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彼が散り去った後に

 それから数日後。

 事態に収拾を付けるための会議が招集された。


「どうしろと言うんじゃ、これは……」


 会議の上座、議長の席で憔悴した顔で国王は頭を抱えていた。

 もちろん我が子である第二王子ミゲルの死を悲しんだということもある。

 だがそれ以上に、国王としてこの難題に始末をつけねばならぬと言う責任感が、彼を苦しめていた。


 そもそもの発端が、王命の婚約に不満を抱いた第二王子の暴走。

 言ってしまえば、王命に背いたわけである。

 さらに、それを諫めるべき側近達も加担した。

 そしてそれを煽ったのが男爵令嬢だった。


 彼らを問い詰めようにも、軟禁していた離宮にて、レイモンドに全員斬り殺されてしまったのだから、時すでに遅しなのだ。


「第二王子ミゲル殿下の学園内での振舞いに関しましては、色々と問題があったようです。教師や生徒から、様々な証言が……」

「つまり、問題ないという文言ばかりが並ぶ近衛騎士が上げていた学園内の報告は、虚偽であったと」

「それも、ミゲル殿下の差し金だったようでして……」


 あまりのことに、国王は天を仰いだ。

 近衛騎士と一口にいっても、家柄も兼ね備えた精鋭もいれば、家柄だけで取り立てられた不心得者もいるということは、以前から問題視されていたことではある。

 そして第二王子ミゲルからミシェルの護衛にと選ばれた面々は、ミゲルに媚びを売りへつらっていた輩であった。

 虚偽の報告を上げていたのも彼らであり、半ば第二王子の取り巻きと化していたのは明白であったため、事件の直後、ミゲル達とともに移動させ、離宮に警備という名目で詰め込まれていた。

