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第十四章 マシーナリーのハイウェイ 3

「よう、ホーリー・ドラゴンの真似事でちょっと電波ジャックをさせて貰ったぜ」


 それは、砂嵐の残像に覆われていた。

 顔は見えないが、確かに残像の奥には、誰かががいた。

 アイーシャは、その動画を、文明レベルの高い街の中で、機械兵をコンピューターに接続して、ネット中継を通して遅れて見ていた。

 生中継だったらしいが、録画されている。

 ネット内で、色々な情報が囁かれていた。

 アイーシャは舌を打つ。


「俺は先日、アサイラムに侵入した賊だ。ケルベロスを襲った奴だ。なあ、これを見ている奴らの中で、俺達を憎んでいる奴らいるだろ? そいつらに伝えたいんだけどな」

 声はボイス・チェンジャーを使っているが、明らかに知っている奴だ。

「俺達、探しているんだろ? 俺らのとこのボスが、ある壊滅した街の一つでお前らを待ってやるって言っているぜ? 人数を集めて襲って来いってよ。まとめて相手してやるってな?」

 ざざっ、と、何度も、映像が揺れる。

 時には、真っ黒な影が画面いっぱいに広がる。


「処で、みなが知っての通り、街中を壊滅においやった俺達のメンバーの一人である、グリーン・ドレスって女が、俺達ダートを裏切った後、他のダートのメンバーに殺された。そのメンバーの名前はヴェルゼ、って言うんだが。そのヴェルゼって男も、元ダートのメンバーに殺された。そいつは、アイーシャって言う」

 アイーシャは、自分の顔写真が、大きくスクリーンの中に映し出されている事を知る。


「で、アイーシャ、何処に隠れているか知らねぇが。討伐隊に紛れて、今から教える場所まで来いよ。そこで、俺と果し合いをしねぇか? で、他のこれを見ている連中に告ぐけど、もう一度言うが、俺達のボスが直接、お前らと戦ってやるってよ。戦力を募ってきやがれよ、とっても楽しみにしているからさ」

 砂嵐は揺れる。


「場所は『マシーナリー』っていう街だ。以前、グリズリーと冷戦状態にあった場所だが、もう壊滅しちまったから。そんな政治状況の事はどうだっていいな? そこで待っている。そうだな、夜中だ。日付は…………」

 そう言って、画面の砂嵐の向こうにいる声は、日時と指定した国の、大体の待ち合わせ場所を述べていく。


「じゃあ、これを見ている俺達を憎んでいる奴ら、健闘を祈っているぜ」

 そして、スクリーンが途切れた。

 一体、どのようなルートを使って、再び、TVがジャックされたのだろうか。


 アイーシャは勘繰る。

 もしかして、新たに増えたメンバーの中で、そのような権力を操作出来る事に長けた者がいるのか……?



 レウケーとリレイズの二人が、討伐隊のメンバーの選定を行っていた。


 彼らの眼に止まらなかった者達は討伐隊から外される。逆に言うならば、それ程に、敵との戦いはシビアで、並の実力者ならば話にならないとの事だった。

 ダートのメンバーの一人が流した映像を解析して、居場所を突き止めていた。

 トラップの可能性もあるが、そのリスクを負ってでも、ダートを戦う可能性に賭けるべきだった。

 最初、百名以上の者達が、それぞれ怨嗟の言葉を吐き散らしながら、復讐心や正義感を掲げて、討伐隊に加わろうとしていたが、選考の結果、残ったのは十数名程度だった。


 レウケーいわく、この人数でも、多く拾ったとの事だった。

 ペイガンも何故か、選抜されていた。

 それは、彼が見せた、剣術がレウケーの眼に止まったからだろう。レウケーは、ペイガンに対して、良い使い手になるだろう、と述べてくれた。


『マシーナリー』。

 そういう名前の地区だった。

 グリーン・ドレスの襲撃にあった場所の一つだ。

 アサイラムを襲撃した、セルジュという者が、アイーシャという女に布告する為に選んだ場所だ。


 レウケーと、リレイズ、そしてホビドーの考えによれば、おそらくは、間違いなく、セルジュ以外にもダート側のメンバーが現れるだろう。それくらいは予測出来る。

 可能ならば、魔女ルブルを倒したい。もし、司令塔が倒れれば、ダートという組織はどうなっていくのだろうか。少なくとも、かなりの心理的な打撃は与えられるんじゃないかと、レウケーは踏んでいた。



