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私とGPTさんの千夜一夜物語  作者: テスト


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0060.富士山 × エジプト神話 × 将棋(実験中)

時は、エジプト神話時代

まだ神々が生々しく世界に干渉していた。

神々は神話上の存在ではなく、実在する支配者であった。

ナイルの氾濫、疫病、豊穣、王朝の興亡。その全ては神々の意思によって左右される。

そして神とファラオの対話は、“盤”を通して行われていた。


ラ・メンセウスは緊張していた。今宵は月例交神会。神々と盤を挟み、王国の行く末を問う夜だった。


先王は三ヶ月前、閲兵の帰路にて戦馬車より転落し、帰らぬ人となった。民には不慮の事故と布告されたが、宮廷ではいろいろなうわさが囁かれていた。


王都は長い服喪と継承儀礼に包まれた。神官団による審判、王権継承の宣誓、戴冠、そして“神々と盤を囲む資格”を得るための清めの儀。

その全てを終え、今宵ようやく、十五歳のラ・メンセウスは初めて月例交神会へ臨むのだった。


王座に座り、ラ・メンセウスは静かに息を吐く。交神の間。この部屋へ入ることを許されるのは、神々とファラオのみ。壁面のかがり火が不意に揺れた。風は無い。


その時、巨大な石柱の陰から、一匹の黒猫が姿を現した。金色の瞳だけが暗闇の中で静かに光っている。猫は足音もなく、そろり、そろりと玉座へ近づいた。


「なんだ、緊張しているのか?」

少女とも女ともつかぬ声。黒猫の輪郭が揺らぎ、歩みと共に人の形へ変わっていく。

しなやかな肢体、琥珀色の瞳、口元には獲物を見つけた肉食獣のような笑み。


「初陣の雛鳥にしては、よく震えを隠している」

バステトは不敵に笑った。


その時だった。目の前を青い影が鋭く横切る。

ラ・メンセウスが反応するより早く、ひとりの青年が玉座の前へ“すとん”と降り立った。

長い外套が静かに揺れる。整った顔立ち。しかしその両眼だけは猛禽そのものだった。


「若いじゃないか」

ハヤブサの神ホルスは、ラ・メンセウスを見て愉快そうに笑った。


「いい眼をしている。バステト、あまりいじめるな」

「いじめてなどおらぬよ。少し爪を見せただけだ」

バステトは肩をすくめ、猫のように目を細める。


その時、空気が重く沈んだ。バステトがわずかに眉をひそめる。ホルスも笑みを消し、無言で入口を見る。しかし次の神は、気配が無かった。


いつ現れたのか分からない。


気づけば盤の向こう側に、痩せた男が座っていた。長い指、乾いた肌、白と赭色の装束。そして異様なほど静かな眼。まるでミイラそのものが歩いてきたかのようだった。


「……遅いぞ、アヌビス」

ホルスが言う。

男はゆっくりラ・メンセウスへ視線を向けた。


「……三ヶ月か」

低い声。砂漠の夜のように乾いていた。


「待たせたな、若き王」

ラ・メンセウスは思わず背筋を伸ばす。


「人は儀式を好む。喪に服し、冠を磨き、香を焚き、言葉を並べ……ようやく盤へ辿り着く」

アヌビスは淡々と言った。


「我らなら、一晩で済む」

するとバステトが肩を震わせる。


「けけっ、本当に人間は儀式好きだからな。泣いて、歌って、王冠かぶって、“神々と盤を囲む資格”とか言い出して」

「その間、我らは三ヶ月も待ちぼうけだ」


ホルスがため息をつく。

「王とはそういうものだ。人の国は、段取りと象徴で出来ている」

「神々の気まぐれだけで回るほど、脆くもない」


アヌビスは何も答えない。ただ盤上へ視線を落とすのみだった。黒い駒を一本つまみ、元の位置へ静かに戻す。それだけで、ラ・メンセウスの背に冷たい汗が流れた。


死者の神アヌビス。魂の計量者。そして交神将棋において、最も“詰み”を好む神。


「さて――」

ホルスは盤の前へ歩み寄ると、袖を払うように軽く手を振った。すると石盤の上に淡い青白い光が走る。縦横に線が浮かび、巨大な盤面が姿を現した。


ラ・メンセウスは思わず息を呑む。

それは将棋盤に似ていた。だが、あまりにも巨大だった。


「これが交神盤。俗世では“エジプト将棋”などと呼ぶ者もいる」

盤には、戦馬車、船、神官、猫、蛇、鳥、そして無数の歩兵駒が並んでいた。


「盤上は、この国そのものだ」

ホルスの指が動く。ひとつの駒が進む。その瞬間、盤面の端にナイル川の幻影が現れた。氾濫、飢饉、泣き叫ぶ民。一瞬の幻。しかしあまりに生々しかった。


「駒は兵であり、都市であり、運命そのものでもある。神は一手を示し、ファラオはそれに応じる。ゆえにこれは遊戯ではない。対話だ」


「もっとも、負ければ大量に死ぬがな」

バステトがくすりと笑う。


アヌビスが静かに盤へ手を置いた。


「……今宵、王と闘うのは私だ」

ラ・メンセウスの喉が鳴る。


すると横で、バステトが肩を震わせた。


「けけっ……」

猫のように喉を鳴らしながら、コケティッシュに笑う。そして王へ身を寄せ、小声で囁いた。

「強そうな雰囲気を出しておるが、あやつ最弱担当だからな」

「……」

「歩兵の神」


その瞬間だけ、アヌビスの額に青筋が浮いた気がした。ホルスは片手で顔を覆い、深いため息をつく。


「だから挑発するなと言っているだろう……」


・・・


盤上に、乾いた駒音が響く。

カチ。

カチ。


交神の間には、いつの間にか、かがり火の燃える音しか残っていなかった。

ラ・メンセウスは慎重に駒を進める。


相手は死者の神アヌビス。

魂を量り、王朝の終焉すら見届けてきた存在。


到底、敵うはずがない――そう思っていた。

だが。

(……あれ?)


十手ほど交わした頃、ラ・メンセウスは違和感を覚える。


(この神……弱い……?)


アヌビスの指が止まる。


盤を見る。

また止まる。

明らかに迷っていた。


額には、うっすら油汗まで浮いている。


バステトが、横で肩を震わせ始めた。

「けけっ……」


ホルスは無言で天井を見上げる。


アヌビスは長い沈黙の末、歩兵駒を睨みつけ――

ぼそりと呟いた。


「……歩。邪魔」


ラ・メンセウスは一瞬きょとんとする。


その直後。バステトが吹き出した。

「ふ、じゃま……!」


ホルスが片手で顔を覆う。。。


歩。邪魔→ふ、じゃま→ふじやま→富士山


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