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元・特命現場管理官、異世界で最強の警察組織を作る 〜悪党と凶悪な魔物を、手錠と法律スキルで現行犯逮捕します〜  作者: ブラック珈琲の駐在


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第2話:エルトニア交番、始動

登場人物

シルビア

元・王国騎士団の分隊長。組織の腐敗と理不尽な命令に苦悩しながらも、街の治安を守る強い誇りを持つ女騎士。ハヤトの法執行に衝撃を受ける、最初の人間側パートナー。

前書き

皆様、第1話への温かい応援とたくさんのブックマーク、本当にありがとうございます!

チートなし、圧倒的な頭脳と逮捕術、そして現代の警察ロジックだけで異世界の理不尽な悪党どもをねじ伏せるハヤトの戦い、いかがでしたでしょうか。

第2話からは、いよいよ小さな拠点(交番)の立ち上げと、最初の重要な仲間となるシルビアとの出会いが描かれます。暴力と利権が支配する街に、どのようにして「法律と司法インフラ」の第一歩が築かれるのか、ぜひじっくりとお楽しみください!

暴力がすべてのルールであり、法という概念がほとんど形骸化していた開拓都市『エルトニア』。

その街のはずれ、かつては治安維持の拠点として使われていたものの、予算の削減や管理官僚の怠慢によって長年放置され、今や半ば廃墟と化していたボロボロの「旧・衛兵小屋」の前に、ハヤトは立っていた。

スッと伸びた背筋、乱れのないスーツ、そして微塵も揺るぎない冷徹な瞳。その足元では、ならず者たちの手首に『絶対法廷の手錠』がガッチリと食い込み、地面に這いつくばって怯える男たちが転がっている。

「……ふむ。構造の老朽化は激しいが、立地とレイアウトの観点から見れば、初期の交番(駐在所)としての要件は辛うじて満たしているな」

ハヤトは独りごちると、周囲をぐるりと見回した。

この街には、まともな留置所も、裁判所も、検察組織も存在しない。これまでであれば、悪党どもは金を積むか、より強い暴力にものを言わせてその日のうちに釈放されるか、あるいは裏社会の闇に消えていくだけだった。しかし、近代の法律と司法手続きに基づいて罪を裁こうとするならば、最低限の「被疑者収容スペース」と「取り調べを行うための拠点」が不可欠である。

「放置されたからといって、公共のインフラ施設を私物化するつもりはない。だが、この街の法秩序を回復するための第一歩として、国家公安の権能に基づき、この場を『エルトニア交番(仮設)』として一時接収する」

ハヤトが静かに呟き、警察手帳を空中に掲げた瞬間、空間の理が彼の意志に呼応して微かに明滅した。

次の瞬間、ボロボロの衛兵小屋の周囲を囲むように、鮮やかな黄色と黒の警戒色のグリッドが走る。

――特殊スキル『立入禁止区域(ポリスライン)』。

パツン、と空気を切り裂くような硬質な音が響き渡り、古びた小屋の周囲に目に見えない強固なエネルギーの障壁と重力の封鎖フィールドが展開された。それは物理的な侵入を完全に拒絶すると同時に、内部の被疑者が逃走することを100パーセント不可能にする、極めて強靭な「仮設留置所」への変貌であった。

「なっ……なんだこれ……!? 体が重くて動けねえ……!」

「おい、この黄色い線に触れただけで、魔力が根こそぎ持っていかれるぞ……!?」

手錠をかけられたままポリスラインの内部に転がされたならず者たちは、まるで数トンの鉄板に押し潰されているかのような重圧と、一切の魔法・スキルが強制封印される恐怖に顔面を蒼白にし、冷や汗を流しながらもがき苦しんだ。だが、ハヤトは彼らには一切視線を向けず、埃まみれのドアを押し開けて内部へと足を踏み入れた。

内部は長年の放置によって分厚い埃と蜘蛛の巣に覆われており、机や椅子もあちこちにひしゃげていた。しかし、ハヤトは眉一つ動かさず、ポケットから取り出したハンカチで机の上をサッと拭うと、そこに自身のデバイスや備品を整然と配置していく。