 赤い天使が、夢にまで出てくる。


 その輪郭が、焼き付いて離れない。

 真っ黒な焼死体が瓦礫に押し潰されながら、横たわっている。生々しい肉の断片図が見えた。何故だか、とてつもない程に彼はそれに、美を感じてしまう。


 皮膚が焼け爛れて、ガラスや木材の破片が身体に刺さっている人々が苦しみながらのた打ち回っていた。彼は、それさえも天の国の光景にさえ思えてきてしまった。

 気付くと、ペイガンは泣きながら、毛布の中から顔を出していた。


 不思議な夢だった。

 多幸感に包まれていた。

 自分が人間である事を、忘れてしまいそうだった。

 とてつもなく、空を浮遊したり下降したりする夢に襲われる。


 怖過ぎる何かに喰われてしまいそうだ。



 どうしようもないくらいの怒りが、討伐隊のメンバーの中に渦巻いていた。


 身内や友人を殺された怒りで溢れている。

 マッシュという男が、特に怒声を上げていた。獅子頭のスロープが、彼を諌めていた。

 悲しみと怒りが、抑え切れないまでに充満している。

 余りにも数え切れない人間が、ダートのメンバーによって無慈悲に殺されたのだ。

 ひたすらに、残虐に殺し返す事ばかりを、みな口々に叫び続けている。もはや、その怒りは、周囲の者達にまで向いていた。みな、強いストレスに晒されている。このままだと、いつ避難民同士で殺し合ってもおかしくなかった。

 一触即発だ。

 レウケーの言葉を思い出す。レウケー自身が、アサイラムの所長であるケルベロスと話していた言葉だ。

 これは、伝染病なのだ、と。

 憎悪や怒り、悲しみが病気のように広がっていっているのだと。

 もはや、その時点で、人類は、ダートに敗北しているのだ、と。

 みな、正気を保っていられないのだ。

 マッシュは、ボルダという男と意気投合していたみたいだった。ダートの連中を、散々、ぶちのめして、殴り、蹴り殺してやる、と意気込んでいた。

 


 ステルスを搭載させたヘリを使って、みな、この地にやってきた。

 気合付けの怒声が飛び交っている。

 マシーナリーの道路跡地。

 そこに、ダート討伐隊のメンバーが何名か揃っていた。


 スロープが先頭を率いていた。

 シェルター内から集めた強力な能力者として、ファタラとガンギャの二人が指名されていた。二人は、スロープに付いていた。


 アサイラム所長秘書兼ボディー・ガードでもあるリレイズの側近の一人に、ゲルググという男がいた。彼は、ライフルを手にしていた。どうやら、彼はスナイパーらしい、全身を黒い服と防弾チョッキで覆い、顔に覆面を被っていた。

 メンバーは、分断されていた。

 シェルター内で募った討伐隊以外にも、各地の軍人達も集まって急遽部隊編成を行っていた。

部隊は、四つの隊列に分けていた。

 突撃班、狙撃班、爆撃班、そして救護班の四つだ。

 全部で、六十名くらいになっただろうか。


 ペイガンは、救護班に入れられていた。スロープは、一番、必要な部隊だと繰り返し、みなに伝えていた。

 スロープは討伐隊の司令塔として、救護班に回っていた。どうやら、彼は突撃班などの、攻撃部隊には入らないみたいだった。

 突撃班の部隊長は、かつて軍人だったラザー・ホーンという男だった。

 彼は筋骨逞しく、こめかみに幾つも傷があった。かつては、少佐にまで上り詰めた男らしい。見事にまでに禿げ上がっていて、頭には異形の傷を抱えているこの男を、スロープは買っているみたいだった。