 その結果、全員が乗りこんで来たレイモンドを侮って立ち向かい、斬られて死んでしまったわけだが。


「何を迷っておられるのです! 王族殺しとしてレイモンド・カークスの一族郎党は皆殺し、主であるグラナダ侯爵にも責任を問わねばなりますまい!」

「レイモンド・カークスはな、天涯孤独なのじゃよ」

「……は?」


 人事を預かる老貴族が淡々とした声で言えば、息巻いていた貴族が間抜けな声を漏らす。

 彼は、レイモンド・カークスについて何も知らなかったのだ。

 彼から見れば所詮身分の低い一介の騎士爵だ、歯牙にもかけていなかったのだろう。

 だからといって、この機会にブライアンを失脚させたい彼としては、その程度で怯むわけにもいかないが。


「な、ならばグラナダ侯爵に責任を取っていただかねば!」

「レイモンド・カークスは、我が娘ミシェルの件で心を病んだため、解雇しております。

 解雇通知書はこちらに。また、療養のため、我が領地へと向かわせました。こちらは門を出る際の記録になります」


 淡々とグラナダ侯爵であるブライアンが証拠を提示すれば、国王はそれらに目を通して小さく頷く。


「……ふむ。療養に向かう途中で暴れ出し、御者や随伴の騎士を叩きのめした後、王都へと引き返してきたようじゃな」

「グラナダ侯爵領へと向かう街道の途中で、扉が壊れた侯爵家の馬車が見つかっております。

 また、レイモンド・カークスが暴れた際に殴られ気絶していた御者と騎士からの証言とも一致いたしました」

「つまりグラナダ侯爵は、心を病んだレイモンド・カークスに対して為すべきことはしていたと」


 王都とその周辺の治安を担当する騎士団長が補足の説明をすれば、先程の貴族も言葉に詰まる。


「で、ですがそれでも、彼奴を抑え込めるだけの人数を用意すべきであったのではないですか!?」


 それでも、何とか追求の言葉をひねり出したのだが。


「結果論じゃな。そもそも、近衛騎士が数十人がかりで止められなかった男を、侯爵家の私兵のみで抑え込めというのは無理があろうぞ」

「ぐぬぬ……」


 流石にこう言われては、言葉を返すわけにはいかない。

 返してしまえば、すなわち王家が揃えた近衛騎士団よりも侯爵家私兵団の方が強いと言ってしまうことになる。

 そんな発言をしてしまえば、不敬であると追求されるのは彼となってしまうだろう。


 だが、異議のある者は他にもいる。


「そもそも、レイモンド・カークスは本当に狂っていたのですか?」


 当然と言えば当然とも言える疑問に、離宮の警備責任者である近衛騎士の隊長が答えた。

 彼は、あの現場で実際のレイモンドを見ていた。その剣技も、顔も、纏う空気まで。


「彼は離宮に入る時から最後まで、自分は気狂いであると繰り返しておりました。感情を揺らすことなく、淡々と。

 それも、彼の目的が達成されたその瞬間においても、です。これが復讐のためであれば、雄叫びの一つもあげるのではないでしょうか」

「むう……それもそう、か……」

「それ以上にですね、彼がまともな状態ではなかったことがはっきりする物証がございまして」


 そう言って彼が提示したのは、斬り裂かれた鎧だった。


「剣の一太刀で金属鎧を斬り裂くなど、まともな人間の成すことではございません。

 また、彼はその身にいくつもの切り傷があり、何より公爵家令息様のフレイムランスを三発も受けておりました。それも、全て直撃です」

「まて、あの令息のフレイムランスを、三発もだと!?」


 高位貴族は、魔力が高いことが多い。

 例にもれず、件の公爵家令息もまた高い魔力を持ち、その魔法の威力は貴族が集まる学院内でもトップクラスであることは知られていた。

 であればそのフレイムランスは並の人間であれば一発で致命傷となっていただろうに。

 レイモンドは。男爵家出身でしかないレイモンドは、それに三発も耐え、その上でなお尋常ならざる剣技を見せたことになる。


「彼はあの時既に只人(ただびと)ではなくなっていた、伝説に言うところのバーサーカーになっていたとしか思えないのでございます」

「狂気に身を支配され、人ならざる力で破壊を振りまく存在、か……確かにそうとしか思えぬな、この有様は」


 易々と切り裂かれた断面にこびりつく、赤黒い痕跡。

 これを着て動いている人間もろともに斬り捨てられたことが容易に想像出来てしまい、その場に居た全員が身震いをしてしまう。

 そんな存在が暴れた結果はもはや事故、いや、それを通り越して天災と言っても過言では無いように思えた。


「これは、どうにも出来ぬことであった。よって、グラナダ侯爵に責は問わぬものとする」

「ははっ」


 国王が裁定すれば、居並ぶ貴族達は頭を下げた。異を唱える者は、一人もいなかった。

 

 はぁ、と息を吐き出す者もいたが……これで終わりでは、なかった。


「次に、第二王子ミゲルの暴走に関してだが。

 サンフィールド公爵、そなたと側妃がミゲルによからぬことを吹き込んでいたという調べはついておる」

「……これは異なことを。まるで心当たりがございませぬな」


 いきなり問い詰められたというのに、老獪なサンフィールド公爵は微塵も揺らいだ様子がない。

 孫にあたる第二王子ミゲルが死んだというのに、それを悲しんでいる素振りもない。

 彼にとってミゲルは道具でしかなかったのか。

 国王はゆっくりと息を吸い、吐きだし。もう一度吸って。


「言い逃れは無駄だ。側妃が全て話したからな」

「なんですと? あれが?」

「ああ。よほどミゲルの死が堪えたらしく、それこそ気狂いになってしまわんばかりに取り乱しておったから、聞けば聞くだけ答えてくれたわ」


 その時の様子を思い出した国王の顔が、歪む。

 母が子の死に際して見せた有様だ、あれを醜態と呼びたくはない。その程度の情は残っている。

 だが、口走った内容は流石に看過できなかった。


「第一王子オスカーを退けミゲルを王位につけるには、グラナダ侯爵の娘では不足と思い、あらぬことをミゲルに吹き込んだようだな?

