表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グロウ・ソウル  作者: PIERO
選抜試験編
57/57

集結する悪

「リ、リーダー・・・いてぇよぉ・・・体がいてぇよぉ・・・」

「や、やめてくれ・・・・。リー・・・ダ・・」

 肉が裂け、血しぶきが辺りを飛び散らす。本来緑色の森は人の血によって鮮やかに染められ、肉は大地と一体化していた。

 そしてその中心に居座って肉を頬張っている人物は、和貴とコハルを追っていた奴隷商人のリーダーだった。

 肉の正体は言わずとも奴隷商人の仲間の肉であった。満腹感に満たされた奴隷商人のリーダーは自身の意識を取り戻したのか、辺りを見渡す。そして何が起きたのか察した。

「また同じ幻覚か・・・。すまない。必ずお前らの仇を取ってやるからな」

 その男に残っていたのは後悔と懺悔だった。何故このようなことが起こっているのか、それは和貴が一度奴隷商人のリーダーと戦った後に時は遡る。




 和貴と戦い終わった奴隷商人は自らの心臓を抑えていた。その様子に部下は心配したのか、リーダーに近づいて話しかけてきた。

「リーダー?大丈夫っすか?」

「ああ、大丈夫・・ダ。問題ない。この心臓がなじむのに時間がかかっているダけダ」

 手渡された水を飲み、呼吸を整える。それだけでも奴隷商人のリーダーの精神は落ち着いていた。すると、奴隷商人のリーダーの仲間でもひときわ目立つ人物が話しかけてきた。

「ボ、ボス・・・お、おでの役目は・・・まだだ?」

「ああ、まだシャドウがここに来ていない以上迂闊に行動することはできない。あいつらの仇を取ることも重要だが、今は合流することが第一優先だ。ならば我々は待機せねばならん・・・。悪いが、その水を取ってくれないか?」

 太った男は指示された水を手に取り、リーダーに手渡した。それを一気に飲み干し、水筒の中身を空にする。本人は異常を感じていないようだったが、部下達は違った。一時間に二リットル以上の水を飲んでいるこの状況は明らかに異常であった。

 しかし、皮肉にもリーダーを信頼している部下達はそのことを指摘することが出来なかった。すると丁度いいタイミングで彼らが待っていた人物が到着した。

「おやおや、ずいぶんと体調が悪そうですね?病気にでもかかったのですか?」

「その声はシャドウか。随分遅い到着だったが、何かあったのか?」

 不気味な雰囲気を纏い、微笑しているかのように影は揺れる。リーダーはシャドウという人物に対して恐れはしないが何を考えているのかわからない節があった。

 シャドウ自身は組織に忠実であるため、味方を裏切ることは決してない。だが、今回に限ってリーダーは嫌な予感しかしなかった。

「いや、あなたと同じですよ。ここに来る前に腹痛を起こしてしまってね。それで一日遅れてしまったんです。ええ、本当に・・・・()()()()()()()()()()()()()()

 一体どういうことだと問い詰めようとした時、シャドウとリーダーを除く全ての人物が一斉に倒れた。的確に急所を貫いた影はまさに即死であったことを証明していた。

 いきなり攻撃してきたこと、そして何より仲間を殺したことに関してリーダーはシャドウに問い詰めようとしたが、一歩も踏み出せずに影によって貫かれた。

 リーダーは口から黒い血をこぼし、その様子をシャドウは嘲笑う。

「ふふふ、こういう時は確か汚いなんとやらと言うのでしたっけ?まぁ、私はそういう知識に疎いのでよく詳しくは知りませんが・・・」

「し、シャドウ・・・何の真似だ・・・」

「あ、()()()()()。もう必要ないんで。本当は生かしてもよかったんですけど、やっぱり最後はこうみじめに死んだ方が面白いのでつい嘘を言ってしまいました」

 心の底からリーダーは怒りがこみ上げてきた。確かに自分達がやってきたことは許されないことだろうと認知していた。だからせめて部下だけでも無駄死にはしないようにと努めてきた。だからこそ、目の前の人物に遊び半分で部下を殺されたことが許せなかった。

