いざ、リーザス湖へ。
フェリーから出ると、少しばかり暖かい風がスタンダスタ達の体を通り抜ける。ここがサスラダバータ・・・
「ちょっと風が強いわね、、、」
リオは、風でなびく髪を手で押さえている。
「何処かに入ろうか、風強いし、、、」
リオを気遣い、スタンダスタは風をしのげる場所が無いか辺りを見渡す。
「お!あれ!レストランじゃないか!?夕飯にはちょっと早いけど、あそこで飯食おうぜ!!海鮮食おうぜ、海鮮!!」
ガルが指差す方向には、オレンジ色の建物がひとつある。レストランだと言う確証は何一つ無かったのだが、迷うことなくガルはその建物へと走っていった。向かい風にも負けぬ勢いで。
「あ、ガル!!待ってよ~!もう、どっからあの元気が出てくるのやら・・・」
「ホントに、、、」
夕方の食事にあまり乗り気ではなかったリオとスタンダスタだったが、潮の香りも漂う強い風をなんとかしたかった為、ガルの後を追って遠くに見えるオレンジの建物へと向かうことにした。
建物に近づくと、看板があることに気づいた。そして気づくと同時に、余りにも強い向かい風に、ガルは走るのを止めていた。
「ん?何々・・・「レストラン」レストランって名前のレストランなのか!?」
風の強さよりも、名前の斬新さにガルは驚いた。
「ガルー!何て書いてあったのー?」
「間違いねぇ、誰がなんと言おうとレストランだ!先入ってるから、早く来いよー!」
ガルは遠くから聞こえたスタンダスタの質問に答えた後、一人建物の中へと入っていった。
「りょーかーい!ってガル、もう中入っちゃったよ。・・・じゃ、僕らも急ごっか!」
「え、あ、そうね。」
ガルが建物の中に入ったことを確認したリオとスタンダスタは、急ぎ足で建物の中へと入っていった。
建物の中に入ると、開放的な空間の中にポツリとテーブル席が1つだけある。その席にはすでにガルが座っていた。
「おーい!スタン!リオ!こっちこっち」
ガルが手招きをする
「ここ、ホントにレストランなのかしら?」
不思議な空間に、リオは少し疑問を感じたが一先ず、ガルが座るテーブルへと向かった。
スタンダスタとリオが席に座ると、ガルが口を開く
「お前ら・・・何か思うこと無いか?」
「・・・あたしも、思ったわ」
「・・・この店、トイレの場所が分かんないよね!!」
「「違ーう!!」」
スタンダスタの的外れな一言に、思わず二人は口を合わせ、ツッコミをかました。
「スタン、もっと気づく事あるでしょ!こんな広い部屋にテーブルが1つしかないって、どう考えたって不気味よ!」
「それにだ、こんなに目立つ所にあるってのに、お客さんが一人もいねぇ。ホント大丈夫かよ、この店、、、」
「確かに、、、」
3人が雑談をしていると、奥から一人の男が料理を持ってやってきた。
「お待たせ致しました。ヒラメのムニエルと、生牡蠣の盛り合わせでございます。
「ちょっと?あたしたちまだ頼んでいないんだけども?」
覚えのない料理が来たことに、リオは威圧的な態度で男に話しかける。
「あ、ごめん。これ、俺が頼んだやつ!牡蠣食いたかったんだよね~!」
「あら、そう。だったら言いなさいよね!・・・店員さん、ごめんなさい。」
頼んだがいいが、なぜ牡蠣と一緒にムニエルを?と、可笑しな注文の仕方に首を傾げながらも、リオは自分の取り皿にムニエルを取り移した。
「いただきます、、、あら、おいしい」
「え、ホントに!?じゃボクも、、、あ、おいしいね!!」
スタンダスタとリオは、ムニエルの美味しさに、少し感動していた。
「おい!この牡蠣もマジで旨いぞー!!」
「いや、あたしは結構よ。生ものはあまり好きじゃないの。」
「ボクも遠慮しとく、、、ガル、全部食べなよ」
「なんだよ、旨いのに・・・」
なんだか少しだけ、ガルは寂しい気持ちになった。
食べている内に、店に入ったときに抱いていた疑問などすっかり忘れ、その後三人は、あらゆる海鮮料理を堪能した。ちなみにガルは、ムキになったのか殆ど生牡蠣を食していた。
時間も忘れ、気づいたら店に入ってから三時間以上経っていた。
「いやぁー食った食った!!・・・そろそろ出るか?」
「そうね、お腹も一杯だしそろそろホテルも探さないとね」
「それじゃ、ボクお会計してくるよ。」
スタンダスタは一人立ち上がり、入り口に居る男にお会計の旨を伝えた。
「すいません、お会計お願いします。」
「ありがとうございます。5000ベルでございます。」
「え?3人で?安いですね。・・・じゃ、丁度で。」
「確かに、丁度ですね。ありがとうございました、、、スタンダスタ様」
「いやいやこちらこそ!」
スタンダスタは、お会計を済ませ再びガル達の元へと戻・・・ろうとした。
「ちょっと!今なんと?」
スタンダスタは再び男に話しかける。
「ん?ありがとうございましたと。」
「違うよ!!何でボクの名前を知ってるの!?何処かでお会いしましたか?」
「覚えてございませんでしょうか、それならそれでも良いでしょう。あなたとは、きっと何処かでまた会うことでしょう。」