 従兄弟であり側近でもあった孫まで使って、実に周到なことよ。

 これは王命を覆さんとする反逆行為にしか思えんのだが」

「反逆など、とんでもない! 私は王に心からの忠誠を誓っております!」

「ならば何故、儂がミゲルに対して繰り返し言い含めたことを全て覆すようなことばかり吹き込んでいた?

 そのせいでミゲルの誤解と増長は膨らみ、挙句がこの結果だ!

 貴様らがミゲルを死に追いやったようなものだと自覚はないのか!」


 国王とて人の親、馬鹿な子ほどかわいい、ということもある。

 だが、昨今のミゲルは明らかにそんな可愛いものではなくなっていた。

 おかしいと思いながらも諭していたが、ミゲルにばかりかまけているわけにもいかない身。

 側妃やサンフィールド公爵に教育を託していたのだが、まさかこんな愚かな結末に繋がるとは。


「貴様の言い分はわかった、つまり無自覚に反逆を行うような人格ということだな!

 もうよい、追って沙汰を申し渡す故、この者を貴族牢に引っ立てい!」

「お、お待ちください陛下! わ、私は! き、貴様ら何をする、離せ、離せ!!」


 国王の命令に従って騎士達が抵抗するサンフィールド公爵を取り囲み、老体に縄を打って引っ立てていく。

 言うまでもなく反逆は大罪、彼が日の目を見ることは二度とないだろうし、側妃も正気を取り戻す間もなく儚くなることだろう。


「……伯爵はいかがいたしました」

「騎士団長の職を辞し、爵位も返上すると申し出て来た故、それを承諾し、此度の罪科については免除することとした」


 ミシェルを斬った伯爵令息は、本来であれば準王族殺しであり、本人の極刑はもちろん、連座で一族皆殺しも十分ありえた。

 だが伯爵が爵位返上を申し出たことで、あくまでも令息個人の暴走であり伯爵家に叛意はなかったと示されたため、それを受け入れて納めた形である。

 甘いと言えば甘いが、騎士団長の今までの功績を考えてのことでもあった。


 これで、一連の処遇は終わった。

 その光景を、ナインルート公爵はわずかに笑みを滲ませながら見ていたのだが。


「……これで終わりと思うなよ、ナインルート公爵」


 不意に、第一王子オスカーがそんな穏やかならぬことを言い出し、一同の注目が集まる。

 これには流石のナインルート公爵も不意を打たれたか、すぐには言葉が出てこない。


「ミゲルの教育をしていた教師達の中で、目立たぬようにしながら、その実ミゲルの思考を歪めるような教え方をしていた教師がいてな。

 それが、よくよく調べてみればナインルート公爵派閥の家の、縁戚だったんだが……知っているか?」

「はて、そのようなことは存じませぬが。仮にそうだとして、私に何の関係が?」

「ああ、はっきりと関係があるとはわからなかった。

 それから、陛下の帰還が遅れた、橋の倒壊事故。その直後にナインルート公爵領に居た多数の人足や土木技師が行方不明になっているな?」

「人足に技師……いずれも平民でございましょう? そのような些事、我が耳には入ってきませんが」


 詰問口調のオスカーに対して、ナインルート公爵はのらりくらり。

 確たる証拠もない様子に、何故無駄に終わるとわかっている問答を、と周囲の貴族達は不審に思ったのだが。

 ニヤリ、とオスカーの口の端が上がった。


「ああ、いずれも平民だ。……ナインルート公爵領の土木技師には男爵位持ちもいるのに、何故平民ばかりとわかった?」

「な!? い、いえ、その者の動向は私も把握しておりますゆえ」

「ほう、把握している割には、随分と狼狽えたものだな?」


 慌てて言い繕う公爵へと、向けるオスカーの視線は厳しく、冷たい。

 その目には、強い確信が宿っていた。


「例えば、橋を落として陛下のご帰還を遅らせれば、ミゲルがパーティで暴走するかも知れない。

 そうなるように思考誘導もした。そういえばあのコニーとかいう男爵令嬢も元平民で、出自があやふやなようだな」

「そうお疑いになるお気持ちもわかりますが、しかし全て当て推量でございましょうに!」

「ああ、その通りだ」


 語調を強くして言い返す公爵へと、オスカーは頷いてみせる。

 その様子に、公爵の背筋は震えた。

 自身の言い分が認められたというのに、それが大きな過ちに思えて。

 そして、それは間違いではなかった。


「だが、疑いは持った。その気持ちはわかると、公爵も認めたな? だから、私は疑う。お前の言動を、全て。

 それは、今だけに限らない。今後一切合切、ナインルート公爵の提案、意見、行動、ありとあらゆるものを疑い、全てに監視をつける。

 お前はそれだけ疑わしいことをしたのだ、嫌とは言わせん」


 きっぱりと言い切られたその発言内容が脳に浸透するにつれ、ナインルート公爵の身体は小刻みに震え出す。

 全てに監視を入れられ探られてしまえば、今までかすめ取ってきた様々な権益に手が出せなくなる。

 そうなれば、その権益を目当てに集まっていた派閥の家々は、離れていくのは間違いない。

 そしてそれを、公爵より遙かに若く、次代の王となることが確定した第一王子が宣言したとなれば……彼の生きている内に、主導権を取り戻すことなど出来はしないだろう。

 唯一、彼をも暗殺すればあるいは、であるが、当然そんなことはオスカーもわかって手は打っているだろうし、彼に何かあれば一番にナインルート公爵が疑われるのは間違いない。

