよ。そういうわけじゃないけど…………時々ね、本当に時々だよ夜寝てるときとか、着替えてるときとか、お風呂上りとか……リギリギの目がシャレにならないくらいやらしい目してるんだよね」

 一見コトネの目にもソラソラが変質者に怯える子供に見えた。しかし、コトネはそれは間違いだとわかる。

「2度とそんな目できないようにしてやろうかと思う」

 と、ボソッと言ったのが聞こえたから。


「わたくしはブリギッタ様のことを嫌いではありませんが……ブリギッタ様に嫌われているという自覚はあります。でも、それがなぜなのかがわかりません」

 落ち込むテレーザの背後でテレーザの手下の霊たちが荒ぶるのが霊感が強いわけではないコトネにもわかった。


 ブリギッタがイリーナにもウザがられてるのはコトネはよく理解している。改めてブリギッタっがイリーナの手びよってパーティから追放されるかもと、とコトネは思った。

「わ、わかりました。やはり無理にブリギッタさんは拾わなくていいですよ」


「いやいや、そこまで嫌ってるわけじゃないからね。ただふたりっきりになったら我慢できるかどうかってだけで」

「わたくしもふたりっきりが気まずいというだけで嫌というわけではありません」


 それを嫌っているというのではなかろうか! と思うがコトネは口には出さなかった、

「それでしたらおふいたりでブリギッタさんと合流するのはどうでしょうか」


「うん、それなら」「それでしたら」

 と二人とも同意してから目を合わせ、呼吸を合わせ


「「ラジャー」」

 と敬礼した。

 このふたりは仲良さそうで良かったとコトネはしみじみ感じた。


「それでは速やかに行動に移してください」

「「ラジャー」」

 コトネの見事な指揮の下、部隊は動き出そうとした。しかし、愚かな部下が待ったをかけた。


「隊長!」

「どうした、ソラソラ一等兵!」

「一等兵だったのですか?」


「ここまで来てなんですが、この広いパークで入れ歯を見つけられる気がしません」

 ソラソラはあまりにも今更なことを述べた。


「確かにそうですが、なんとかするしかありませんよ。わたくしは祈『神のご加護』で運気を上げてみますが、あまり期待しないでください」

「そんな魔法あるんだ。コトコトのポーチの軟化にもなんか使えそうな道具入ってないの?」

「そうですね、『ダウジング×ダウジング・レボリューション』というアイテムを見つける道具はあるのですが、果たして入れ歯をアイテムと判断するかどうか……」


「そっか、そうだよね。入れ歯を探すのを想定した道具なんてないよね」

 イリーナのその言葉にコトネはハッとして、ポーチをまさぐり始めた。


「完全に忘れていました。あの道具の存在を」

 異次元ポーチの中から目当ての物をようやく見つけたコトネはその道具を高々と掲げた。


「王家秘密道具:入れ歯レーダー」

 ソラソラとテレーザはあんぐりした。


「いやいや、その道具はピンポイントすぎるよ」

「どのような経緯でそのような道具が造られたのでしょうか?」


「これは悪戯好きの孫に毎夜のように入れ歯を隠されたことに悩んだ数代前の王が造り上げた道具です。使うことは最早ないと完全に存在を忘れていました」

「それはそのお孫さんに感謝ですね」

「お孫さんも入れ歯を隠してたことが感謝される日が訪れるなんて思ってなかっただろうね」


「このレーダーは残念ながら1台しかないのでおふたりにお渡ししときます」

 コトネはソラソラとテレーザの顔を確認するように見てからテレーザに渡した。


「使い方を説明します。画面をご覧ください」

 入れ歯レーダーはコンパスのような円形である。背景が緑色の画面には碁盤の目のように白い線が引かれている。そして真ん中には白い点。


「真ん中の白い点がこのレーダーです。入れ歯レーダーは半径500メートル以内に入れ歯がある場合この画面に赤い点で表示されます」

「へー、凄い便利だね」


「それだけではありません、上のボタンを押してみてください」

 テレーザがボタンを押すと画面上に球体が表示された。球の中心にはやはり白い点。


「実はこの入れ歯レーダー二機目です。一機目は先ほどの画面しかなかったのですが、広さだけでなく高低差もあるお城で入れ歯を隠されたら平面では対応できないと気が付き100メートルではありますが高さもわかるように改良されました」

「王様の苦労が伝わりますね」

 テレーザは苦笑いした。


「おふたりはこれを使って草原エリア、森林エリア、荒野エリア、海岸エリアの順に探してください」

「「ラジャー」」

「では、幸運を祈ります」

 ふたりの敬礼に敬礼で返すとコトネはすぐさま振り返り歩数を気にしてかホップステップジャンプの要領で雪山エリアを目指した。


「ソラソラたちも行こっか」

 ソラソラとテレーザも入れ歯レーダーを見ながら草原エリアを歩き始めた。

 入れ歯探しスタート。


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