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夜7時32分。
陽はすっかり沈み吸血鬼たちが自由に動き回れる時間。
大久保周辺は昼とほぼ変わらない人通り。
人間が電気による明るさを手に入れてからおかしなことになった。
24時間いつでも活動するようになり夜でも眠らなくなった。
夜に生きる吸血鬼たちにとっては迷惑な話だ。
JR大久保駅の周りに吸血鬼たちが集まってくる。
日本式の羽織の下で戦闘用のコンバットスーツ着装なのはシレーヌとデンゼルのみ。
防弾防刃で体にフィットして動きやすい素材で作られている。
1ダースの眷属の残り10名は普通の服装でいる。
それでも全員が動きやすい服装だ。
「カッツェ委員会」は軍事を主体としている戦闘優先的な考えを持っている吸血鬼組織。
純血統吸血鬼なら戦闘訓練を受けるのは義務化されている。
眷属は希望する者か戦闘能力が高そうな者のみが受けられるようになっている。
この戦闘訓練を受けるか受けないかで戦闘成績は大きく変わる。
生存率に影響するといってもいい。
1ダースの眷属は戦闘訓練は誰1人として受けてない。
それでも人間相手なら圧倒的に強いのでわざわざ訓練を受ける必要がなかった。
10名になってしまった眷属は全員が男。
年齢にはバラつきがあるが10代から40代までの人間だった者たちだ。
腕力や瞬発力など元の人間だった時をベースにして3倍から5倍ほどに向上している。
吸血鬼化しているので夜目が効くのは当たり前。
武装はハンドガンになる。
これまでに大きな争い事には参加してないので戦闘には不慣れだ。
それでもマスターであるシレーヌの血が入っているので闘争心が旺盛になっている。
眷属になるための条件はマスターである純血統吸血鬼の血が交ざりあうこと。
そして拒絶反応が出なければ眷属として生まれ変われる。
血が合わなかった場合には全身が激しい痙攣を起こして人間として死亡する。
10名の眷属を2名ずつに分けて例の場所を中心にして取り囲むように進ませていく。
報告では純血統吸血鬼のような強力な気配ではなかったと聞いている。
そうなると独立眷属かもしれない。
中にはわりと無茶なことをしでかす独立眷属がいる。
自分たちの縄張りを荒らされちゃ黙ってるわけにはいかない。
こういったテリトリー意識というのは日本に来てから強くなった気がする。
他国との国土としての接点がないことも影響してるのか?
なんだか日本の任侠ヤクザのようでもある。