 それはつまり打つ手がないということであり、貴族としての彼は終わったも同然になったということで。

 貴族としての生き方しか知らないナインルート公爵は、がくりと力無く項垂れた。




 そして、会議は終了となったのだが。

 ブライアン以外の貴族が退席したところで、国王と第一王子オスカーはブライアンの傍へと歩み寄った。


「グラナダ侯爵……我が愚息が、すまなかった。私の教育が間違っていた」


 そう言いながら、国王は頭を下げる。

 彼とてこの一件で息子を失った。

 だがそれはミゲルの自業自得としか言いようがない上に、彼には国王としてなすべきことを為さんとする責任感があった。

 そしてまた、グラナダ侯爵ブライアンも貴族であった。


「頭をお上げください、陛下。謝罪を、受け入れます」


 彼が決起すれば、国を二分する内乱へと発展させることも可能だろう。

 だがそうしなかったのは、国への忠義ゆえ……ではない。

 レイモンドが気狂いを演じて守ったグラナダ侯爵家のためであり、侯爵領に住む人々のためである。

 そのことは、国王ももちろんわかっていた。

 故に、受け入れられた後も、ゆっくりとしか頭を上げられない。


 それから、国王の隣にオスカーが進み出る。


「グラナダ侯爵……礼を言って良いことなのかはわからないが、一つ伝えさせて欲しいことがある。

 今回ナインルート公爵を追い詰めることが出来たのは、レイモンド・カークスのおかげなのだ」


 曰く、王族殺しという大事件が起こったことで非常事態に移行、普段ならば持つことが出来ない権限をオスカーは持つことが出来た。

 婚約者である公爵令嬢の助言があったとはいえ、その権限を利用しなければあそこまでの情報は集まらなかったに違いない。


「弟の死を利用したようで、人間としてどうかとは思うけれど……次代を担う者として、この機を逃すわけにはいかなかった。

 何しろ、それでもなお、決定的な証拠は掴めないような相手だったからね」


 犯罪としての立証は出来なかった。しかし、政治生命には致命傷を与えることが出来た。

 ナインルート公爵のような人間には、ある意味で死よりも辛いことかも知れない。


「……左様でございますか。であれば、あの者も少しは浮かばれましょう」


 レイモンドの死は、そしてその起因となったミシェルの死も、未来を考えれば無駄ではなかった。

 そうでも思わなければ、やっていられない。

 ただ、無駄にしないでくれたことには感謝すべきなのだろう、きっと。


「……レイモンド・カークスは、どこまで見通していたのだろうな……」


 ぽつりと、オスカーがつぶやく。

 彼が一角の人物であると認めた男は、どこまで見通していたのだろうかと、答えを得られぬ問いがよぎる。

 恐らく、全てであったのだろう。レイモンド・カークスは無骨な男だったが、知恵の回る男でもあった。

 そして彼の考えが読めたからこそ、ブライアンもそれに合わせた手が打てた。

 しかし、それを口に出して認めるわけにはいかない故に。彼が身を犠牲にして打った一手を最後までやり遂げるために。

 ブライアンは、こう答えた。


「さて、わかりかねます。レイモンド・カークスは、気狂いでございましたから」


 と。





 こうして、第二王子の愚行に端を発した騒動は、様々な傷痕を残して幕を下ろした。

 この一件は貴族社会の婚約・婚姻における教訓として語り継がれ、結果として政略結婚であっても相手を軽んじることが減っていったという変化は、評価していいことなのかも知れない。


