使い魔・魔武器召喚
魔武器召喚と使い魔召喚。
それは王道ものならば、まさに重要な場面。
聖剣やら、ギャグの魔武器、イケメンまたは美少女の使い魔やらで話が盛り上がる。
そう、かなり大事なシーン。
そんな場面に私は直面していた。
き、緊張する…。
正直学園長に会う時よりも手が震えている。
脇役主人公でも、美少女を出しているし、ネタになる魔武器を召喚するのが普通。
しかし…本当に私のような地味女子が、面白い召喚ができるでしょうか…?
玲央くんは分かるよ?!主人公だもの!
でも私はいたって普通に異性と絡まないで過ごしてきたからな(普通ではない)。
期待よりも不安が先行している。
「姉さん、大丈夫?顔が強張ってるけど…。」
玲央くんが心配そうに私の顔をうかがっている。
私たちは今、召喚する場所に来ていた。
ジークはもともと魔武器と使い魔の召喚を1年の時にすましているらしい。
ちなみに、禁忌召喚、あったんだって。
見たかったなあ…じゃなくて。
今は召喚のことだ。
「まず、魔武器を召喚します。自分の大事な武器となりますので、集中して臨んでください。」
秘書さんが、玲央くんと私それぞれに魔石を渡しながら説明してくれた。
この魔石に魔力をこめて自分の魔武器をイメージする、んだよね。
何がいいかな…?
「では、始めてください。」
私も玲央くんも真剣な顔つきで魔石に向き合う。
玲央くんの魔石の方が先に輝きだした。
玲央くんは勇者なので、聖剣をすでに持っているけど、魔武器も作るそうな。
もしかして二刀流?かっこいいなあ!
のんきに思考するのをやめて、私も魔石に、近頃やっと扱いに慣れてきた魔力を流す。
温かい力が全身を巡り、魔石がゆっくりと輝きだした。
「できた!!」
玲央くんの弾んだ声が聞こえて、そちらを見ると、装飾の美しい魔剣が出来上がっていた。
おお!これは二刀流勇者の始まりか!?
「かの子、お前のもできているぞ。」
ジークに指摘されて私は慌てて手元を見た。
漆を塗ったような黒く輝く小刀だった。
いかにも質素で私らしい、かもと思った。
刃先を見ようと、鞘に手をかけた。
だけど、抜けない。
あれ?
もう一度挑戦してみるが、やっぱり抜けない。
こ・れ・は!
封印されている?!
てことは、私には何か封印されているのかな?
期待が膨らむ!!
抜けないので周りの装飾を丁寧に見ていくと、ところどころ花が小さく描かれており、少し女の子らしくて嬉しい。
「可愛いのができたね!」
玲央くんが一緒に喜んでくれた。
ジークは、
「抜けない刀、か…。」
と中二っぽくため息をついていた。
「次は、使い魔召喚です。場合によっては戦闘になるかもしれないので注意してくださいね。」
「じゃあ、俺からいくね!」
玲央くんが魔法陣に血を垂らして呪文を何やら唱える。
しまった!
玲央くんの次ってことは、すごい期待が私にかかるのでは?!
乗り遅れた~!!!
結果、玲央くんは美少女天使を出してました。
金髪碧眼の美少女天使は、もう玲央くんの顔面と優しさにメロメロで少し笑ってしまった。
こういう子がヤンデレになったら、怖いだろうなあ。
「かの子さん、次どうぞ。」
秘書さんに促されて私はしぶしぶ結界の中に入る。
期待しないでね?!
用意されていたナイフで、自分の親指を切る。
……いったい!!!!!
ずっと思っていた。
みんな血を垂らす時痛くないの?って。
皆さん、痛いです。
その辺の感覚は全く主人公ではないようです。
そして、私は自作の呪文を唱える。
「可愛い子ください!!!」
そろそろ可愛い癒しが欲しかったんです。
後悔はしていません!
まぶしく輝いた後、現れたのは、
「へ?」
それはそれは可愛い8歳ぐらいの男の子。
ちょっと待って。
可愛すぎる!!!
ジークと同じ銀色の、だけどくせ毛の髪に新緑色の瞳。
短パンからのぞく太ももの、まあ白いこと細いこと。
犯罪者になってしまいそうなくらい可愛かった…。
ありがとうございます!!
男の子は、くるくると瞳を動かして、状況を把握したのか、こちらに近づいてきた。
どうやら戦う気はないらしい。
はっと気づくと、私はほぼ役に立たない小刀を握りしめて男の子をガン見していた。
怖い怖い。
「お姉ちゃんが僕を呼んだの?」
綺麗な澄んだ瞳が私を見つめる。
うう…可愛い。
「そうだよ、私は柊かの子。契約してくれるかな?」
「分かった、僕はサイ。よろしくね?かの子ちゃん。」
テンションは一定してクールだが、なんとか契約してくれた。
サイや美少女天使は魔力を食うので、異空間に戻ってもらい、後日自己紹介をしようということになった。
「無事に終わったな。」
ジークが私の頭をポンポンッと叩いてから、口元だけ笑っている。
……。
動じない、動じないぞ。
玲央くんは、ジークのにらみ続けていたが、ジークはどこ吹く風という感じで面白い。
こうして、私たちの魔武器、使い魔召喚は無事終了したのであった。