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11.キノコだらけのタケノコな里

 イリーナ一行は、隠れ魔女の村で一泊し翌朝旅立った。ソラソラの見送りに村人がほぼ全員が来ていたのだが、なにやら別れを惜しむわけでもなく、魔王討伐の声援を送るわけでもなく、村から去ることを喜んでいるように見えるのがイリーナとコトネは気になったが特に追及はしなかった。


 次の目的地はドミドミの助言により隠れ魔女の村から北に位置するタケノコの山にあるタケノコな里に決まった。話によると里で何か異変が起きているらしく、その原因は六天王の一角の能力のせいらしい。


 タケノコの山に入るなりサル型モンスター:モンキッキーの群れが現れた。

「姫、ソラソラさんよろしくお願いします」

 非戦闘員のコトネは素早く戦闘から離脱。

「仕方ないわねー、いくわよソラソラ」

「任せてー」


 イリーナの木刀による攻撃モンキッキーAに897のダメージ。モンキッキーAを倒した。

 ソラソラの魔法ステッキによる攻撃モンキッキーBに12のダメージ。

 

 モンキッキーC、D、Eは仲間を呼んだ。モンキッキーF、G、Hが助けに来た。


 イリーナの木刀による攻撃。モンキッキーCに878のダメージ。モンキッキーCを倒した。

 ソラソラの魔法ステッキによる攻撃。モンキッキーBに11のダメージ。


 2ターンを終えてイリーナは当然の疑問を抱いた。

――こいつ、なんで殴ってるの?

 イリーナはソラソラを見た。ソラソラはニコッと笑みで応えた。その瞬間イリーナはぶち切れた。


「ちょっと、あんたなんなのよ? なんでそんなおもちゃで殴ってんのよ? カスみたいなダメージしか与えれれてないじゃない! 自称魔法少女ならさっさと魔法使いなさいよ!」

 それでもソラソラはてへっと笑うだけであった。イリーナの攻撃の矛先がソラソラに向かおうとしたその前にコトネから待てが掛かった。


「姫、村を発つ前にドミドミさんからソラソラさんの取説を頂きました」

「略してんじゃないわよ、腹立つわね。それでなんて書いているの?」


「はい、ソラソラは年齢を維持する魔法を使ってるか、元々馬鹿なのか、別の理由があるのかわかりませんがソラソラは一般魔法を使えません。使えるのは全てオリジナル魔法です。そのオリジナル魔法も基本一回使ってわ忘れてしまいます。その上、魔法が閃くのはソラソラの気分が上々の時だけなので、どうかサルのようにおだてて木に登らせてください。ドミドミより。だ、そうです」

 イリーナは少しか考えてから再びソラソラを見た。ソラソラも再びてへっと茶目っ気たっぷりに笑った。


「要するに役立たずじゃない!」

 役立たずと評されたソラソラは頬をぷくっと膨らませ可愛らしく怒ったその行為はイリーナの苛立ちを助長させた。


「姫、ダメですよ。そんな風に言ったらますます機嫌を損ねてますます役立たずになってしまいますよ」


――そういうのも含めて役立たずって言ってるのよ!