「き・・・さま・・・調子に・・・乗ってるんじゃないぞ!!!」

 シャドウが油断しているところを見てリーダーは飛びつく。しかし、それも読まれていたのかシャドウの影によって両手を切断される。

 両手を失ったリーダーは殴ることも出来ずその場に転ぶ。すると人間とは思えないほどの高笑いをシャドウはする。

「くははははwwww。ここまで笑ったのは三日ぶりだwww。想像以上に面白い反応を見れて面白いよ君!!いやどうしよう、本当に生かそうかどうか悩んできたな・・・。命乞いの一つでもしてくれたら、考えよっかな~」

 これが奴の本性なのかとリーダーは理解する。悪人を何人も見てきたリーダーにとって目の前にいるこの人物はこの世にいてはいけないほどの邪悪な存在であることを理解した。

「ほらほら~。は・や・く!!い・の・ち・ご・い!!してよ~。そうすれば少なくとも君は助けてあげるんだよぉ~」

「断る。貴様に生かされるなら俺は死んだ方がましだ!!」

「んん~!言うと思ったよそのセリフ!だからちょっとでも生きる糧を与えようと私は考えたのです!!」

 するとシャドウは奴隷商人のリーダーの部下達の心臓を農家が作物を収穫するかのように一つ一つ取り始めた。これから何をするのか理解したリーダーは動けない体で必死に抵抗する。

「や、やめろ!!貴様!!ま、まさか・・・」

「そのまさかさ!君の命がいらないというのであれば、この部下の心臓を君に食わせれば君は死なずに済む。加えて、部下からもらった命を無駄にするほどあなたは薄情な性格ではない。まさに一石二鳥!!部下を殺さずに、己は生きる!!実に素晴らしいと思わないか?」

「どこが一石に「はいシャラ~プ!じゃあ、お口を開けて?あなたの能力は口から心臓を摂取することで命のストックを手に入れることが出来ることはもう理解しているので」

 そう言ってシャドウはリーダーの頬を影で切り裂き、無理やり部下の心臓をねじ入れた。リーダーは拒絶したかったが、噛む力を失った顎ではそれを抵抗することはできなかった。

 一個、、また一個と心臓が喉にねじ込まれる感覚は吐き気を覚えた。そして拷問に近い行為を受けたリーダーは倒れ気を失おうとしていた。そしてその様子を楽しみながらシャドウは狂ったかのように笑い始めた。

「やっぱり!!人を愚弄する行いは最高だ!!!ひゃははははwwww」

 その忌々しい笑い声がリーダーの意識の最後だった。そして目が覚めた頃には既に何もかも失っていた後であった。

 シャドウによる皆殺しから何日たったのか理解できなかった。だが、リーダーの行動の原動力として成り立っている理由が二つあった。

 一つは和貴の抹殺であった。和貴も部下を殺したので何としても仇を取らなければならない。何もかも失った今、その決断を疑う余地はなかった。いや、余裕がなかった。それほどまでにリーダーの精神は壊れかけていたのだ。

 そして二つ目が残りの部下を殺したシャドウを殺すことであった。だが、シャドウの行方は分からずどこに行ったのかもわからない。こればかりは何年たっても必ず仇を取ると決めていた。

「待ってろ。必ず、俺が仇を取ってやるからな・・・ウッ!!」

 リーダーは心臓から来る激痛に呼吸をやめ胸を抑えた。水を取っていなかったことが原因なのか苦痛は徐々に増していく。このまま死んでしまうのかと思ったその時、目の前に予想外の出来事が起きた。

「あん?何でこんなところに人間が居やがる?・・・っち、見捨てるのも後味が悪いし拾っていくか」

 そう言ってリーダーを拾った人物否、真似猫族のリーダーであるゲンセツが仲間を呼び運び始めた。

 一体何が起きているのか理解できなかったが、目をつぶっているといつの間にかどこかに運ばれていた。体を見ると至る所に包帯で巻かれており、失った両手は義手のような物を付けられていた。何が起こったのか理解できなかったがその疑問を解くカギが目の前にいた。

