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なげやりクリティカル  作者: さと丸


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92/113

92.miyucoルート②



 「あ、あの……」


「ん?」



 モジモジ……モジモジ……


 

(おいおい……もうこんな可愛いなら俺の妹になってくれ……)


 

 その……。



[実はルルーラは私が作ったサイトなんです]

[ごめんなさいっ。何でもありません。行きましょう]



「えっと……」


「うん?」


「さと寸さんのチャンネルバナーって誰が描いたんですか?」


「あ、あれ? あれは……」



(ぎぇーっ!! な、何言ってんのよ私っ!? なんでなんで!? 今全然そんな事聞くタイミングじゃないじゃないのっ! バカなの!? ねえ!? どうかしちゃったの私!?)



「あれはその……まあ知り合いというか……すごく絵の上手い人がいて、前にその人の絵を見た時に、これだ! ってピンときてさ。初めはお願いしても断られてたんだけど、最終的には描いてくれてさ。すごくない? あの絵。俺的には美少女ゲームのチャンネルにすごくピッタリな絵だと思うんだよね」


「確かにあの絵すごいですよね! 何というか繊細で綺麗な色彩で透明感もあって、美少女達一人ひとりが本当に可愛くて……。しかも画風や線使いにもオリジナリティも感じられて、私も見た時はあのクオリティに本当にみとれちゃいましたっ」


「うん。すごいよね。だからあの絵に負けないようにもっと頑張らなきゃなって思うよ」



(もう〜っ!! 何言ってんの私!? しかもライバルなのにホメちゃって、私、本当どうかしちゃったの? でもまだ夢さんが描いたって決まった訳じゃないけど……でも、もしあの人ならもっと慎重にならなきゃ。でも確かにあの絵はすごいわ……それは否定できないわ。でもさと寸さん、誰が描いたのか少しはぐらかしている感じがしたわ。でもそれはそうよね……。私は夢さんを知らないことになってるし、さと寸さんにしたら私の知らない人をわざわざ説明する事はしないわよね……この前見つけた時は追跡までしてある意味ストーカー状態だったから、こっちから聞くわけにもいかないし……う〜ん。困ったわ……)



「うん? どうしたの? 大丈夫?」


「あっ、いえ。その……で、でも……充分さと寸さんのチャンネルはすごいですから……。私もちゃっかり……あの、ファンですから」


「ありがとう。もっと楽しい動画が作れるように頑張るよ。……あ、美優ちゃん、あそこ」



 悟が指差した先はパソコンショップだ。

悟はここで配信用機材のマイクを新調しようとしていた。



「ここ……私も一度来た事ありますっ」


「配信に使ってるマイクがイマイチでさ、動画のクオリティを上げたいから思い切ってマイクを新調しようかと思ってね。今のところ目星はつけてないんだけど」


「はいっ。お付き合いしますっ」



(……付き合うって……意味は違えど女の子に言われたの初めてだな……もし美優ちゃんと付き合ったら、好きな事も似てるし色々共通点もあるし楽しいかもな、うん。…………って、おい! バカか! 妄想だとしても俺は一体何考えてんだ!! 意味わかんねーぞ! 俺は夢一筋どころか初めから夢なんだよっ! 現実でのルートはひとつなんだよっ! このバカ野郎っ!)



「どうかしました?」


「いや……何でもないっ。入ろうか」



 2人は店内のパソコンのゲーム配信用機材の商品があるフロアにたどり着いた。

 


「うわ〜っ。すごい……」



 ゲーム動画を録画、配信する為の機材からモニター、ヘッドホンにマイク、デスクまわりのアクセサリー品等、アイテムが充実したコーナーには実際にゲームプレイ用の椅子に座って最新の環境でプレイできるブースがあり、美優はそれに釘付けになっていた。ブースに入ると、色々な目新しい物に興味津々で一つひとつ食い入るように見つめている。


