表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グロウ・ソウル  作者: PIERO
始業式襲撃編
11/57

作戦開始

ようやく投稿することが出来ました。では、続きをどうぞ。

 敵の次の行動を予測し終えた和貴は、雪花と本郷の二人の帰還を祈るように待っていた。


 二人の情報によってはこちらの作戦は大幅に変更するかもしれないし、何より敵の攻撃手段を知っておくことはこちらにとっても大きなアドバンテージになる。


 現在、EXクラスにいるのはその二人を除いたメンバー全員だ。その中でも、錬とアルは先ほど俺が指示したとおりに武器と罠を作っているところだ。


 理雄もクルベルトによって肩を切られたとはいえ、平然としている様子から一応大丈夫であると判断

で来た。


(全く、大した奴だ。普通なら即死なのに、へらへらとしていやがる。騙しができるほどあいつは嘘が下手だし、作戦の参加には問題ないな)


「しかし、貴殿の作戦はうまくいくのか?」


 突然元帥が、作戦がうまくいくか心配になったのか和貴に聞こえる声で呟いた。


 確かに、元帥が考えた作戦ならば和貴が考えた作戦よりも成功率がかなり高いだろう。だが、それはあくまで犠牲者を考えなければの話だ。今回の作戦では犠牲者はできるだけ少なくした方がいいと判断した和貴は元帥の作戦を却下した。最初は却下された理由が分からなかった元帥だったが、和貴と有樹が、納得するように説明したことによって、ようやく納得をしていた。


「成功するかどうかの話じゃない。成功しないといけないし、しなくちゃならない。これは俺の予想だが、今は反抗しなければ、敵は俺達を殺そうとしないと思う。そう首謀者が約束してたからな。だが、他のメンツはどうだ?仮にもテロリストだ。用を済ませたら今回かかわった目撃者を始末するかもしれない。その為にも、俺達は敵を倒さなければならない。それに、これも任務の一つだしな」


 すると教室の扉がガラっと開いた。どうやら目的の二人が教室に帰還したようだ。


 だが、行く前と比べて顔つきが変わっているように見えた。それだけで偵察で何か起こったことを知ら

せるには充分すぎた。


「偵察してきた二人が戻った。一度集まってくれ。作戦会議を始めるぞ」


 その一言を待っていたかのように、有樹達は先ほど座った椅子に腰を下ろした。先ほどの会議と違うところは理雄が座っているかそうでないかぐらいだろう。


「じゃあ、早速だが偵察してわかったことの説明を頼む。雪花、説明を頼む」


 すると雪花はその場で席を立ち、偵察で手に入れた情報を話し始めた。


「偵察でわかったことを話すわね。敵の武器だけど、サブマシンガンが主武装で弾丸はヒュドラ弾。サブウェポンとして腰にサバイバルナイフを装備しているわ。敵は廊下に二人、教室にも二人いることが確認できたわ」 


 雪花はこれ以上話すことが無いのか、席に座った。


 ここまでは和貴の予想通りだった。敵の武器は間違いなくヒュドラ弾だと予測していたし、仮に弾丸を

失ってもそれを補う何かがあるはずだと推測出来ていた。偵察の情報で唯一予想外だったのは敵の配置人数が思ったよりも少なかったことか。


「次に本郷、能力を使って敵の大まかな人数は把握できたか?」


 雪花とは違っ座ったままだが、本郷は溜息を一つ吐き、足を組みながら報告を始めた。


「お前さんの言われた通り、悟られない程度に能力をこっそり使って敵の戦力を把握してきたぜ。最も、大した情報は手に入らなかったがな。結論から言わせてもらうが、敵は五十人は間違いなく学校に潜んでいる。過大評価するつもりはないが、敵はかなり強敵だ。能力のさじ加減を間違えていたら俺達は戻ってこれなかったかもしれない。もしかしたら、見つからなかっただけでも奇跡だったかもしれない」


 本郷の敵の評価に和貴は驚いた。普段の態度はだらしないが、偵察という仕事においては恐らく和貴が知っている軍人関係を含んでも、彼がダントツにトップであることは間違いない。


 そんな本郷が今回の敵を高く評価していた。つまり、彼の見立てではそれくらいの強さを持っているという確信があるということだ。


「具体的にはどういうところが手ごわいと思ったんだ?」


「奴さんらは馬鹿ではあるが、正面からの戦闘だと少し面倒というところだ。これは後で話そうかと思ったんだが、偵察の途中でどうやって脱出したのか知らんが、顔ぶれからしてCクラスの連中が脱出を試みて殺された」


