93.miyucoルート③
「ご注文、繰り返させていただきます。『ハーモニーフルーティー トワイライトプロポーズ ジュエルミルク』と、『シュワシュワスパーク シャイニングメガトロン オブゴッデス』ですね」
「はいっ。あ、あとすいません、追加でこの期間限定の『妖精が巻いた木こりの中のチヨ子とかくれんぼクレープ 大砲バター付き』をお願いしますっ」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
悟と美優は、以前夢と木葉と来たシルベーニャファミリー風の、うさぎをモチーフにした可愛らしいスイーツ店に来ていた。
(おいおい……行きたいスイーツ店があるとは聞いてたけど、まさかこことは……もう2度と来る事はないと思っていたのだが、そんなにもこの店は美少女達に人気なのか?)
「さと寸さん……あの……ひょっとしてこのお店、来た事あるんですか?」
「えっ?」
「メニューの独特さに、何も気にしてない感じだったので……」
「ああ。前に一度……ね。……美優ちゃんはここ、よく来るの?」
「はいっ。私、ここのお店ほんと大好きで何回来たかわからないくらい来てますっ。こんな可愛らしいお店、さと寸さん大丈夫かなって本当は少し心配だったんですけど……」
「大丈夫だよ(免疫ついてるから)。それに甘い物、好きだし」
「はいっ。よかったですっ」
(……前に来た事あるって一体、誰とかしら……。さと寸さん一人っていうのは、ちょっと考えにくいわね……。男友達と来るとしても何回も通ってる私からしたらそういうお客さんはほとんど見た事ないし……ひょっとして夢さん!? ……ああ、気になる……。さっきの絵の件もわからずじまいだし……どうしよう。気になる気になるっ! 気になって仕方ないわっ! ちょっと突っ込み過ぎかもしれないけど……)
どうしようかな……。
[ここには誰と来たんですか(ギリギリ失礼かも)?]
[そうなんですかぁ〜っ。ひょっとして、以前彼女さんと来たとかですかぁ(わざとらしいけど、強制的に色々吐かせたいっ)?]
う〜ん……。
う〜ん………。
「……描いた人って、すっごい美少女さんだったりして……」
「えっ!?」
「あんな美少女はきっと、美少女にしか描けないと思います……。私の推測ですけどっ……」
「え、えっ!? 美優ちゃん、何の話し?」
(バカバカバカっ!! だから何でこうなるのよっ! もうっ! ……こうなったらどんどんいくしかないわっ! ここでまた怖気付いてたら、またいつものモジモジした自分に戻っちゃう。さっきのアクシデントだって、きっと何かのきっかけよっ。しかも私は今、さと寸さんと念願の2人っきりのデート中なのよっ! こんな大チャンスなところでモジモジしてたら夢さんどころか、何も自分の思うように進んでいけないわっ!)
「……あのバナーとアイコンの絵、誰が描いたんですか?」
「あ、だからそれは俺の知り合いに描いて……まあ、美優ちゃんの知らない人だから……」
ー 負けないで ー
「でもでもっ! 気になります! 私、すっごく気になりますっ! だって……あんな綺麗な絵見たら……何故か、私……や、やきもち……妬いちゃうから……」
ドーン!!!
(なんーーーだこの可愛いさは!!? だからやめてくれって! 何だこの可愛い生き物は! しかも何だヤキモチって!? 何で綺麗な絵だとヤキモチ妬くんだ!? 理解できねぇっ! しかもそんなウルウルした流し目でほっぺたも赤くなっちゃって超可愛いし、それにそんな事言われても体よくかわす言葉は俺の選択肢にはねえっ! マジかよ……これだから……これだから、リアルの美少女は攻略が難しいんだよっ! ちょっと待ってくれ美優ちゃん!)
「は、ははっ……ヤキモチかぁ〜っ。そ、そうなんだ……。でも、どうして美優ちゃんがヤキモチ妬いちゃうのかな?」
「お待たせしました〜っ。『ハーモニーフルーティー トワイライトプロポーズ ジュエルミルク』と、『シュワシュワスパーク シャイニングメガトロン オブゴッデス』ですっ」
「は、はい……。さあ、美優ちゃん、とりあえず食べようか?」
(良かった……。店員さんナイスタイミングっす。……うん? いや……待て。どうして俺は困ってるんだ? 何を焦ってんだ? 何がナイスタイミングなんだ?)
「あんな美少女は美少女にしか描けないと思って……何となく、私の予感というか推測なんですけど……。それでさと寸さんのお知り合いに、そんな美少女がいたら、その……うらやましいな……って」
「そ、そうなんだ……まあ、でも……あれかね? ……お、うん。まあ、綺麗な人……かな」
(いやだから! なにを俺はこんなに困ってんだ? しかもどもっちゃってるし……。美優ちゃんは夢を知らないからといって、どうして俺はこんなにも夢を隠すような、渋るような言い方をしてんだ……?)
「そう……なんですか。……はいっ。わかりましたっ」
美優は何かを察したように、妙に笑顔を取り繕って悟に返す。
「ま、まあ……そのうち、機会があったら紹介するよ」
「はいっ。ありがとうございますっ!」
(だあ〜っ! 何かっこつけてんだ!? しかも紹介するとかテキトーな事言っちゃって! 何なんだよ! ダサ過ぎるぞ俺! どこが百選錬磨の美少女ゲーマーだよ……ほんっとダサ過ぎるぜ……そして、またあんた……こっち見てるな……。俺をにらみつけてるよな、お父さんうさぎよ……あんたは何でもお見通しか……)
壁に掛けてある、おそらくこのお店を取り仕切っているであろう、お父さんうさぎの肖像画がじっと悟を見ている。
「美味しい〜っ。本っ当においしいですっ。さと寸さん、いつも1人で来てるから今日は一瞬に来てくれてありがとうございますっ」
「う・うん……よかったよ」
美優は目の前のスイーツを、なるべく気持ちを察せられないよう、さっきまでの話しに無関心を装いながら美味しそうにパクパクと食べ始めた。
悟には絶対、自分の心を読まれないように。
(わかっちゃった……わかっちゃったよ、さと寸さん。やっぱり私のライバルはあの人だ。
私……絶対、絶対負けない)




