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漂流する微睡み  作者: 廉価広也


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第5章:定期訓練(1)

コオロギが夏になると大人しくなるように思えるのは、幸いなのだろうか。

それとも、災厄なのだろうか。

徹夜の詰め込み作業で極度に疲弊していたにもかかわらず、佐藤は以前の習性に小突かれるように午前三時ちょうどに目を覚ました。


(よし、仕事の時間だ)


彼は思った。


自信はなかったが、元のサトウの記録簿とノートにある資料には、一通り目を通しておいたはずだった。


(自分がこれから行う作業の専門用語や、観測の理論体系は、少なくとも七割くらい理解できていない。だが、何をすべきかという要点だけは、どうにか掴めている)


佐藤は机から立ち上がり、体を伸ばした。


劣悪な環境で数時間眠っただけでは、前世の残業よりもはるかに強い疲労感が残る。


しかし、遥か昔の受験期のようなアドレナリンのせいで安眠はできず、責任を果たせなかったらどうしようという不安が常にあった。


(そう、責任といえば、この時点で自分が夢を見ているわけではないことは、ほぼ確定している)


(サトウがオットーの夢を見ているのか、それともオットーがサトウの夢を見ているのかは、もうどうでもいい。以前読んだファンタジー作品に出てくるような憑依かもしれない)


定時観測のタスクをリストアップしたノートを手に取り、佐藤は重い体を引きずるように部屋を横切り、玄関のドアの近くで足を止めた。


ドアの脇にある木製のハンガーラックには、彼の私物のコートと、前日のスーツの制服が掛けられていた。


彼は手を伸ばしてコートを掴み、疲れた体に羽織った。


それから、あらかじめ用意されていた観測用ブーツを履いた。


コートの胸ポケットにノートを押し込み、隣にある頑丈な木製ドアの真鍮のハンドルを回した。


ドアを開けた瞬間、冷たくて新鮮な山の空気が彼を迎えた。


夏の夜特有の、少し蒸し暑く湿った空気ではあった。


奇妙なことに、コオロギの声は森中に響き渡ってはいなかった。


むしろ遠くで静かに鳴いており、どこか心を落ち着かせる響きだった。


頭上に広がる果てしない天の川の下で、佐藤は一日の最初の作業を開始した。


彼は胸ポケットから、手書きの文字が詰まったノートを取り出した。


「03時 地上定時観測」と題されたページをめくり、元のサトウの公式記録から必死にまとめた簡略化されたチェックリストに目を走らせた。


(今は何も考えるな。ただ器具を操作して、数字を書き写すことだけに集中しろ)


彼はそう自分に言い聞かせた。


(最初のタスク)


佐藤は濡れた砂利を踏みしめて歩き、芝生の上に支柱で固定された、奇妙な白いよろい戸付きの木箱へと向かった。


数時間前に詰め込んだ厳格なプロトコルに従い、彼は北側からアプローチした。


自分の体が周囲の光を遮ったり、熱を閉じ込めたりしないようにするためだ。


小さなペンライトを歯で咥え、二重のよろい戸のラッチを外し、フレームに取り付けられた二本の平行なガラス製温度計を覗き込んだ。


彼はガラスに直接息を吹きかけないよう注意しながら、顔を近づけた。


水銀柱は完全に静止していた。


刻まれた小さな目盛りを読み取る。


20.2℃。


そのすぐ隣にある、湿球布を巻いた温度計は18.1℃を示していた。


佐藤はノートに目を落とし、先ほど得たデータを用いて乾湿計の公式を適用した。


計算の結果、相対湿度(RH)は約81.6%となった。


それが何を意味するのかは何も知らなかったが、彼は生の数値を丁寧にノートへ書き込んだ。


よろい戸を閉め、数歩歩いて近くにある鉄製ケース入りの微気圧計へと向かった。


保護カバーのラッチを外すと、方眼紙が巻き付けられた内部の時計仕掛けのドラムが露わになった。


真鍮のメカニズムの内部で、小さな規則正しいチクタクという音が響いていた。


佐藤は紫色のインクが付いたペンアームを確認した。


それは紙になめらかに接触しており、緩やかで正常な気圧曲線をなぞっていた。


彼はコートのポケットから小さな巻き鍵を取り出し、ドラムの芯に差し込み、夜明け前に機械式の時計仕掛けが停止しないよう、慎重に内部のスプリングを巻いた。


彼は正確な気圧の読み取り値を記録した。


1011.4ミリバール。


佐藤は再び相対湿度を再計算した。


今回は先ほど使用した標準気圧の仮定を、現在の気圧の読み取り値に置き換えた。


その結果、相対湿度は約81.7%となった。


佐藤は、建物の脇にそびえ立つ鉄骨構造の観測プラットフォームの黒いシルエットに目を向けた。


結露で滑りやすくなった冷たい鉄のはしごの横桟を掴み、慎重に登り始めた。


重い観測用ブーツの鈍い金属音が、下に広がる静かで霧に包まれた谷へ鋭く響き渡った。


プラットフォームの上に顔を出した瞬間、光害に汚されていない夜空の圧倒的な美しさに息を呑んだ。


しかし彼は首を振り、ノートに書いたリストに集中した。


彼は機械式の風向計とロビンソン風速計――三杯式の風杯を備えた風速計――の方を向いた。


カップはなめらかで一定のリズムで回転していた。


佐藤はその下に設置されたアナログダイヤルを確認し、ノートを掲げて風向計の向きを追った。


(これで合っているよな?)


どちらがどちらなのか確信が持てなかったが、操作手順書の中の記述は間違いのないものだった。


そのため、彼はノートにこう書き込んだ。


風向:北北西


風速:2.5m/秒


彼は手書きのルーティンリストの最後のボックスにチェックを入れた。


はしごを降りると、冷たい微風が彼の頭を冴え渡らせ、三時間の詰め込み作業で残った疲労を洗い流してくれた。


彼は重い木製のドアを押し開け、古い紙とオゾンの臭いが漂う、ステーションのグレーのリノリウムの屋内へと戻った。


彼は重いスチール製の机に腰掛け、機械式のテレックス端末を引き寄せた。


前世で現代のキーボード入力に慣れきっていた彼の指は、無骨なキーの上に自然と浮かんだ。


彼は気象庁の数字コード表を開いた。


気温20.2℃、北北西の風、相対湿度81.7%。


それらが何を意味するのかを分析する必要もなく、彼は規則に従って、生のメモを標準化された五桁の気象コードブロックの列へと熟練の手つきで変換した。


彼は機械式のキーを叩き始め、紙テープにデータをパンチしていった。


それから、紙テープの先端をテレックスのテープリーダー(送信機)の機械式スプロケットホイールに送り込んだ。


東京の中央システムへの電信接続を開始するため、専用のコマンドキーを押した。


こうして、彼は最初の定時地上観測のデータを送信した。


佐藤は安堵の溜息を漏らしながら、椅子に深く腰掛けた。


(ようやく終わった……。あとは解析結果を受け取って、地元向けの天気報告を作るまで少し休める。とはいえ、09時、15時、21時にも定時観測があるんだよな)


(それにしても、昨夜の観測は完全にすっぽかしてた気がする。誰からも連絡が来てないのが救いだ。まだ携帯電話もない時代で本当に良かった。今の時代だったら、ミスした瞬間に上司から鬼電だろうし)


佐藤は自嘲気味ではあったが、心から笑った。


なあ、お前たちはどう思う?

最近、夜の生き物たちの鳴き声が消えていっていることについて。

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