 和貴は一瞬だけ頭の中が真っ白になった。周りのみんなも、何を言ったのか一瞬理解が及ばなかったようだ。だが、本郷の目が真実から背くなというほどの視線を感じ、和貴はすぐに意識を取り戻す。聞きたいことは山ほどあるが、今はそれは後にしよう。


「…報告続けてくれ本郷。そのことについては後で説明してくれ」


「ああ。雪花はその時、緊急的な方法でその場から離脱させたが、敵は一切無駄がない動きでCクラスの心臓に向けて確実に仕留めていた。問題はその全てが心臓に当たっているということだ。しかもそれを下っ端やってるんだぜ?幹部クラスになると、それがどれほど化け物染みているか想像に難くない。もしかしたら偵察されていることに気が付いていたかもしれない」


「でも敵はあえて私達を見逃したって言うの?何のために?」


 本郷の評価に対して、雪花は己の疑問を本郷に問いかけた。すると、本郷がもう一度溜息を吐き、呆れながらも雪花に話し始めた。


「『()()()()()()()』と判断したんじゃないの?冷静に考えてみなさないな。第一に、EXクラスで戦闘できるのは俺を含めてもたったの六人。それに対して、敵は戦闘に長けている兵士が五十人近く。判断材料が足りないが仮に敵の全てが無能力者としても、奴らが持っている主武装はサブマシンガンとヒュドラ弾ときた。敵の大将がその気になって人海戦術を使ってきたらこっちの負けはほぼ確定だ」


 本郷の言う通り、敵がその気になれば作戦会議をしている時間もなく、既に殲滅されているだろう。だが、未だにその手段をしてこないということは、本郷の言う通り、敵にとって和貴達は倒す必要が無い。あるいは、まだ敵としてすら認識されたいないということだ。


(だが、これは好機だ。いずれにしろ、敵として認識されていないなら、先手は俺達に優位がある)


 偵察の情報を全て報告した今の状態ではこれ以上有効な情報は手に入らないだろう。先ほど考えた作戦と本郷と雪花が集めた情報で和貴は即座に作戦を頭の中で組み立て始めた。


 体感時間で僅か三秒。だが、周囲にとっては一秒にも満たない時間で作戦を完成させた。


「よし、作戦が決まった。皆聞いてくれ。まず最初に…」


 作戦の全てを伝え終わった頃には驚いた者、納得した者、作戦そのものを理解していない者の三種類に分かれたが、最終的には皆納得し、それぞれ行動を始めた。和貴は教室に残り、元帥と共に状況把握を開始した。


「さて、始めようか。俺達の学校を奪還する作戦を…」




 和貴の作戦を聞いた有樹と霧和は和貴の指示通り、誤解から四階へと繋がる階段の傍で待機していた。有樹は周囲に敵がいないことを確認しようとして壁を背にして様子を伺う。視界に確認できた敵の数は三人。作戦を開始しようとして有樹は己の武器を持とうとした時、袖を引っ張る人物、霧和千優が緊張感の欠片のない雰囲気で話しかけてきた。


「ところで有樹君。私は作戦についてあまり理解できなかったのですが、和貴君は何をしたかったのですか?」


「わからないなら考えるな。考えるのは俺の役目だ。お前は考えるないで目の前のことを集中すればい

い。それよりも戦闘に入る準備はできているか?」


 無言で霧和は頷き、彼女の得物であるマグナムを両手に構える。


 彼女の武器は錬が造った特製武器の一つであり、銃弾は驚異の十二発も装填できるようになっている。こんな構造のため、特注の弾丸でもない限り発砲することもできないが、弾丸は霧和の能力を使えば問題ないだろう。 


 有樹も霧和を見習い、己の武器である大型ライフルを構える。この武器も錬特製の武器だ。


 名は『エンドワールド』。有樹の能力を最大限に生かすことが出来る唯一無二の武器であり彼の相棒でもある。


 他の場所でも各自戦闘準備が完了している頃だろう。開始の合図は有樹の能力を発動してからだそうだ。


 失敗は許されないこの状況を有樹は緊張するどころか心の隅で楽しんでいた。理由はわからないが、戦場で楽しむということはそれだけ心の余裕があるということだと有樹は勝手に納得した。


