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シレーヌはイラッとしていた。
1ダースの眷属の中で2名が戻ってこない。
血液採取のために4名が新宿の闇の中に紛れ込んでいった。
2名戻って2名が戻らない。
シレーヌは純血統吸血鬼。
眷属が12名もいる。
そして独立眷属のデンゼルという黒人を預かってもいる。
計14名のこじんまりとしたチームだ。
独立眷属というのはマスターである純血統吸血鬼が亡くなってしまって眷属支配から開放された吸血鬼になる。
通常の眷属である時はその瞳が赤い。
眷属開放されてしまえばその色も失われてしまってまっ白になる。
「もう2日···
殺られたのか?」
シレーヌは長いブロンドの髪をかき上げた。
白人の吸血鬼。
身長は172センチでスリム。
見ただけでは吸血鬼とは誰も思わないだろう。
「あの2人は歌舞伎町あたりに行ったと思う。
2名を調べに行かせた」
ここはアジトにしているマンションの1室。
外からの光が入らないように窓という窓は厳重に戸締りをしている。
室内には電気はついていて明るい。
「紫外線対策をしてか···
あれ使うと能力値が半分以下になるんだよな。
眷属なんてただでさえ弱いのに」
人間から吸血鬼の眷属になった場合、例えばその力などは3倍から5倍ほどには向上する。
どういうわけか個人差がある。
純血統吸血鬼は致命的な弱点を除けば人間の能力をはるかに凌駕した存在になる。
寿命としては人間の10倍以上はあると言われている。
あまりにも長命なためなのか子孫が産まれにくいといった欠点も持ち合わせている。
「それはそうですが···
今はどういった状況かを探ってる段階なので偵察だけでいいんですよ」
最近になって太陽の下でも歩けるようにと吸血鬼たちが使用するようになった紫外線対策。
紫外線反射クリームや紫外線反射衣類などがある。
手袋からフェイスガードまで揃っている。
ただどういうわけだかそれらを身につけてしまうと吸血鬼本来の能力が半分以下に落ちてしまう。
原因はわからない。
純血統吸血鬼たちはこれを嫌ってよほどのことでもない限りは使うことをしない。
そのため眷属用ともいった使われ方になっている。
その2名、森川と足立は歌舞伎町の通りをゆっくりと巡回している。
紫外線対策用の姿で完全防備だ。
これによってかなりの制限を受けることになる。
他の吸血鬼に対してのセンサー感覚だけは変化がない。
吸血鬼を殺せる者は吸血鬼が多い。
最近は人間たちの中からも抵抗勢力が出てきた。
侮れないものがある。