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34.ルートは自分で切り拓くもの

「ほれほれ。言ってみ? 私達が聞いてあげるから」



 達って…。いつの間にか2人に増えてる……しかも木葉はきっと、俺が夢を好きな事をいつからか見抜いている。きっとそうだ。すっとぼけて俺に少しでも言いやすいように仕向けているのか? そして俺が言ったことで万が一、この場が気まずくなってもその状況をフォローし回収出来る、何か策でもあるのか?



…乗っかればいいのか? 悪いようにはしないと、誘ってくれているのか? もしくは木葉は夢の気持ちを何かしら知っていて、俺にそのキッカケを作らそうとしてくれているのか…?



 壁に掛かったお父さんうさぎは、ただじっと俺を見つめている。



 イティーズタイム。

 時は来た。今なんだろう……今なんだろ?


 ここからまた、新しいルートに入れるんだろ?




 ー 選択を間違えるな。そして自分を信じろ。




 え〜い! ままよっ!!

 


「……俺はずっと前から ー 」


「ー もう、いいじゃん」



 ー !?



 俺と爆弾娘、もとい、救いの女神は無理目に目を向ける。



「もういいでしょ? 木葉。悟も困ってどもっちゃってるし。あんまりからかってしつこくすると悟だって嫌だと思うよ? 言いたくなったら自分からそのうち言ってくるだろうし。第一、何より木葉はグイグイ行き過ぎっ! もうちょっとわきまえなさいっ」


「えっ? でも悟君、今話してくれようと ー 」


「木葉は何でもかんでも興味本位で人のこと、突っ込みすぎなのっ! いつもそれで相手に引かれてるでしょ?」


「だって興味ない奴は本当興味ないし、この人はって思ったら聞きたくなっちゃうんだもん。しかも悟君だよ? 夢の幼馴染だよ? しかも慌てるとどもっちやって超可愛いいんだよ? こんなレアなキャラをアタシに隠して会わせなかったのは、何かしらの罪だよ?」


「なんでなのよ…」



 やれやれといった様子で夢は諦めたのか、こっちに向き直り、



「悟も悟で乗せられすぎ。もっと堂々としててほしいわ。相変わらずドジだけど、嫌ならいやではっきりしなさい」



 何か、怒られてる。俺。

 どういう事だ?



「ははーん。夢、アンタもしかしてアタシと悟くんにヤキモチ妬いてんでしょ?」


「何でそうなんのよっ!? 妬く訳ないでしょっ!! いい加減にしなさいっ!」



 ふざける子供を叱り、罰を与えるように夢は木葉のスペシャルキラメキプリット何とかを取り上げようとする。



「ああ〜っ!? 待って待ってっ!! わかった、わかったからっ! もうしないからっ!」


「……本当に?」


「うん……」


「もうしない?」


「しない。グスン。」



 何だ。この可愛いやり取りは。



「じゃあ、はい」


「おかえり。私のキラプリちゃん」



 大人しく木葉はパフェを再び食べ初める。



 うん。何だろうか。このやり取りは。


 初めて見るものの、以前から2人はこんなやり取りをしていたであろうスムーズな小慣れ感を感じる。

 何か見てて微笑ましい。


 木葉がチラリとこっちを見て、



「ごめんね? しつこく聞いちゃって。何か止まらなくなって興奮しちゃって」


「いや、いいよ。そんな気にしないで?」


「うん。わかった。また今度きく」



 いや、聞くんかい!!



 少し大人し目に、もさもさと可愛くパフェを頬張る木葉に安心したのか、夢は俺を見て、



「……漫画、今日返してもらえるの?」



 ー …来たっ!! ー



 いきなりの不意打ち。



「あ・ああ…ちゃんと持ってきたよ。ありがとう」


「で? どうだった?」



 ー うん? 何だ? 「どうだった?」だって?  



 何故、改めて聞く?



 さっきの俺の拙い感想はなかったって事にしてくれるのか? もう一回チャンスを、挽回するキッカケをくれるって事か?



「いや、まあまずは……まずはだよ? とにかく、絵が綺麗だなって」



 俺はゆっくり言葉を紡ごうとする。



「それは聞いたよ? さっき」

 


 やっぱ、そうですよね。なかった事にはならないですよね。はい。



「……ただ、俺は ー 」



 夢中でパフェを食べる木葉をよそに、俺は思った事を素直に、そして一つ一つの言葉を丁寧に選択し、夢に伝える。



「俺はあの手の、こう、少女漫画風? な漫画を読むのは実は初めてなんだ。いつもこう、いかにも男子が好むようなバトル漫画やギャグ漫画とか、ファンタジーや知識物とかばっか読んでて……。

 

 だから正直、夢の漫画を読んだ時は、俺にとっては真新しい世界、というか、ああ、少女漫画(もうそう呼ばせてくれ)ってこんな感じなんだ、っていうのが俺の感想、というか印象で、ストーリー自体は俺は少女漫画を読んだ事はないが、王道的? な感じがしたよ。でもあのタクヤっていうイケメン(おれには敵わない)は、何か正直男の俺から見てもちょっとズルいな、カッコ良すぎるなって思ったよ。いや、良い意味で。