 道路跡地の場所は、ハイウェイだった。

 軽自動車やダンプカーの残骸が、幾つも転がっている。

 グリーン・ドレスの手によって、安々と破壊された場所だ。


「どうなのかな? この戦争は」

「さあな、何が出てこようが俺の拳でぶちのめすだけだ」

 突撃班に入った、ボルダとマッシュは、そんな風に話をしていた。

 ペイガンは、救急箱や小型銃などを手にして、彼らの話に聞き入っていた。

 


 ラザー・ホーンを中心とした突撃班は、通信機で、スロープの支持を仰ぎながら、ハイウェイを、ジープで慎重に進んでいた。

 ハイウェイの外の山道では、狙撃班が移動していた。

 突撃班は、偵察も兼ねている。

 相手からの宣告によれば、夜の時間を指定してきた。


 本当に現れるのか分からない、といった疑心暗鬼を募らせる者もいた。しかし、あれだけ派手に行動を起こしてきた者達だ。レウケーは、おそらくまず待っているだろう、と言っていた。

 突撃班は六名だ。あくまで、囮として戦い、狙撃班が仕留める、という戦略だった。

 しばらくして、ジープのライトで道を照らし続ける。

 一時間弱、夜のハイウェイを進んでいた頃だろうか。

 メンバーの一人が、軽く口笛を鳴らす。


 宣戦布告の通りだった。

 きっと、待ち伏せでもしていたのだろう。そいつは、まるで当たり前のように現れた。

 突撃班の者達は、息を飲んでいた。

 まるで、友達と約束の場所で待ち合わせでもしていたかのような、現れ方だった。

 要するに、……隙だらけなのだ。

 そいつは、漆黒のドレスを身に付けた、腰まである黒髪の女だった。

 彼女は、道路の中心で、ブーツの靴紐を直しているみたいだった。

 そして、おもむろに、女は通信機を取り出して、誰かと話し始める。


「ねえ、ミソギは色々、やってくれるんでしょう? いいわねえ、それはとっても素晴らしいわね」


「ん、ああ。そうだ、貴方達、待っていたわよ? セルジュとメアリーの代わりに、私が出向いちゃった」

 突撃隊は、ジープを停めて、息を飲んでいた。

 マッシュは、拳を強く握り締めていた。


「お前は何だ?」

 ラザー・ホーンがジープを降りて、訊ねる。


「あら? 知らないの? 私はダートのボス、ルブルよ。私がダートという組織を率いているの。よかったじゃない。貴方達、ダートを倒しに来た人達なのよね? 私の首は此処にあるわよ?」

 そう言って、ルブルと名乗った女は、自分の首を手首で、刎ねる仕草をする。


「そうか、俺はラザー・ホーン。元軍人だ。ホーンと呼んでくれ……。女、お前が本当に、あれだけの破壊を齎した者達の首謀者なのか…………?」

「そう言う事になるわね? あら、悔しい? 腹立たしい?」

 ルブルは、自らの唇に人差し指を押し付けて、はにかむ。

 ホーンは、傷だらけの禿頭の頭を掻く。


「憎いが。……俺や、俺の仲間達は、お前らを八つ裂きにしてやりたいって思っているが……。なあ、まだ分からない。お前らは……」

「能力者は、余り見た事の無いって感じの顔で。でも、多分、戦争慣れしてそう。ねえ、死体は見慣れている? 犠牲者の悲鳴は? 知り合いが目の前で肉片になるシーンは?」

 マッシュと、ボルダの二人が、ジープから降りる。

 そして、他の者達も次々にジープから降りていく。


 ルブルと名乗った女は、風に靡く黒髪を指先で撫でていた。

 そして、彼女は、何かを思い出したのか掌を叩く。


「どうせ、暴れ続けた、イゾルダと、グリーン・ドレスの顔くらいしか貴方達知らないんじゃないの? 私はまあ、丸腰なんだけれども。まさか、いつでも、銃で殺せそうって思っている?」