 この数年後、国王はまだ体力的に問題がなかったにも関わらず、王位をオスカーへと譲った。

 むしろすぐにでも責任を取って譲位したいくらいだったらしく、急ピッチで引き継ぎを進め、それでもなお数年かかった結果だった。

 

 そして新たな国王となったオスカーは、すぐさま即位による恩赦を実施、その中でレイモンド・カークスの罪を免じると発表した。

 正確に言えば、あの事件の時点で第二王子ミゲルは薬物により精神に異常をきたしていたことが判明したため、遡って王族としての地位と権限を剥奪、レイモンド・カークスの行動は主家の敵討ちであるとしたのである。

 これは全てが嘘というわけでもなく、どうもそうらしい、程度の証拠は見つかった。

 それを元に王家が発表してしまえば、それは真実となる。

 だから、レイモンド・カークスは王族殺しの逆賊ではなくなった。


 これは存外に反響が大きく、それまで密かに美談として語り継がれていたものが一気に表に出て、演劇や小説の題材として取り上げられることになる。

 また、グラナダ侯爵領では私設騎士団の中でも特に腕が立つ面々を集めた『カークス騎士団』が結成され、レイモンドの生き様に心を打たれた騎士達がこぞって集まり、鍛え、その名に恥じぬ精鋭集団となっていった。

 後にブライアンがグレアムへと侯爵位を譲る際には「この侯爵領には千人のレイモンド・カークスがいる。彼らに恥じぬ当主となれ」と語り、その心構えは代々の当主に語り継がれ、最も高潔なる貴族として長くその存在を知らしめていくことになる。


 このように、様々な形で後世に影響を与えることになったレイモンドだが……ことに大事なのは、その罪が赦されたことだろうか。


 グラナダ侯爵領にある小高い丘に屋根付きで建てられたミシェルの墓には、領民達が足繁く通い、花が絶えることのない程。

 そんな彼女の墓に寄り添うように。あるいは守るかのように一本の剣が刺さっている。

 あの日、混乱の最中、一人の心ある近衛騎士が持ち出し、後にグラナダ侯爵家へと届けてくれたものだ。

 赦された故に、彼の愛剣は誰に憚ることなくミシェルの傍に立つことが出来ている。


 あの修羅場を越えてなお、折れず、曲がらず、欠けず。

 どれだけの技量があればそんなことができるのかと数多の剣豪に言わせたその剣は、持ち主の心根そのままの姿で、いつまでもそこにあり続けたという。

※これにて本作品は完結、ここまでお読みいただきありがとうございます。

 私には珍しい作風の内容でしたが、どのようにお感じになられたでしょうか。

 

 もし『良かった』と思っていただけましたら、下にある『いいね』や『☆』でのポイント評価をいただけるととても励みになりますので、よろしければ。

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― 新着の感想 ―
何度読んでも泣きます。 人が心動かされる物語は、時がたっても本筋は変わらないなと ただ単に私のツボなのかもしれませんがw
[一言] このカークス騎士団に、レイモンドの遺した剣を届けてくれた騎士とか、アホの王子の護衛をさせられた親衛隊が志願して加わってくれたらなあとかそんな(えもい
[一言] 短編を読んだ後では、途中までの穏やかな日常も泣けました。 短編ともども、すばらしい作品をありがとうございました!
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