 元カノに対する未練を完全に断ち切る為に、今は中途半端なままノゾミとは向き合えないって頑なにノゾミを拒否ったシーン。あれは男の俺でもちょっとグッときた。まあ、そんな経験はした事ないんだけど、男の、良くも悪くも、その陰ながらの我慢? というかある意味、独りよがりな美学みたいなものを感じて、詰め寄るノゾミに言い訳もせず、じっと耐えてる所が、俺にはグッときた」



ー 俺は夢の漫画の思い出し、言葉を選んでいるうちにいつの間か、話す事に夢中になっていた ー。


 

「どうしても男性目線になるかもだけど、男の描き方、表現の仕方はあの夢見がち? な、ふんわりしたストーリーには、いいアクセントになって良かったと思うよ。女子同志の会話も、俺はあまりよくわからないけど、夢の絵の上手さもあってか、表情からもそれぞれの女の子が何を考えてるのか伝わりやすかったし、何よりたまに入ってくる、あのグッとくる目線?の描き方、本当に綺麗でちょっと読むの止まっちゃったよね。


 あと、クリスマスでたまたま会った時の、あのノゾミの身勝手極まりないわがままが炸裂した時は、俺も思わずタクヤの味方になって、読んでてめちゃくちゃ腹が立ったけど、まあけっこう…うん……揺さぶられたよな。


 続きが気になるから、出来たらまたよかったら読ませてほしい。何か交換条件あんのかも知れないけど。………あっ、まあ、そんな感じが俺の……あれだ、感想…かな」




ー どうだろうか。


 どうなんだろうか。



 話してるうち、自分でも夢中になって途中何言ってるかわからない所もあったかも知れないが、夢を応援したい一心で読ませてもらった漫画。だか、あまりにも自分勝手な、思った事をただベラベラ喋ってしまっただけになった気がする。よかったのか? これで? 




 夢は ー?


 


 ただ頬杖をついてこっちを見ながらも、何か視点が合ってるのか合ってないのかわからない目線で、小さな口を開けてぼんやりと俺を見て? いる。




ー ふと、夢の大きな瞳から涙がつたう ー。




「おい? どうした!?」



 パフェを食べながらも、こっちの話を聞いてるのか聞いてないのかよくわからなかった木葉が、ハッと夢に気づいて、ハンカチを取り出し夢の頬に当てる。



「あっ ー あれ? なんで…」



 いつの間にか出ていた涙にふと気付いた夢が戸惑う。



「こらーっ 夢を泣かしたなーっ! ダメだぞ、男の子がそんな事しちゃ。 おーよしよし、どちたの、どちたの夢ちん」



 先程のパフェを取り上げられた親子のようなやり取りの立ち位置真逆バージョンみたいな展開が俺の目の前で繰り広げられる。



「いや、大丈夫だよ。ありがと…木葉」



 おいおい…。泣かしちゃった…のか? 俺……。

 ……はっ!?



「ごめん! そんなつもりじゃ! 何か、大丈夫か!? とにかく、ごめん!!悪かっ ー」


「ううん。いいの…違うの。何か…悟の顔見てずっと話し聞いてたら、何かいつの間にか泣いちゃってたみたいで。ごめん」



「大丈夫か? 俺、そんな悪い、失礼な事言ったか? 本当ごめん! 謝るから!」


「いや、いいんだよ。何も悪い事言ってないし、全然、気にしないで。何か…ああ、ちゃんと読んでくれたんだなって、私の漫画から、こんなにも一人の人から沢山の言葉がもらえて、自分の漫画で何か感じてくれて…それがすごく嬉しくて。ごめんね」



 俺は夢の言葉に安心しつつも、きっと夢はやりたい事とはいえ、不安になりながらも一生懸命描き続けてきたんだろう、そしてその作品が少なからずたとえこんな俺のつたない言葉だったとしても、夢にとっては救いというか、何かしらの力になったんだろうか。

 木葉になだめられる夢を見ながら、そんな事を思った。


 しかし ー



 俺はその夢の本心を、知る事はできない。



 ただ、夢を応援し続けることはきっと出来る。

 俺はいつだって、夢のルートにいるから。 


 夢をずっと見続ける。この無理目の美少女を見つめながら、改めて俺はそう思った。



「まあ、何はともあれ女の子を泣かしちゃう男の子には、罰だね。ね? 夢?」


「えっ?」



 戸惑う夢をよそに、



「今日はありがと。ご馳走様ですっ!!」



 おいおいおい! 待て待て待て〜いっ!!


 何でそうなる? しかも木葉は泣かしてないし。



「ね? 夢? 今日のところはそれで許してあげようか?」


「うん。そだね。ご馳走様」



 涙を拭きながら、赤らめた顔にほんの少し意地悪な笑顔を見せるその顔は、俺にとって何よりの救いだった。



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