 イリーナは仕方なくソラソラの機嫌を取り、猿を木に登らせ猿退治させよう思いソラソラを見たが、ソラソラは人を小馬鹿にする猿のようにニヤニヤ笑っていた。


「死にさらせや、この猿どもが!」

 イリーナの必殺技嵐の刃。

 木刀を高速で振るい多数の風の刃を発声させ敵全体にダメージを与える必殺技である。

 敵全体とついでにソラソラに攻撃。敵全員に1200のダメージ。イリーナは全ての敵を倒した。力尽きたソラソラは棺桶化した。


「全ての敵を倒したじゃないですよ。ソラソラさんを敵と認識しないでくださいよ」

 コトネは棺桶になったソラソラに蘇生魔法フェニックスを唱えた。ソラソラは生き返った。


「次はなしですよ」

 棺桶からがばっと起き上がったソラソラはキョロキョロと周囲を見渡し状況を確認する。

「えっ? ちょっと待って? 今あたし死んでなかった?」

 棺桶から復活したソラソラは魔法賞ではなく20歳の女という素の状態に戻って呟く。


「ごめーん、間違って攻撃しちゃった」

 今度はイリーナがてへっと笑った。そして、今度はソラソラが怒りのままにイリーナに攻撃を仕掛けた。

「これでも喰らえメテオボマー」


 ソラソラの炎魔法、メテオボマー。

 宇宙から燃え盛る隕石を敵全体に降り注ぐ炎魔法である。因みに対象一体に隕石ひとつを落とすメテオボムは一般魔法だがメテオボマーはソラソラのオリジナル魔法である。

 多数の隕石がイリーナに降り注いだ。しかし、その全てがイリーナによって宇宙へと打ち返された。


「あんたね、この魔法を敵に使いなさいよ!」

「いーーーっ、だ」

 再び争う二人を見てコトネは呆れたようにため息を吐いた。


「ソラソラさん、わかったでしょ? 姫も短気です、平気で攻撃しますよ。これに懲りたら姫をあまり怒らせないでください。姫もソラソラさんをうまくコントロールしてください」


「だって!」「こいつが!」

 この辺の息はぴったりだ。


「とにかく、今回は特別に蘇生してあげましたが、次からはなしですよ」

「そうだ。今あたし死んだよね? 完全に死んだよね?」


「完全ではないです。今のは仮死状態ってやつです。仮死状態になれば棺桶化します」

「いや、棺桶化ってなによ。というかこれどこから出てきたのよ」

 イリーナは残された棺桶をコンコンと叩く。 


「魔法のある世界なんですからそういうの気にしてはダメですよ。それでもあえて言うなら、最期くらいは箱の中でゆっくり眠りたいという人間の儚い願いから出てくるのです」

「全然説明になってないわよ」


「棺桶化した場合1日以内に教会で神父に蘇生してもらうか、今みたいに魔法や薬で蘇生しない限り本死を迎えますので気を付けてください」

「じゃあ、棺桶化はセーフってことね。なるほど、うざいなと思ったら棺桶化すればいいのか」

「気軽に殺人予告しないで!」


「だったら次からはちゃんと魔法を使いなさいよ。さっきの魔法でいいから」

「さっきの魔法? ……忘れちゃった。てへっ」

 ソラソラが可愛らしく笑った瞬間にイリーナの右ストレートが炸裂。ソラソラは瀕死状態になった。


「次死んでも生き返らせませんよ。それと棺桶化した場合運ぶの結構面倒ですからね」

 コトネの言葉を受けイリーナはソラソラのとどめを刺すのをやめる代わりに微笑みかけた。しかし、目は笑っていなかった。


「次からは頑張るのよソラソラ。じゃあ、気を取り直していきましょう」

「お、おー」

 瀕死状態のソラソラは精一杯の返事をして魔法のステッキを単なる杖のように地につけながらヨロヨロイリーナとコトネにとついていくのであった。


「それにしても、ここってタケノコの山なのよね? コトネ」

「はい、そのはずです」


「その割には……」

 イリーナは辺りを見渡した。どこにもタケノコはなくキノコばかりが生えていた。


「タケノコがあるからタケノコ山ではなく、遠くから見れば山がタケノコに見えるからタケノコ山なのでは?」


「そういうのもあるわね。その辺についてあんたは何か知らないの?」

 イリーナはソラソラに問いかけたつもりであったが、返事がない、ただの瀕死状態の魔法少女のようだ。


「まあ、いっか」

 一行はタケノコな里に歩を進めた。


 現れるモンスターをイリーナがちぎっては投げ、ちぎっては投げ、そしてソラソラはふらふらとモンスターに近寄ってはポコポコと殴り、コトネはただ応援するを繰り返し二時間ほど過ぎたころ。とうとうイリーナ一行はタケノコな里に到着した。

