第41話□ロッドレイ王国第2王子
毎日暑い日が続きます。皆様熱中症に気をつけてお過ごしください。よろしくお願いします。
ロッドレイ王国王宮
俺の名はアレックス·ロッドレイ。ロッドレイ王国の第2王子だ。この国の第2騎士団長も務めている。騎士になってから3年の18歳だ。剣の腕は王国一と自負している。母親似のせいか女どもは俺に夢中だ。親父や大司教は聖女には近づくなと言っていたが俺の力で聖女を物にしてみせるぜ。
「アレックス様どこへ行かれるのですか。聖女様に近づくなと言われてるはずですが」
「なあにちょっと剣の稽古をしに行くだけだよ」
「いけません!聖女様に近づいてはなりません。国の一大事になりますよ!」
「大げさだぜ!たかが女一人によー!」
ビオラの町恵みの家
ミーミルちゃんの言う事は確実に当たる!おかげであんな素晴らしい宝石細工職人と出会うことができた。
本当はすぐにでも聞いてみたいのだが怖くて聞けないことがある。それは私が元の世界に帰れるかどうかということだ。
ミーミルちゃんは関係あることは予知してくれるが関係ないことについては触れようとはしない。私が元の世界に帰れるならきっと進んで教えてくれると思う。それをしないということは今のところ少なくとも私は帰れないということだ。
向こうには両親も揃っているし、できることなら帰りたい。向こうにいたら今頃は受験勉強で忙しい時期になっていたと思う。だがこちらでは毎日お金を稼いで自分の過ごしやすい場所を作るのが精一杯だ。
こちらの世界にもいい人はいる。 冒険者のタロスさんなんかはとてもいい人だと思う。アダムさんだって私のことを分かってくれている。2人とも頼りになる先輩だ。
しかしこの世界には私にとって良くない人もいる。例えばこの王国の王族だ。自分の都合で呼び出しておいて役に立たないと見るやすぐに排除しようとする。褒美をやると言って招いて剣を向けて斬ろうとするバカもいる。王族や貴族はこれからも関わらない方がいいな。
ただせっかく人を助ける力があるのだからこれからも進んで治癒魔法は使っていきたい。今日はセントラル病院に来て患者の治療をしている。重症患者は10人ほどなので午前中で終わって帰ることになった。
帰りに冒険者ギルドに寄ると何か騒ぎが起きていた。なんか受付ともめてる男がいる。
「だーかーらー聖女がどこに住んでいるか教えるだけでいいんだよ」
「いくら第2王子様といえど個人情報は流出させるわけには参りません」
「頭硬えなー」
「あのー私の名前が出ていたようですが何かありましたか?」
「おお、お前が聖女か?俺はアレックス·ロッドレイこの国の第2王子だ。今日はお前に剣の稽古をつけてやろうと思って来た。ありがたく思え!」
いきなり来て何言ってんだこの人?私に剣の稽古なんかつけてどうしようって言うのかしら?
「殿下私は剣士ではありませんので剣の稽古は必要ないと思うんですが·····」
「しかしお前は戦いで剣を使っているというではないか。ならばこの国随一の剣の使い手である私が手ほどきをしてやろうと言っておるのだ」
こいつ魔王軍と同じぐらい人の話を聞いてないな。これは戦うしかないのかな?
「はあ分かりました。それではお願いします」
冒険者ギルドの訓練場に行って剣の稽古をつけてもらうことになった。第2王子には付き人が10人ぐらいいたが皆困ったような顔をしている。多分この王子の独断でここに来たのだろう。王子は木刀をもって自信満々で待っている。
私は木刀を2本持ちプロテクションを張る。魔力の腕を伸ばして王子に向かい合った。
「ほう二刀流か」
「いつもは10本使うんですけど。取りあえずこれでお願いします」
王子の踏み込みは速く一瞬で私の前に間合いを詰めてきた。なるほど剣ができるっていうのはまるっきり嘘ではないようね。
片方の木刀で防いでもう片方で相手に斬りつける。私が防いで斬りかかると王子はそこから逃げる。それをずっと繰り返していた。正直何がどう優れているのか全く分からなかった。
「もうよろしいでしょうか?」
「はあはあ、何を言っているまだ始まったばかりだろう。もっと全力でかかってこい!」
「それじゃあ4本でお願いします」
「おう!」
カン!カン!カン!ボコ!カンカン!ボコボコ!カンカン!ボコボコボコ!カン!ボコボコボコボコ!
「はぁはぁはぁうげぇまだだ····」
「もうやめた方がいいのではないですか?」
カンカン!ボコボコボコボコボコ!カン!ボコボコボコボコ!
ついに王子は倒れてしまった。動けないようだ。これは治療しないとまずいだろうな。
「ミドルヒール」
「まだまだだ!」
「はあ」
カンカン!ボカボカボカ!カンカンボカボカボカ!
「ミドルヒール」
何でまだ続けるのか全然意味がわからないわ?それに剣術の素晴らしさっていうのもちっとも分からないし。5回回復させたらついに王子は何も言わなくなった。私は失礼して帰る事にした。王子はすっごく悔しそうな顔をして帰って行った。
「あのータロスさん。アベルさん剣術の素晴らしさって何ですか?王子と戦っていてもよく分からなかったんですけど」
「うん。そりゃああんたと戦ったら多分分からせる事は出来ないかな。剣術ってのは打ち込む時に両手を内側に絞るようにするといいぞ」
「そんなコツがあるんですね。アベルさんありがとうございます」
言われた通りにやって見ると今までとは違う音がした。へぇ~すごい!私でもちょっとは変われるんだな。
「しかしあの王子は何をしに来たのかな?」
「セイそれは王子が可哀想だろ?分からないのか?」
「············?」
「あいつは剣術が得意だからお前の前でいい格好がしたかったのさ。それをお前が完膚無きまでに叩きのめしてしまったからなー」
えーそうだったのか。あいつあれでも私に好意を持っていたのか?ん〜?分からないわ?アベルさんてすごいな!よく分かるわね。
「手加減はしましたけどね。そういう問題じゃないですね。あーまた来たら嫌だなー」
「しばらく他に行ってたらどうじゃ?」
「なるほどーじゃあ帝国に行こうかな。あの国は失礼な人はいないし金払いもいいからな」
「まあそれでもたまには連絡をよこすんじゃぞ」
「連絡ってどうすればいいんですか?」
「冒険者ギルドなら連絡通信機能があるぞ」
「連絡通信?」
電話みたいな物か。それなら様子を聞いてから戻ってくればいいな。
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