010 さよなら、私のやわらかい神様
神様ってやつはいつでも残酷だ。天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず。そうは言っても現実的に貧富の差や身体能力の差なんてものは存在しうる。
かくいう私も生まれついて、目が見えなかった。
暗闇。それが私の世界の全てだった。きっとこれは永遠に続き、私からすると暗闇というものでさえ“普通”であり、本当の光なんてものは知り得るはずもないことだった。
そんな私でも、光とはこういうものか。というものに出会えた。それは一般的にいう光、太陽光のことではなかったけれど、暗闇が全ての私には確かにかけがえのない光だったのだ。
「わぁ、やわらかい。すべすべしてて、ひんやりしてる。」
最初触れた時はびっくりした。私が触れるものは木や鉄など、冷たく硬いものが全てだったのだ。
柔らかいものというと、温かい人の温もり。私を安心させてくれるお母さんの肌。それくらいだった。
それが、冷たいのに柔らかい。そんな不可思議な感触と共に、私に刺激を齎せてくれたのだった。
「これはなんだろう?」
私は暗闇の中で、必死にそれを探る。それの輪郭は丸っぽい?ボールみたいな形だ。
でもどこか流動的で、ぐにゃぐにゃと私の手を押し返して、反発してくる。
その面白い感触に私は楽しくなってしまい、そのままそれにずぷりと手を入れ込んで……!!
「わっ、手が入ってく!!」
それは物体ではないのか?それは私に反発していたのにも関わらず、私を向かいいれるように、手をずるりずるりと滑り込ませていける。
冷たく、柔らかい。それだけでも不思議なのに、まさかもっと不可思議なことがあるなんて!!
「っ……!!あはは!!」
ピリッと私の手が痛む。冬の時期に水をかけた時のように、冷たくなって痛くなってしまったのかな?
でも、それさえ私には道が吉になる感覚を覚えて、楽しくなっていく。
ふわふわと身体が温かくなり、世界が色づいたように暗闇の世界から抜け出せる。
「ふふふ。」
ずぷり、ずぷりと私の手がそれに飲まれていく。手が飲み込まれ、腕も飲み込まれ、そして体さえもがそれに触れた。
冷たさ、柔らかさに私はやはり嬉しくなる。お母さんのような暖かさはないけれど、私とそれが一体になるような感触。
ふわふわと空を飛んでるみたいに、想像だけが白に染まる。
「ふわ〜。寝ようかな。」
私は唐突に眠くなる。
すやすやと私は目を閉じていく。きっと次は私とそれが一体になっているだろう。
そんな面白い感触を夢見るように。私は唯一の光に抱かれながら、深い深い眠りについていった。




