3話 違和感
3話 違和感
繰り返す行動。
繰り返す時間。
繰り返す日々。
不思議な感覚だ。
思考だけが薄れたと言えばいいのか。
…
考えてないわけではない、
だが考えているとも思えない。
体が覚えている、との表現とも違う。
しかし、俺は繰り返す。
そして今日も作業をしている。
生き物は思考しなくとも体を動かせるという。
例えば呼吸だ。
普段から意識して呼吸するものはいない。
俺も同じだ。
考えずともこの世界で生き、動いている。
変化の少ないこの世界では都合がいいのかも知れない。
だが突然変化は訪れた。
繰り返す行動。
繰り返す時間。
繰り返す日々。
ただこれまでより少しだけ作業が上手く行った。
思い過ごしとも呼べる、小さなでき事。
しかし、それは続いた。
俺の要領が良くなったというべきなのか?
いや、それは違う。
…違う。
似た様な出来事が違う作業でも起きた。
しかし、その都度違和感を覚えた。
違う…。
自分ではない…。
一般的に考えれば、同じ作業を続ければ、
考えなくても次第に良い行動がとれる事がある。
スピード…
正確性…
…。
…いや…違う、そうじゃない。
違和感が拭えない。
…ただ、何故か絵の様な物を描く作業は上手く行かない事が多かった。
特に原本を元に、対象の動きを出そうとすると、
上手く行かなかった。
例えば、現在から5分後の高速道路を描くとする。
微妙に道路の角度が違ったり、風景も原本と同じ様に
書けなくなるのだ。
やはり俺はアイと呼ばれるこの体にはいってしまったのか?
それとも俺はアイが生み出した人格なのか?
だから感覚にズレが起きてるのか?
…。
そう考えると薄れていた恐怖が体を支配する。
俺は誰だ。
いずれ消えるのか?
嫌だ、消えたくないっ!
錯乱気味の俺は、その場から逃げ出した。
その時つまずき、道具にぶつかった。
激しくぶつかった様な気がした。
しかし痛みを感じなかった。
それ程に恐怖に飲まれていたのだろう。
部屋を出ると以前のあの人物に呼び止められた。
「アイ、こっちへ」
俺は湧き上がった疑問を感情のままぶつけていた。
「俺は誰だ、いるのか?いないのか?」
「消えるのか?…」
そう叫んだ後、ぷつりと切れた…。
過去にもあった感覚だった…。
…。
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