男はそう言い残し、店の奥へと消えていった。
「誰だったんだ?、、、全然分かんないや」
「おーい!スタン!もう行くぞー!」
スタンダスタが会計をしてる間に、ガルとリオは帰る準備を済ませ、すでに出入り口の前まで向かっていた。
「ちょ、待ってよー!」
何度おいてけぼりにされたことか、もう数えきれない位だ。それでもめげない男、スタンダスタはテーブルの横に置いてあったリオの荷物一式と一緒に、店を後にした。リオ・・・わざとじゃないよね?・・・とてもじゃないが、本人には聞けなかった。
スタンダスタが外に出ると、目の前でガルがうずくまっていた。
「ちょっと?ガル?どうしたのよ!」
「急に腹が、、、」
リオは、ガルの背中をさすっている。見るからに苦しんでいるガルを目の前に
、ただ事ではないと察したスタンダスタはガルを抱え上げた。
「スタン!どこに連れていくのよ!」
「病院に決まってるじゃないか!港の近くに病院あったから、そこに連れてくんだよ」
「・・・分かったわ。荷物はあたしが何とかするから、早く行きなさい」
「ありがと、お願いね。」
3人の荷物をリオに託し、ガルを抱えたスタンダスタは港側へと走っていった。
「ガル!大丈夫!?もうすぐ病院着くから、頑張って!」
「おぉ、、、」
ガルは受け答えするのが精一杯で、それ以上は病院に着くまで二人の会話は無かった。
病院に着くと、スタンダスタは一目散に受付へと向かった。
「すいません!親友が急に体調を悪くしまして、、、早く、、、早く!」
「落ち着いてください。今すぐ診察致しますので、そばに付き添ってあげてください。」
数秒後、奥からナースと見た目年齢60才越えのドクターが担架を持ってやって来た。
「私がドクターの「ジム・マルボロ」です。まずは、彼をこれに乗せましょう。君も手伝ってくれるかい?」
「もちろんです!」
スタンダスタは抱えたガルを担架の上に乗せドクター先導の元、ガルを診察室まで運んだ。
運び終えると、ドクターはナースに指示を出し始めた。ドクターがデスクに着くと、スタンダスタに質問を投げ掛けた。
「本人が苦しそうだから、君にいろいろ聞くとしようか。まず、この症状が出る前は何をしていたんだい?」
「えーと、近くのレストランでご飯を食べてました。」
「近く?それは街の方かね?」
「街と言いますか、ここから5分もしない所にレストランがありましたので、そこで。」
「はて?そんな所に食事処があったかねー?・・・まぁいいか。食事ね。もしかして、魚食べたかい?」
「えぇ、ボク含めガルも海鮮料理を食べました。ガルは生牡蠣ばかり食べてましたね。」
「生牡蠣ね、なるほど・・・見当は付いた。あとは、血液検査でより詳しい事を調べよう。」
しばらく待つと、ナースが血液検査の検査結果を持ってやって来た。
「はい、ありがとう。うーん、どれどれ・・・」
「どうでしたか?」
「うん、間違いないね。簡単に言うと、食中毒。生牡蠣に当たったんだね。」
「食中毒・・・じゃあ、すぐ治るんですか?」
「・・・いや、ちょっと待ってくれ。」
ドクターが急に言葉を止めた。そして、腕を組み始めた。
「・・・困ったなぁ」
ドクターが放った一言に、スタンダスタは一気に不安が募った。
「実はね、食中毒の原因が「ビブリオ・バルニフィカス」といって、生ものを食べた人によく見られる細菌の一種で、こいつの怖いところは、体の至るところを壊死させてしまう恐ろしい細菌なんだよ。」
「それなら、早く薬を!」
「どこかの国には、テトラサイクリンという抗生物質があって、それを投与すればすぐ治るんだけどね。ここにはそんな薬はないんだよ。ただ・・・」
「ただ?」
「港街を越えた所に、リーザス湖という湖があって、その周辺に咲く「リーザス草」という薬草が、昔から食中毒の症状を治すと言われているんだよ。それが、港街に住む人たちの昔からの知恵なんだよ」
「わかりました、ではそれを取りに行けば良いんですね?」
「あぁ。でも、湖の周りには凶暴なモンスターが彷徨いておる。それに、ビブリオ・バルニフィカスは症状の進行速度が恐ろしく早い。だから、なるべく早く処方しなければ、彼が危なくなるかもしれない。そうだな、三時間が目処だな」
「今すぐ取りに行きます」
「頼んだよ、こちらは任せておきなさい。それよりも、君の方こそ気を付けなさい。」
「ありがとうございます。では、ガルをよろしくお願いします」
ガルを病院に残し、スタンダスタは急いでリーザス湖へと向かった。
リーザス湖へ向かう道すがら、病院へと向かっていたであろうリオとすれ違った。
「あ、スタン!ガルはどうだったの?荷物は・・・・」
走るスタンダスタは、立ち止まることを止めなかった。説明する暇も無かったからだ。
「ちょっとどこ行くのよ!!・・・もう!」
何が起こっていたのか、何も分からないリオではあったが、走るスタンダスタが手招きをしているのを見て、とりあえず付いてくべきだと思い、スタンダスタの後を追うためリオも走り始めた。