「・・・猫か?」

「目覚めの挨拶がそれか。失礼な奴だな。まぁ、初見は許すけどよ。俺はゲンセツって言うんだ。てめぇはなんて言う名だ?」

 リーダーは名前を名乗ろうとしたが、それをためらった。情報が漏れる可能性があるからではない。今ある名を捨てたかったためである。目の前の猫ならぬ真似猫族のゲンセツに話しかけた。

「事情があって名を捨てた。今はナナシと名乗っておこう」

「・・・わけは聞かないでおこう。それでナナシさんよ。お前はこの爆弾を背負った状態でどこに行こうって言うんだ?」

 爆弾の表現が理解できなかったナナシはどういう意味なのか説明を求めた。するとゲンセツは呆れた表情でナナシの現状を説明し始めた。

「呆れた野郎だな。自分のことすら無視して目的を達成しようなんてな。簡潔に説明するとだな、お前の体には爆弾が詰まっている。言っておくが比喩じゃねぇぞ。しかしだからと言って機械仕掛けじゃない。大方てめぇは心臓を扱う能力系だろ?」

「・・・そうだが」

「なら、話は簡単だ。お前の体には『代償』が蓄積もしくは過剰にため込みすぎてるんだ。どんな能力なのかは知らねぇが、一度代償を取り除いた方がいいぜ。じゃないとお前の身体は破裂する」

「なら、問題ない。喜んで破裂しよう。俺にはやることがある・・・」

 ナナシはベットから起き上がろうとしたが身体の身動きが取れなかった。一体何が起こっているのかと足を見てみると一部が植物と化していた。

 ナナシは叫びたくなる衝動を抑え、ゲンセツに説明を求めた。

「俺の足に何をした!?」

「何もしてねぇよ。野郎どもがお前の治療を始めた時にあったんだよ。だがこれは間違いなく神仏族

『ユグドラシル』の能力の一端だ。お前、ユグドラシルの墓標で一体何をした?」

 ナナシは観念してゲンセツに何をしたのか話し始めた。巨大樹を掘り、遺体から心臓を奪ったこと、その日以降から急激に水を求める様になったことそのことを聞き終えたゲンセツはある結論に辿り着いた。

「もしかして、ユグドラシルは生きてるかもしれないな」

「何?神仏族が生きてるだと!?俺の体内の中で!?」

「話を最後まで聞けって。要は能力だけが暴走してお前の身体を乗っ取ろうとしているって話だ。最終的には人格も全て雪のように白くなるんだろうな。かかるのにざっと一周感も掛からねぇだろうな」

 そこまで言われ、ナナシは焦り始めた。残り一週間が己の寿命。そう宣言され、ナナシは不快絶望に叩き落とされそうになった。だが、とゲンセツは言葉を続けた。

「それは自身の能力を制御しきれなかった場合の話だ。・・・これも何かの縁だ。しばらく俺のところで世話になれ。目の前で死んでいく奴を見捨てるほど俺は堕ちちゃあいねぇよ」

 握手しようとしているのか、ゲンセツは手を出した。ナナシは握手する前に疑問をいくつか質問し始めた。

「この能力を間然に操作するのにどれくらい時間がかかる?一年か?それとも半年か?」

「能力の専門の俺達を舐めるなよ。ざっと一か月だ。それで制御させて見せる」

「俺にはやることがある。それを聞かないでくれないか?」

「そんなこと聞きたくもない。俺は面倒ごとは嫌なんだ」

 そこまで聞き、ナナシはゲンセツの返事に返答する。

「なら、この一か月の間宜しく頼む」

「おうよ。まずは三日で暴走を止める。能力の制御は其れからだ。とりあえず、腹が空いてるだろ?その義手に慣れる為にも飯を持ってくるからちょっと待ってろ」

 ゲンセツが部屋から出ようとした時、ナナシはとある疑問に関して気になったためあ、ゲンセツを呼び止めた。一体何の用かと思い、ゲンセツは耳を立てた。

「そう言えば、何で真似猫族のお前が言葉を喋れるんだ?」

「・・・・何でこう、変な知識が世界中に出回っているんだ?」

 ゲンセツは呆れてその質問に答えなかったが、怒りは覚えなかった。その理由は心の奥隅で彼ら二人が何処か共通しているところがあったからではないかとゲンセツは推測していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