「俺を守れよ霧和。今の装備だと接近戦は少し厳しい」


御託(ごたく)はいいから早く作戦を開始してください」


 成り立っていない会話に有樹は微笑し、作戦を開始するべく標準を敵の頭に向けた。


 廊下の敵は三人。敵は余裕があるのか、周囲を警戒せず、雑談をしているように見える。ここまで警備が間抜けだとつい笑いがこみ上げてしまう。


 作戦開始の合図である有樹の能力を使えば、銃声が鳴り響き下の階の敵も寄ってしまうだろう。せめて皆の負担を楽にさせるべく、一発で敵を三人無力化させなければならない。


 普通のライフルならそれは不可能だろう。銃弾一発で敵を三人屠るなど、奇跡でも起きない限り有り得ない。だが、それは普通の弾丸ならの話だ。


 有樹は引き金を引いた。刹那、普通のライフルとは思えないほどの轟音が廊下に鳴り響き、反動が有樹の肉体に襲い掛かる。敵が異変を感じ取り、有樹に視線を向けるがその頃には既に後の祭りだった。


 音速を超える不可視の弾丸が敵の頭上を通り過ぎるのと同時に敵三人がその場で倒れた。


 そしてその瞬間、廊下に敷き詰められているタイルや教室の窓ガラスが一斉に振動し砕け散った。これが有樹の能力である『衝撃波』だ。


 衝撃波の威力は有樹の自由自在に操ることが出来る。その範囲はちょっとした揺れから街一つ崩壊させるほどの揺れまでだ。


 無論、これほど強力な能力だと代償も大きい。有樹の場合は能力を使用した後、発動した威力分の衝撃波を自身の体に味わうというものだ。


 簡潔に言えば『街を破壊する程の衝撃波を起こしたら、その分の衝撃波を己の体で味わえ』ということだ。


 無論、そんな極端なことをすれば有樹の五体は塵と化すのは目に見えている。その為に有樹は能力を使用する前にある物を必ず装着していた。


「代償石が二つか。ちょっと加減を忘れていたかもしれないな」


 パリンとエンドワールドのストックにはめこまれているアメジストのような二つの紫色の結晶が砕けた。これが能力者の代償を唯一抑えることが出来る特別な結晶『代償石(だいしょうせき)』である。


 並の能力であれば、一回の能力の使用で砕けることはないが、有樹の能力は強大すぎるために一度能力を使うたびに代償石がすぐ壊れてしまうのだ。実際、他の代償付きの能力者も使っているが、有樹みたいに一回の能力使用で砕けることはなかった。


 奇襲に成功した時、下の階から大勢の足音が聞こえた。そして三年生の見張りをしていた敵が姿を現す。およそ五、六人と言ったところだろう。


「サポートは任せろ。だからお前は思う存分に暴れてこい」


「私を凶暴な女だと思われているなら少し心外です。でも、任せてください。少なくとも、有樹君のところには行かせませんから」


 そう霧和が言い切ると階段から敵がぞろぞろとあふれ出てきた。人数は六人。だが、霧和の実力なら充分に捌くことが出来るだろう。


 霧和は廊下から飛び出し、ホルスターに収納しているマグナムを超高速で抜き、発砲する。その速さはコンマ五秒。一秒も満たない時間しか霧和は敵に姿を見せていないが、合計六発の弾丸が敵の額に襲いかかる。


 敵三人は引き金を引くことを許されずに、絶命する。その人数は三人。残りは霧和に向かって引き金を引こうとした。


 敵が打ってきた弾丸を霧和はダンスのように華麗に舞って回避すると同時に敵がいないあらぬ方向へと弾丸を二発撃った。 


 二発の弾丸は割れた窓の破片や砕けたタイルにあたり、跳弾を起こす。人間の目には捉えることが出来ない奇襲に敵は何も出来ずに額を打ち抜かれた。


 残った敵は一矢報おうとして霧和に標準を合わせるが、それは叶わなかった。後衛に潜んでいた有樹が放った衝撃波の弾丸をまともに受けたからだ。


「ナイスフォローです。有樹君」


 グッジョブと無表情で霧和は有樹を褒めた。エンドワールドを肩に背負い、有樹は霧和の褒め言葉を無視する。


「むっ。少しぐらい反応してもいいじゃないですか…」


「今に限っては戦場だ。少なくとも、この場では油断したらまずいだろ。…後でたっぷり褒めてやるから今は我慢しろ」


 そう有樹が霧和に言うと心なしか少しだけ嬉しそうな表情をしていた霧和がいた。


「そうですか…。にしても、呆気ないですね。もう少し苦戦すると思ったのですが…」


「本郷も言ってただろ。真っ向勝負じゃあ苦戦するって。今の戦いは俺達が奇襲して先手を取ったから楽に勝てたんだ。(にしても、相変わらず恐ろしい能力だな『星の目』は。己の好きな結果になる為の道筋を見ることが出来るなんてな。使いようによっては天災の英雄を超えるかもしれないな)」