 彼女は、自分自身を抱き締めるかのように、両腕を組んだ。


「処で、貴方達って、多分、切り込み隊長でしょう? この暗闇の中に、遠くから私を攻撃したがっている人達、ちゃんと配置してあげた? 他にも、貴方達、手術で、体内に爆弾でも入れてみてる? 他には、そうだ。そのジープに、この辺り一帯を破壊する爆弾でも、実は積んでいたりする?」

 ルブルは、ぺらぺらと、意表を付いてくるような事を言った。


 ホーンは、呆けたような顔をしていた。

 彼は、此処に来る直前に、医者に相談して、自らの心臓が停止したら発動する小型爆弾を埋め込んでいるのだった。

 戦術が、ある程度、バレてしまっている。

 狙撃班達は、このルブルという女を、今、ライフルなどで狙っているだろう。他にも、遠距離攻撃が出来る能力者達が何名かいる。


 ルブルは、ある程度、見抜いてしまっている。

 此方側の戦略をだ。


「どうしたのかしら? ほら、私は丸腰よ?」

 そう言って、ルブルは両手を広げる。

 マッシュは怒りを隠せないみたいだった。

 彼は、既に怒りの限界が達していたみたいだった。

 マッシュは、ホーンの指示を待たずに、ルブルに向けて拳を振るっていた。彼の拳から、炎を纏った爪のようなものが生えていた。彼の両眼は、肉食動物を彷彿させるものへと変わっていた。

 ルブルに届く事は無かった。

 ホーンと、それから、他の者達は絶句していた。

 突如、地面から現れた、何かの生物によって、マッシュの腹と胸は貫かれていたからだ。


「うーん、ねえ、こんな簡単な挑発に乗っちゃ駄目でしょう?」

 魔女の口元は笑みを称えていた。

 地面から這い出してきたのは、十本脚はあろうかというサソリの化け物だった。その化け物が、二つの槍のように、異様に長く伸びたハサミによってマッシュを貫いていたのだった。尻尾は、四つもあった。

 全長は、五メートルを有に超えている。


「ああ、ちなみに、これ私のゾンビだから。これくらいは、倒そうよ? 私を討伐しようとしている、裏切り者のアイーシャのゾンビは、これくらい簡単に殺せると思うから」

 魔女は笑い続けていた。

 次に動いたのは、ボルダだった。

 彼は、異常な速度の蹴りを、ルブルへ向けて放っていた。

 すぱん、という音がして。

 ボルダの両脚は、吹き飛んでいた。

 サソリの尾の一つは、刀剣へとなっていた。

 そして、蒼褪めた顔のボルダの頭を、追撃として毒針になっている尾で叩き潰していく。


「あら、他には来ないのかしら? 私が、私達が憎いんでしょう? 殺したいんでしょう? ずっと、恨んでいたんでしょう? 大切な人達の想いが強いんでしょう? 怒りを力にして、戦おうと立ち上がったんじゃないの?」

