アイサツおばさん、レアカードを交換する。
土下座です。
深夜零時。
片手に缶チューハイを持ちながら、私はTVをつける。
「アイサツ!を見るときは、画面から離れて、部屋を明るくしてみてね☆
私の熱い挨拶運動、はじまるよー!」
流れるのは、そんな言葉。
本来ならば6時からというこ健康的お子様時間帯に放送される、このアニメ。
私は深夜アニメそっちのけで、今週の幼女向けアニメを見る。
そう、コレは。
幼女向けアニメ。
生粋のアイサツおばさんである私は現在26歳。
仕事もそこそこ、顔もそこそこである。
そこそこ女には、人には言えない秘密がある。
それが、この「アイサツ」おばさんであること。
アイサツ!は、幼女向けの着せ替えできるアーケードカードゲームである。
何をとちくるったのか制作会社は「挨拶」をすることでどんどんレベルが上がるという趣旨のゲームにする。
自分のキャラをICカード(ていきけん)に登録し、その他の玩具と連動機能もある。
おおまかにいうならカードを集め、そのカードがシチュエーションにあったか判断し、
挨拶していくというもの。
たとえばステージが「きしゃかいけん」だったらスーツに近いクール系カードを選ぶとポイントアップ。
「こんやくしゃのかぞく」だったらベージュ系のシフォンドレスなど。
カードを選んだら、赤、青、黄色のボタンを駆使し、その場にあった挨拶をたたいていくというシステムである。
幼女界では大ブーム。
おませなお嬢様方は、大人の気分になれるこのゲームに夢中に。
一方大きなお友達は、現実世界にありそうでない絶妙におしゃれなカードや、それを着こなす自分や敵キャラに夢中になってしまったのだ。
私もその「アイサツ」おばさんの一人。
だって洋服が可愛すぎる。
TVに出てくる洋服や、挨拶を進めるための歌なども普通に歌えるレベルで可愛いし、何で広まらないのかワケワカメ。
そういうわけで、私の私生活は「アイサツ」を中心に回っている。
誤解してもらっては困るのは、アイサツはあくまで幼女様のために作られたもの。
プレイする時間帯は、子供が入れない時間を選び、やむ終えない場合はなるべく譲る。
子供は来ないような路地裏にあるゲームセンターにする。
アイサツをプレイしてるだけあって皆良識はあるが、もし
「なんで大人なのにアイサツしてるのー?」
など聞かれたら
「すきだらかだよー」
と笑顔で流す。
アイサツアダルトプレイヤーは、幼女様に配慮しなければならない。
そうして、ぼろ路地裏ゲーセンでアイサツをずんずんプレイしてた時。
「あ、プレミアムカードでた!!」
出たのである。
現在のアニメの主人公「夢見かんな」ちゃんのEDできているプレミアムカードが!!
私の喜びようはそれはそれは鬼のようだったでしょう。
そしてそれをじっーーーーーーーーーーーーーーーーーーと
見つめる幼女?が一人。
ふと視線をやると、めちゃめちゃ可愛い幼女だった。
黒くつやつやな髪にながい睫。こぼれそうに大きく、吸い込まれそうな瞳。
日本人ではないであろう雪のように白い肌に、赤い唇。ピンクのほっぺ。
天使だった。
私の視線に気がついたのか幼女は、
「ぶしつけにぎょうししてしまい、たいへんしつれいいたしました。」
とスカートの端をもってお辞儀。
もう可愛すぎて、はげそうだった。
「ダイジョウブダヨ!!!アイサツ、すきなの?」
「はい、あなたさまのおもちしている、そのカード、わたくし・・・。」
そのまましゅん、となる。
あと一巡前なら、もうすこし早く着ていれば。
そうおもっただろう。
こんなところまでくる子だ。
きっとアイサツが好き、その思いで―。
「これ、交換してあげようか?」
「えっ?」
「私、かんなちゃんよりまゆりちゃんのカードが好きなの。だから、ね?」
幼女は気づいているだろう。
「本当に、よろしいんですか?」
「うん!いいっていいって!!」
「ありがとうございます!!しかしいま、大半のカードを自宅においてきてしまいまして、
もしよろしければ、自宅までごいっしょいただけると・・・。
おゆうしょくも、いっしょにどうですか?」
「いやいや!!この怪しいアイサツおばさんをおうちに呼んではいけませんよ!!!」
「大丈夫です。アイサツ好きには悪い方はいません!!」
時間が時間だったし、幼女に言いくるめられた私は、なんだかんだで夕食までいただくことになってしまったのだ。
「貴方のおうちはどこ?」
「はいっ!!えっと―。まかい?何ですけど・・・。」
そして幼女はそのままペンダントを取り出し、何回か回す。
するとブラックホールが現れて、私は吸い込まれた。
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