「環境は最悪だが、整えれば問題ない。さて、問題はこの街の住民たちへの周知と、行政・治安組織からのアプローチだな」

ハヤトが窓の外を見ると、遠巻きに集まってきた街の住人たちが、ポリスラインに包まれた衛兵小屋と、中で気絶あるいは悶絶しているならず者たちを、まるで化け物を見るような怯えと驚愕の入り交じった目で眺めていた。

「おい、見たかあのよそ者……」

「衛兵たちが何年も放置していたあのボロ小屋に、勝手に陣取りやがったぞ……」

「しかも、あのならず者どもを一人で、一歩も動けなくしてやがる……。一体、何の魔法を使ったんだ……?」

ざわめく群衆の声は、ハヤトの耳にも心地よく届いていた。恐れられているわけではない。彼らは「何が起きているのか理解できていない」のだ。暴力と無法が支配するこの街において、法律や交番というシステムがあまりにも異質すぎるがゆえの混乱だった。

――その時だった。

「そこまでだ、不審者め!!」

石畳の街道を打ち鳴らす、重く整然とした鉄靴の足音が響いた。

群衆がサーッと波を引くように左右へ分かれ、道を開ける。そこに現れたのは、磨き上げられた銀色の胸当てと、気品を感じさせる青いマントを纏った一人の女性騎士だった。

引き締まった美しい容姿、しかしその眉間には深い憂いと怒りの皺が刻まれている。彼女の手には、使い込まれた精巧な魔導剣の柄がしっかりと握られていた。

彼女の名前はシルビア。

かつてこの開拓都市エルトニアの治安を守る王国騎士団の分隊長を務め、誰よりも強い正義感を持って現場を奔走していた人物だった。しかし、王国の貴族たちの腐敗、賄賂による犯罪者の釈放、そして「民を守るための騎士団」がいつしか「権力者の犬」へと成り下がっていく現実に絶望し、現在は半ば閑職に追いやられながらも、それでも自身の誇りとわずかな部下たちと共に街のパトロールを続けている苦労人であった。

シルビアは、勝手に旧・衛兵小屋を占拠し、見慣れない黄色い光の柵(ポリスライン)で周辺を封鎖しているハヤトの姿を認めると、怒気を孕んだ鋭い声を叩きつけた。

「おい、そこのよそ者! いったい何のつもりだ! そこは王国騎士団が管理する正式な管轄施設だぞ! 勝手に立ち入り、あまつさえこの街の住民たちを不当に拘束するなど……王国の法と秩序を愚弄するつもりか!」

シルビアの声音には、軍人としての圧倒的な威圧感と、街の治安を守る者としての強い怒りが込められていた。彼女の背後には、彼女の動きを心配そうに見守る数人の若い衛兵たちの姿もある。

しかし、ハヤトはその怒号を浴びても、表情一つ変なかった。

彼は窓辺からゆっくりと身を起こし、静まり返った室内から、冷徹で理知的な視線をシルビアへと向けた。そして、上品な所作で眼鏡の位置を人差し指で直し、低いトーンの声を響かせた。

「王国の法と秩序、か。……皮肉な言葉だね。もしその『王国の法』とやらが機能しているのなら、この街の路地裏で弱者が日々脅迫され、財産を奪われ、暴力に泣き寝入りさせられている現実を、君たちはこれまでどう見逃してきたのかね?」

「なっ……!?」

シルビアの息が、わずかに詰まった。

彼女が言葉を失ったのは、ハヤトの言葉が図星だったからだ。王国騎士団や貴族たちは、自分たちの権力争いや上層部への上納金集めに夢中で、スラム街や路地裏で起きている一般市民の被害など、ハナから眼中にない。シルビア自身、それを何度も上層部に直訴し、その度に「余計な真似をするな」と冷遇されてきた身だったからこそ、その指摘は彼女の最も痛いところを正確に突いていた。