 夢中になっているうちに、いつの間にか緊張もほぐれ、活き活きした年頃の女の子になっていた。



「すごいですね……。こんな感じでゲーム出来たら、私何時間もやってしまいますっ。さと寸さんもこんな感じでゲームをして、動画を作ってるんですか?」



「いやいや、さすがにここまでじゃないよ。俺は美少女ゲームでガヤガヤ話しながらやってるだけだから、こんなハイスペックな環境は無くて大丈夫だし。まあでも、こんなハイスペックな環境あったらいいよね。……せっかくだから、ちょっと座ってみようかな」


「はいっ。じゃあ私、写真撮っていいですか? さと寸さんに送ります」


「あ、ああ。ありがとう」



(やったわ! さと寸さんに送ってあげる口実で写真ゲットだわっ! 2人で大事にしましょっ。さと寸さんっ!)



「さと寸さん、はいっ! (パシャッ)カッコいいですっ」


「いや、照れるって」


「今度はこっち向いてくださいっ(パシャッ)」


「……まあ、これも有名になった時の為の練習だと思おう」


「はいっ。笑ってくださいっ」



(いいわよいいわよ! どんどんさと寸さんが私のスマホに収まっていくわっ! もっと……もっと来てくださいっ……さと寸さんっ!)



 悟は美優の勢いにやられ、次々と色んな角度、表情で写真を取られていく。


 カシャカシャと色んな角度から写真を撮る美優は、夢中のあまりどんどん悟に近づき、



「あ、美優ちゃん、あぶないよっ」


「最高ですっ! さと寸さんっ! そのままそのまま……あっ!!」



 美優は足元にあるケーブルに足を引っ掛けてしまい、スマホを構えたまま前のめりに倒れてしまう。



「え? あっ!」


「ちょっ、美優 ー 」



 どさっ ー !




「だ、大丈夫? 美優ちゃん?」


「いててて……。はっ!?」



 美優は椅子に座る悟に抱きつくように倒れてしまっていた。

 これが椅子じゃなくてベッドだったなら、かなり際どいシーンだ。いや、椅子でもそんな変わりはないのだが。



 美優は悟の胸にうずくまっていた顔を上げ、すぐさま起きあがる。



ガバッ ー



「ご、ごめんなさいっ……! 大丈夫ですっ!」



 近くにいた何人かの客がいぶかしい表情で通り過ぎていく。そりゃそうだ。こんな小さな美少女に上から乗っかられてたら、そりゃ妬み嫉みの対象になるってもんだ。



「本当、大丈夫!?」


「は、はいっ……大丈夫ですっ……さと寸さんは……」



(うっぎゃ〜っ! やっちゃった! もう! 今日は何なの! 恥ずかしいっ。バカみたいっ)




「俺は大丈夫だよ。ありがとね。体を張ってまで写真撮ってくれて」



「本当に、ごめんなさい……」



(……でもスッゴく……ドキドキする)



 悟はとっさに冗談を交えてフォローを入れようとしたが、悟も実は内心ドキドキしていた。



(おいおいおいおい……何なんだよ何なんだよっ! めっちゃドキドキする……柔らかくていい匂いで可愛いのが降ってきたぞ!! あと何か2つの……いや。やめとこ……。ってか、こんなのってあるかフツー!? いや、いつもやってるゲームの世界ではあるあるだが、いざ自分の身に実際に降りかかると、言葉が出てこねぇ……こんな、こんな感じ……ああ、リアルってマジで……すげえ……)



「じ、じゃあマイク……探そうか」


「は、はいっ……」



 美優はまた、今日出会った時のようによそよそしくなって落ち込みそうになったが一瞬、気持ちを切り替えて、



「あ、あそこですっ。あそこにマイクのコーナーがっ」


「うん。ありがと」



(私……いつまでもこのままじゃいや。もっとさと寸さんに近づきたい。

 ……だから、自分から距離を置くような事はもうしたくない。ちゃんと私のルートを大事にしなきゃ。

 そしてさと寸さんのゴールにはきっと、夢さんじゃなくて、私がいたいっ!)




 美優はそう決心し、悟の隣を小さな妖精のように寄り添い、歩き出した。




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