 ルブルは、ただただ楽しそうに笑っていた。

 突撃隊は、ホーンを含めて、残り、四名だった。

 更に、巨大サソリの他に、地面から大ムカデのようなものが這い出してくる。


「まだまだいるけれども、此れ位は倒せるわよね?」

 ホーンは他の者達に叫んでいた、逃げろ、と。

 気付けば、大ムカデが動いて、討伐隊メンバーの一人の頭を食い千切っていた。残りの二人は急いで、ジープへと戻っていた。


 大サソリが動いて、ジープに乗ろうとしていた男のうち、一人の背中を四つある尾の一つで刺し貫く。

 ジープは、すぐにアクセルが踏まれ、その場から去ろうと動いていた。

 ルブルは完全に遊んでいた。

 サソリとムカデの二体は、その場から走って逃げるジープを無視して微動だにせずにいた。

 ホーンは、血が滲むまで唇を噛んでいた。


「お前、命を何だと思っている?」

「さあ? 私は死体が美しいと思っているから。生きている人間に興味なんて無いの」

 ホーンの両腕から、角ようなものが生えてくる。

 彼は、大ムカデに掴み掛かり、そのまま頭を握り締める。


「ルブルと言ったな、人間を舐めるなっ!」

「あらあらっ、頑張ってねぇ?」

 魔女は地面に腰を下ろして笑い続けていた。

 ホーンは、大ムカデの首をもいでいた。

 そして、全身から熱気を発していた。


「あらあら、凄いじゃない。やれば出来るじゃない?」

 そう言いながら、魔女は両手を叩いて喝采を送る。

 サソリの方は何故か、微動だにしない。

 ホーンは、ルブルの顔へと腕から生えた角を突き刺そうとする。

 すると、サソリが動き、四つある尾の一つを動かして、ホーンを弾き飛ばす。


「こっちは、倒せるかしら?」

 完全に遊んでいた。

 もはや、話にならないくらいに実力差が開いてしまっていた。


「狙撃班っ!」

 ホーンは必死で叫ぶ。

 作戦通りならば、ホーン達が囮になっている間に、追尾していた狙撃部隊が、敵を狙い撃ちにして殺している筈だった。その中には、風の刃や炎の弾丸を撃ち込める能力者もいる。


「あっ、そうだ」

 ルブルはくるくるっ、とダンスでも踊るかのように回る。

 ホーンが、必死で、サソリの頭も叩き潰した頃だった。


「えっと、周りにいる人達なんだけれども。何か、邪魔だったから、先に手を打っておいたのっ!」

 ルブルは、親指で空を指す。

 ホーンは、迂闊にも尻餅を付いていた。

 それは、空飛ぶ怪物だった。

 巨大なコウモリの身体に、蛇の頭を幾つも生やしていた。

 それは、蛇の頭の数だけ生首を咥えていた。顔に見覚えがある、みな、狙撃班の者達だった。


「うああっ、うあああああああっ!」

「ねえ、もうちょっと、強い人材、探して来ようよ。私達が憎いのは、分かるんだけどね?」

 ルブルは詰まらそうな顔で、ホーンを見ていた。


「全然、お話にならないじゃない。イゾルダとグリーン・ドレスで学ばなかったの? 貴方達は、何で、こんなに愚かなのかしら?」

 ルブルは、人差し指を地面へと向ける。


「どうせ死ぬから、私の能力、ちゃんと教えて上げるけど。冥土へのお土産としてね。私の能力『カラプト』は、生き物の死体を好きなように再構築するの。この可愛い怪物達、全部、幾つもの死体を寄せ集めて構築したんだけれども、ちなみに」

 ルブルは、地面を指す。


「そもそも、この辺り一帯の足場が、死体で出来ているのよ?」

 ホーンは、宙に浮いていた。

 自分が立っていた地面が、崩れていったからだ。

 下を見ると、大きな口だけの怪物が、彼を飲み込もうとしていた。

 ルブルは、残った足場に一人立ち、手を振りながらホーンを見下ろしていた。

 ホーンの体内にある爆弾は、怪物の口内の中で爆裂する。



 ルブルは黒煙が立ち込める地面から眼を離すと、両腕を上げて屈伸運動を始めた。


「さてと、もう少し、楽しめないものなのかしら?」

 どんなに憎しみをぶつけてきたとしても。

 どれ程までに、大切な人達の死を購おうとしても。

 圧倒的なまでの実力差を埋める事なんて、出来はしないのだ。

 ふいに、ルブルは真剣な顔になる。


「アイーシャは多分、こんなものじゃないだろうなあ。メビウスも……」

 考え過ぎかもしれないが、もし、こいつら全員が捨石で、此方の能力のデータを採集する戦略だとするならば?


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