「な、何を……! どんな事情があろうとも、正規の手続きを経ずに勝手に施設を占拠し、私家的な暴力で人を裁くことは許されない! あなたはいったい何者だ! どこの貴族の回し者だ!」

シルビアは剣の柄から手を離さないまま、さらに一歩踏み込み、ハヤトを威嚇するように睨みつけた。彼女の中にあるのは、秩序を乱す者に対する騎士としての正当な警戒心と、「これ以上、この街をぐちゃぐちゃにされたくない」という焦りだった。

ハヤトは動じず、ボロボロの小屋の扉を開け、ゆっくりと外へと歩み出た。

彼が纏うスーツの完璧な着こなしと、異世界の住人とは全く異なる洗練された立ち振る舞いは、シルビアに奇妙な異質感と、得体の知れない強者の気配を感じさせた。

「私は貴族の回し者ではない。通りすがりの――国家地方公安の執行官だ」

「国家地方公安……? そんな組織、聞いたことがない!」

「無理もない。この世界にはまだ存在していなかったのだからね。だが、今この瞬間からここに誕生した」

ハヤトはシルビアの目の前で立ち止まり、一切の怯えもなく、彼女の鋭い眼光を正面から見据えた。

そのあまりにも冷徹で、揺るぎない自信に満ちた瞳に、シルビアは思わず気圧されそうになる。

「君はさっき、『王国の法と秩序を愚弄するな』と言ったね。だが、私から言わせれば、君たち王国騎士団こそが、その法と秩序を形骸化させ、悪党どもを野放しにし、民を苦しめている元凶だ。違うかね?」

「き、貴様……!」

怒りでシルビアの頬がピクリと引きつる。彼女が抜刀しようと右手に力を込めたその瞬間、ハヤトはスッとコートの内ポケットから一冊の手帳を取り出し、それを彼女の目の前で静かに開いた。

――『警察手帳』。

ただの手帳ではない。その表面に浮かび上がった国家公安の紋章と、世界の理に直接干渉する微弱な光の波紋が、シルビアの脳裏に直接「この男の行動と存在は、この世界のあらゆる特権や身分制度を超越した、絶対的な『法』の根拠に基づいている」という概念を強制的に叩き込んだ。

「っ……頭が……? なんだ、この奇妙な圧力は……魔術でもない……まるで、天理そのものがこの男の正当性を証明しているような……ッ!」

シルビアは目を見張り、よろめくように一歩後ずさった。

彼女がこれまで信じてきた「王国の階級」や「騎士団の権威」とは根本的に異なる、もっと根源的で、もっと重い「社会的正義と法の原理」が、ハヤトの存在そのものから放たれていたからだ。

「力こそが正義であるならば、法律とは何だ。暴力で奪う者が勝つ世界であるならば、なぜ人間は社会を作り、秩序を定めたのか。君はその問いに答えられるか、元・王国騎士団分隊長シルビア殿」

ハヤトの静かで、しかし逃げ場のない論理的な問いかけは、シルビアの心臓を直接掴み上げるような重みを持っていた。

彼女は言葉を失い、ただ目の前に立つ謎の男――ハヤトを見上げるしかなかった。

暴力が支配するこの世界の理に対し、冷徹なロジックと揺るぎない法執行をもって真正面から楔を打ち込む男。

その男の背後で、仮設のポリスラインが青白く、だが力強く明滅していた。

それは、エルトニアという名の暗闇に、初めて「法治」という名の灯りがともった瞬間であった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

第2話「エルトニア交番、始動」いかがでしたでしょうか。

旧・衛兵小屋を接収して「エルトニア交番」を立ち上げるハヤトと、王国の腐敗に苦悩しながらも彼の圧倒的な法執行に衝撃を受けるシルビアの出会いが描かれました。

次話では、この出会いを経てシルビアがどのようにハヤトの理念と向き合い、最初の人間側パートナーとして動き出すのか、そしてスラムの少年・リトの登場へと繋がっていきます。

ぜひ、今後の展開も応援よろしくお願いいたします!次回もお楽しみに!

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