 しかし、そこには予想にもしなかった光景が広がっていた。 


「えーっと、私はタケノコの山のタケノコな里に向かってたはずなんだけど、これはどういうこと?」

 イリーナたちの視界に広がるのはキノコ型の家にキノコ型の木、キノコ畑、そしてとどめと言わんばかりにキノコの帽子を被った人々であった。


「これじゃあキノコの里だね」

「もっと言えばキノコ王国ですね。あそこを見てくださいキノコ城がありますよ」

 コトネの言う通り里の奥には一つの茎から三つの頭が生えたようなキノコ型のお城があった。


「本当にここであってるの?」

「そのはずなんですけどね」

 里の入り口で困惑するイリーナたちにせっせとキノコ狩りしていたキノコの帽子を被ったおじさんが気付くとわざとらしいほど驚いた反応をしてから小走りで駆け寄ってきた。

「ようこそタケノコな里へ」


 3人は顔を見合わせひそひそと話す。

「タケノコな里って言ったわね」

「言ったね」

「言いましたね」


 キノコのおじさんは3人の顔をじろじろと見まわし悩んだ末にコトネの方に向き直して驚く素振りを見せた。

「ややっ、もしかしてあなたは勇者様では?」


「いえ、違います」

 コトネは真顔で即否定し、すすっとイリーナの背後に隠れ、


「こちらが勇者代行の姫イリーナです」

 と紹介した。


「そしてあたしは魔法少女ソラソラだよ」

 キノコのおじさんはソラソラを無視して今度はイリーナの正面に素早く移動した。


「これは失礼しました。では……ややっ、もしかしてあなたは勇者代行のイリーナ姫では」

 キノコのおじさんはさっきと全く同じテンションでやり切った。


「……そうだけど」

「ようこそおいでくださいました、イリーナ姫よ。実は今、タケノコな里では大変なことが起きているのです。どうかイリーナ姫のお力で里を救っていただきたいのです」


「急な展開ね、それでその大変なことって何よ」

「詳しくはあちらに見えますタケノコ城の主であり里長のタケゾウよりお話いたします」

 キノコのおじさんが指すあちらには例のお城しかなかった。


「おかしいなー、私にはあちらにはキノコ城しか見えないんですけど」

「何をおっしゃいますかあるではないですか。私は先にこのことをタケゾウ殿にお話ししとくため走ってお城に戻ります。イリーナ姫たちはゆっくりとお城に来てください。では、失礼します」

 キノコのおじさんはそう言うや否や颯爽と走って行ってしまった。


 キノコのおじさんが遠く離れていくのを見届けてからイリーナはうんうんと頷く。

「残念ながら私にはタケノコ城とやらが見えないし適当に宿でも取って休みましょうか」

「何言ってるんですか、姫。キノコ城にしか見えないあれがタケノコ城ですよ。早くいきましょう」


「えー、あたしも疲れたしイリイリの意見に賛成。宿で休もうよー」

「ちょっと待て、イリイリって私のこと?」


「そうだよ、そう呼ぶことにしたの」

――呼び方すらうざいなー

 とイリーナは思ったが面倒になりそうなので口には出さなかった。


「宿で休むには早すぎます。いきますよ二人とも」

「コトコトは真面目だなー」


「コトコト? 私のことですか?」

「そうだよ」

 内心コトネはとても気に入ったがイリーナにバカにされそうなので決して口には出さないことを決めた。


「いいから、いきますよ!」

 3人はキノコの家の間の道を通ってタケノコ城を目指した。里にいるものはやはり子供から老人に至るまで皆キノコの帽子を被っていた。よく見ると頭だけではない。靴もキノコモデルだし、服もキノコ柄であった。


 里の人々はイリーナたちに気が付くと

「見ろ、噂の勇者代行様だ」

「お待ちしていました勇者代行様」

「どうか我々に掛けられている呪いを解いてください」

 と口々に言った。


 ――呪い? もしかしてこの里の呪いって……

 イリーナの中で一つの答えが導き出される。同様に答えを導き出したコトネと目が合い、二人は頷いた。


「姫、話が見えてきましたね」

「ええ、しかし恐ろしい呪いね。考えただけでぞっとするわね」


「はい、こんな恐ろしい呪いがあったんですね」

「どんな呪いなの?」

 ひとり呪いの予想がつかないソラソラが尋ねた。


「あらゆるものがキノコになってしまう呪いです」「キノコが大好きになってしまう呪いよ」

 二人は自信満々に答えてから互いに「えっ」と声を出して見合った。


「正解はどっちなの?」

「どっちって……コトネはなんて言ったの?」

「私はあらゆるものがキノコになってしまう呪いと言いました。姫は?」


「私は……その……」

 頬を赤く染めるイリーナの声は小さくコトネには聞き取れなかった。


「はい? なんですか? よく聞こえません」

「もう、なんでもいいじゃない、早くお城にいきましょう」


「イリイリはねキノコが大好……」

「あーあー、あそこにキノコアイスクリーム売ってる! 美味しそう、ソラソラも食べたいでしょ」

 イリーナがソラソラの声をかき消すように大声で叫んだ。


「食べたーい」

「でしょでしょ? 今回は特別に姫の奢りだぞ」

「わーい」

 と二人で駆け出して行った。残されたコトネは


「キノコが大好きになる呪い……それのどこが恐ろしい呪いなのでしょう」

 と呟いてから二人のあとを追うのであった。


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