3-10
階段を降りきるといかにもな秘密基地って感じだ。
通路があって左側にドアが並んでいる。
2部屋分進むと左に曲がることになる。
思ったほど広くはないのか。
これは昔からあったような地下室なのかもしれない。
防災対策として作られた空間かな?
角を曲がると今度は右側にドアがふたつ。
そのまままっすぐ進んでいくと真正面のドアが開いている。
部屋の中に入れってことか?
月読は躊躇せず部屋の中に入った。
罠が仕掛けてあるってわけではなかった。
部屋の中は雑然としている。
住んでるとかっていうよりも研究室っていうような佇まい。
そう思えたのは機械類や紙の資料らしきものが山積みになっているからだ。
部屋の中には背中を見せている男と助手のような男の2人だけがいる。
そのアシスタントのような男が月読に顔を向けた。
特に驚いてる様子もない。
ここにやって来るだろうなと予想していたのかもしれない。
もう1人の男は月読の突然の侵入を気にしてないようだ。
自分の作業に集中している。
戸惑ってしまうのは月読のほうだ。
「2人しかいないのか?」
誰に対してでもなく思わず口にした疑問。
「なんだ?
誰だ?」
作業中らしかった初老の男が反応した。
瞳が赤いので眷属だ。
もう1人も眷属だが目が白い。
「ちょっと人探しをしていて···
ドクター方円って人物さ」
「なるほど···
ところでどうやってここまで?
見張りがいたはずだが···」
「あの狼男たちか?」
「狼男か···
まぁ、似てるんだが残念。
狼ではなくグレイトハウンドって犬だ」
「そうなのか···
どういうことだ?」
「あれはな···」と男からの丁寧な説明が始まった。
まるで学生に教えている先生のような口調だった。
もう1人の男は所在なげにジッとしている。
月読にとっては意外すぎる展開になってしまった。