 会話を打ち切り、有樹は階段から現れるであろう敵がどこから現れるのか耳を澄ませて足音を確認する。


 がさがさと動き、敵と遭遇するまであと十秒と言ったところかと有樹は推測した後雄、次の行動に移る為に霧和に話しかける。


「本番はここからか…。俺の背中を頼むぞ。俺はお前の背中を守るからな」


「了解しました。それと…いや、なんでもありません。なんとなく死亡フラグになりそうな気がしましたから」


 続きの言葉が気になった有樹だが、すぐに目の前の問題を排除するべく銃口を廊下の先へと向ける。あと一歩で廊下に踏みだす敵の足がスコープ越しに見えた。


 こちらの様子を探っているのか。或いは誘っているのか。どちらにせよこの敵の行動は有樹にとっては関係なかった。


 有樹は敵の位置を大体把握すると、再びエンドワールドで衝撃波を放った。衝撃波は壁を貫き、隠れているであろう敵を打ち抜いた。すると、気絶したのか敵は廊下側に倒れ、姿を現す。仲間がやれてたことから隠れることが無駄だと理解したのか、有樹の視界に隠れていた全ての敵が現れた。その数は四人。


 敵は有樹を警戒して襲いかかってきた。敵の判断は正しかった。遠距離でしか攻撃手段を持たない有樹にとっては接近されることが一番の弱点である。


 だがそれは有樹一人だけの場合限る。不利だと悟った有樹は背中の後ろで苦戦している相棒に話しかける。


「出番だ。遠距離は任せろ」


「了解です。こっちも遠距離戦になりそうな気がしたので交代お願いします」


 互いの背中を軸にして有樹と霧和の位置が入れ替わる。霧和は入れ替わると同時に早撃ちによって有樹が相手していた敵の心臓に向けて撃つ。敵は心臓を貫かれ糸が切れた人形のように倒れた。


 霧和の後ろから轟音が鳴り響き、有樹は銃口を敵に向けるのをやめた。それが戦いの終わりであることを視界した霧和は有樹に話しかける。


「こちらは終わりました。有樹君はどうですか?」


「こっちも終わった。後は他のメンツの役目だ。それよりも、教室の様子と安全を確認するべきだな」


 有樹はそう言った後、今の立ち位置から一番近い教室であるCクラスの中に入った。Cクラスに入り、教室を確認した有樹は緊張した表情から安堵した表情へと変わる。


「…どうやら、俺の知恵が役に立ったようだな。無事で何よりだ鋼矢」


「いや、実際死ぬかと思ったよ。まぁ、こうして助かっているから何よりだけど」


 軽い雑談をした後、有樹はどうやって助かったのか鋼矢から聞いた。その方法を聞いた有樹はすぐに和貴に報告するべきだと判断して、アルが創った小型無線機で連絡した。


「和貴、俺だ。実は報告しておく情報が入った。Cクラスで助かった者がいてな。それでどうやって助かったか聞いたんだが…」


 和貴に報告し終えると、和貴から新たな指示を無線で連絡すると言って無線機を切った。鋼矢はこの後どうすればいいのか有樹をずっと見つめていた。


「鋼矢、済まないがこの騒動が終わるまでさっきと同じことをし続けてくれ」


「まじで?」


「大真面目だ。それが今の段階では一番人質が助かる可能性だと和貴が判断した。今頃、無線機で他の奴らにも支持を出している頃だろう。悪いが、事が片付くまでさっきと同じ状態になってくれ」


 鋼矢は少し涙目になりながら、渋々と納得してくれた。彼にとっても精神的にきついと思うが、それでもこれが一番安全なんだと頭の中では納得しているのだろう。


 友人にこれ以上の負担はさせるわけにはいかないと思い、有樹は次の戦いへと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